食べ歩きする弟

ヨシ!やっと兄上に謝れたし、さっさと帰るか!


思えば、兄上と言い合いじゃない長く話すのは初めてだったな。

先程も兄上も言っていたが、俺が謝る必要性はなかったもしれない。

が、それだと俺の中の何かがそれを許さなくて居ても立っても居られなくなった。

その何かというのは……俺にも分からん。

エゴなのか?まぁ…俺も俺で気分がスッキリしたし、ヨシとしよう!

心なしか兄上の態度が少し変わったしな!

   

それから日が完全に登りきって暑くなる前にさっさと降りて屋敷戻ろうとする俺たち。


すると、セッテが……


「このまま歩きで行きますと、昼時の食事には間に合わなくなりますね。」


「え゛っマ゛ジ゛?」


「はい、それもこれも急な誘いをした癖に馬車の一つや二つを用意しないどこかの坊ちゃまのせいで……」


「えーと、それはだな……」


「それは?」


「……………………」


言えぬ、馬車はケツが痛くなるから乗りたくなかったという理由だって言えぬ。

あと、そんな目で見るな。

怖いんだ、そのハイライトのない瞳で見られるの。


「それはとはなん「きゅ~」……で……す????」


ん?なんだ?今の音……方向的に兄上からなんだが……

もしかして……



「兄上?今の音、もしかして……」


「……黙れ……」


……チャンスだ!これでセッテの怒りを有耶無耶に出来るぞ!兄上に悪いが利用させて貰おう!!


「なぁ、兄上よ……今の可愛い音。もしかして、兄上の腹の音か?」


「かわっ!?貴様は何を言っている!?」


「もしかして、朝ご飯食ってなかった?そうか、そうか!食ってなかったか!うん、それなら食わんとな!食わんと大きくなれないし、強くもなれないからな!だろう?アルヴィン!」


「え"、そこで自分に振らないでくださいよ!?」


我、関せずのムカつく顔してるアルヴィンも巻き込んでやる!


「なぁ、アルヴィンよ。次期領主の兄上をここで何も食わせないというのか?我々兄弟の命を護衛の君が守るのだろう?餓死するかもしれないのに放置するのか?」


「言い方が卑怯ですよルーク坊ちゃん!?」


「いや、腹が少し鳴っただけで何故そん「兄上は黙っててくれ!」う、うむ…」


「嗚呼、ここでアストラ家の跡取りの命が途絶える……それがなんと悲しいことか!しかも、それを実行したのはよりにもよって我が家の騎士とは……シクシク」


「ああーもう!分かりました!分かりましたから嘘泣きはやめてください!周りに人目がありますよ!?」


「そうか。では、なにか食べ物を奢ってくれ。俺たちは小遣いないからな。」


「急に落ち着くな!あーもうなんでこんな目に……」


そう言ってアルヴィンは周りを見た後……


「この辺りならアレがありますね。」


「「アレ?」」


アレとはなんだ?兄上と声被ったんだが。


「付いて来て下さい。」


そう言って彼は角に曲がった、そんな彼に俺らは付いて来た。

すると、曲がった角から肉の香ばしい匂いが漂ってきた。


そこにあったのは肉の固まりが鉄の棒で刺してゆっくり回転させられていた。


「こちらですよ、坊ちゃん方。」


「アルヴィンとやら、これはなんだ?」


…と、兄上が聞いてきたが、変わりにセッテが応えた。


「タフクサですね。」


「「タフクサ……?」」


「見ての通り、屋台の肉料理です。肉と野菜を何百枚も挟んで、鉄の棒でそれをまとめて串刺して、この屋台に付いている回転魔導具で回転させながら、横の熱魔導具で加熱させるのです。」


続けてアルヴィンが、


「そして、加熱させた肉と野菜を削って、あの茶色の皮でソースと一緒に包むんですよ。あとはもうガブリ!だけですね。」



「へぇー」

「が、ガブリって、フォークとナイフはないのか……?」


所謂、前世のドネルケバブと一緒か。

ケバブと違ってあっちは立てで回転させてるが、こっちは横になってる。

あと、こっちは肉から落ちた油を下の斜めの鉄板が集めて、油を香辛料と野菜を混ぜてソースにしているのか。


うへー前世の俺の20代後半の年齢とこっちの6年を合わせると30代ちょっとになるだろう?普通だったら胃がもたれそうだー


「おっちゃん、タフクサ4人分。俺のソースは辛めで、坊ちゃん逹はどうしますか?」


「「「まかせる」よ」します。」


「甘め3人分。」

「あいよ!」


手慣れた手順で、あっと言う間に4人分が出来上がった。

そして、道端の日影に丁度いい座れるところがあって、そこにセッテ以外3人で座った。


「はい、坊ちゃま方。熱いのでお気をつけて。」

「アツ……っとと、ありがとうセッテ!」


「…………感謝……する。」


明日は槍でも降るのだろうか?兄上が感謝の言葉を口にしたぞ?セッテも驚いて目が丸くなった…


「いえ……では、温かいうちに召し上がって下さい。私は向こうの屋台に飲み物を買って参りますので、少々離れますね?」


「あ……ああ。」


さすがはスパイメイド、例え驚天動地の出来事があってもすぐに笑顔を見せれるのか。


「食べるか」

「うむ……」


パクッっと、二人同時にタフクサを食べた。


「おおー濃っ、でも美味いな。」

「…………!!」


濃いが、中々イケるな。前世含めての年齢の肉体で食ったらさすがに無理だったろうが、子供の俺ならイケるな!


「うまい!うまい!うまい!」

「……美味なのは分かったが、黙って食べられないのか貴様は……」

「只今、戻りました。リッタ(リンゴ)のジュースです。」

「あ、おかえりー」

「先に飲み物貰えんか?美味だが流石に濃い。」

「どうぞ。」


とするとセッテが俺の近くに立った。ちなみにアルヴィンは兄上の隣で黙々と食ってる。

……黙ると馬車の件に戻りそうだ


「そういえば、兄上よ。」

「なんだ?」

「適性検査終わったから、そろそろ誕生日パーティーという名の兄上品評会だよな?」

「身も蓋もない言い方するな!それで?それがどうかしたか?」

「いや、婚約者とはもう会ったのかなーって気になってな。」

「いや、まだだ。父上と母上がその件で朝早く出て行ったのだ。」

「因みにどの家の子になると思う?」


まぁ、こんなこと聞かなくてもゲームで知ってるがな。


「父上逹は色んな家に声を掛けているが、恐らくあの家の娘になるであろうな。」


ゲームではその娘は兄上のことを愛していたが、重度なモラハラとその娘の家に圧力をゲームの兄上にされていた。それを見かねた正義感旺盛の主人公は兄上に決闘を申し込んで一度主人公が負けるが、後にその決闘に不正薬品が使われたと判明して、兄上はアストラ家の力でそのことを有耶無耶にした。


「恐らく、オルビット侯爵家……オルビット家の一人娘……」


その娘の名は、


「トリーシャ・ヴィ・オルビット嬢になるはずだ。」





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