【3章:タンたん争奪編】
23話:大天使と殺害予告!!
紆余曲折を経て、死んだストーカー娘:タンたんが復活。
俺達は久々となる元の新婚生活(タンたん曰く)に戻った。
彼女の手料理は相変わらず美味く、たまにやって来る神兵隊や地獄の魔獣を『お前の物は俺の物』と『幸福の助平な雨』で撃退する日々。
死んでいた時はちょっとブニッとしていたタンたんの皮膚も、元の若々しいピチピチゆで卵素肌に戻っている。
以前と違うところがあるとすれば、それはタンたんの顔にちょっとしたゾンビみたいな縫合跡があることくらいなもの。
他には、2階の一部屋をリバ子様が占領して引き籠もっていることと、天国から遣いとして来た女神兵が未だにこの切り株ハウスにいることと、タンたんの機嫌があまり良くないことくらいなものか。
……意外と多いな。
「全くもう、どうして私とタツヲちゃんの愛の巣に、こんなに邪魔者が沢山いるの?」
タンたんが生き返って5日目の朝。
朝食の席でタンたんが隠す気も無い愚痴を吐いた。
ちなみに今、テーブルについているのは俺とタンたんのみ。
「しょうがねぇだろ? タンたんを生き返らせる為に何でもするって約束しちまったし、リバ子様からここに住ませろって言われちゃあ断れねぇよ。お前の命の恩人でもあるし」
「恩人でも、タツヲちゃんじゃない人はこの家に入っちゃ駄目。それに貴女も」
くるりと、タンたんが後ろを振り返る。
そこには5日前にやって来た
「タン様、私がどうかしましたか?」
「どうかしましたかじゃないよ。ここは私とタツヲちゃんの愛の巣なんだから、いい加減に出て行って頂戴」
「えぇ、今すぐにでも出て行きますよ。タン様が天国へ――大天使様の元へ戻られるなら」
「だ・か・らッ、私はもうお父様の元へは戻らないの!! わかったなら出て行って頂戴!!」
「えぇ、出て行きますとも。タン様も一緒にここを出られるのであれば」
「……はぁ~、もうやだ」
タンたんの機嫌が良くない理由はコレだ。
天国へ戻れと口にする
陰キャと陽キャ並に平行線を辿る二人の主張は、最適解を見つけられないまま終わりの無い延長戦を5日も続けている。
「タツヲちゃん、私もう駄目。気が狂いそう……はぁ、はぁ……部屋に戻って子作りしよ?」
「おおぅ、本当に駄目っぽいな(主に頭の中身が。そして気が狂ってるのはいつも通りじゃねぇか?)」
「わかってくれたらなら部屋に行こ?」
「待て待て、現実逃避しても駄目だ」
現実から目を逸らしても、逸らしている間に更に悪化するのが現実というもの。
そろそろちゃんと現実と向かい合った方がいいだろう。
「なぁタンたん、俺はお前が誰の娘だとか別に気にしちゃいねぇよ。でもお前がマジで大天使の娘だっていうなら、一回天国に戻ってもいいんじゃ――げっ!?」
気付けば、タンたんが大粒の涙を流していた。
大粒の涙を流しながら席を立ち、キッチンへ向かい、包丁を手の取り、戻って来て、俺の膝の上に乗る。
そして、包丁を「ドスッ、ドスッ」と俺の胸に突き刺して来た(皮膚が硬くて刺さりはしねぇけど)。
「タツヲちゃん、私のこと嫌いになったの? 私はこんなにもタツヲちゃんのことを愛しているのに? ……誰? 何処の誰? 私のタツヲちゃんの愛を奪った泥棒猫は? ……言って。その泥棒猫、今から〇〇しに行くから。そいつがこの世界がから消えたら、また私がタツヲちゃんの一番になれるよね? その為だったら私、10人でも100人でも〇〇して――」
「待て待て待てッ、誰も○○さなくていい!! 別にタンたんのことは嫌ってねぇよ!!」
「じゃあ愛してくれてる?」
「えっと……」
チラリと視線を横に向けると、
馬鹿野郎。誰かに見られながらそんな台詞吐けるかよ。
「……タツヲちゃん?」
「えっと、ほら、そういうのは誰もいないところで、な?」
「わかった。じゃあタツヲちゃん、あの子を追い払って」
「そう言われても、追い払ったところでどうせまた来るんだろ?」
「タン様がお戻りになられるまで、私も戻る訳にはいきません。何度追い出されようとも」
初日に3回、翌日も2回追い出して、それでも彼女は帰らないのだ。
そもそも相手が女である以上、俺にはあまり暴力的な方法も取れない。
危害を加えてくるようであれば俺も本気で対応するが、彼女はただ「帰って欲しい」とタンたんにお願いするだけ。
一度、口の中で炎をチラつかせながら脅しを入れたが、それでも帰らないのだから、俺としてもこれ以上は手を出しにくい。
大きく事態が動くまでは状況を見守る他なく、そして今日に至ったという訳だ。
これはタンたんが動かない限り状況は変わりそうもないと――そう思っていた、その時だった。
ガチャリ。
扉の開く音で、俺は嫌な予感を覚えた。
そして“入口に立つ人物”を見て、嫌な予感が当たっていたことを認識する。
「大天使……ッ!?」
――そう、入口にいたのは天国を統べる長:大天使だ。
俺よりもデカい3メートル程の長身で、神兵の白い制服をより荘厳且つ豪奢にした、如何にもお偉いさんが着ていそうな衣装を身に纏っている。
顔は四十代半ばのイケメンおじさんながら、立派な口髭と顎髭に加えて、何よりも大きなその身体により、見た目の年齢よりも圧倒的に大きな威圧感を放っている。
言わずもがな、この男は先程まで会話にも出ていたタンたんの父親だ。
大天使の名に相応しく、背中には白い大きな翼もついている。
まさかの父親登場に、俺の膝に跨がるタンたんは少しバツの悪そうな顔を浮かべた。
「お父様……」
「本当に生き返っておったか……この恥さらしがッ!!」
「ひっ!?」
ブルルッと身体を震わし、タンたんが俺にギュッとしがみ付いてくる。
おかげで俺のお腹辺りに、タンたんの丁度いいサイズで柔らかい双子果実が「むりゅり」と挨拶してきたが、その柔らかさを堪能している場合ではない。
いくら父親とは言え、女の子を震え上がらせるなんて男の風上にも置けない奴だ!!
俺が懲らしめてやる!!
「おいオッサン、自分の娘を怖がらせてんじゃねーよ。それでもアンタ大天使か?」
俺がギロリと大天使を睨むと、大天使も俺を睨み返して来る。
「ふんっッ、貴様が『ヴァルハバラ』最強のドラゴンか。私の娘が世話になったみたいだな」
「どちらかと言えば色々と世話になってるが、まぁそんな話はどうでもいい。タンたんに何の用だ? アンタなんかお呼びじゃねーぞ?」
「呼ばれようと呼ばれまいと関係無い。私が父親で、そやつが娘である限りな。父親が娘へ会いに来るのに理由がいるか?」
「いるね。ここ何週間もタンたんを放っておいた奴を――10年間以上もタンたんを放っておいた奴を、俺は父親と認めてやるつもりはない」
途端、タンたんが益々ギュッと俺を強く抱きしめて来る。
それが「辞めて」を意味指するのか、「いいぞ、もっとやれ!!」なのか、それとも「子作りしよ?」なのはわからないが、俺は黙っていられなかった。
ずっと噂には聞いていて、だけど実際には初めて会う大天使。
このデカブツおっさんに、俺は言ってやりたいことが沢山ある。
――だが、俺が沸き上がって来た心中を露土する前に、大天使がが信じられない台詞を吐き出す。
「別に、父親として認めて貰わなくて結構だ。どうせここには、“そやつを殺しに来た”のだからな」
「ッ!?」
――――――――――――――――
*あとがき
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