第31話
「お……来たか」
十九時ぴったりにインターホンが鳴った。
確認するまでもなく大吾と沙羅だろう。すぐに扉を開けに行く。
「いらっしゃい」
「悪いな急に」
「いやいいんだけど……」
改めて二人を見る。
金髪の似合う爽やかな高身長細マッチョイケメン。
ピアスの目立つショートカットのダウナー系美少女。
どちらも顔は整っているんだが、系統が違いすぎてやっぱり共通点が見つからない。
「まあとりあえず入るか」
「いいのか?」
「むしろここで三人立ち話の方が避けたい」
壁もそんなに厚くないアパートだが、外で立ち話よりは中の方がましだ。
「じゃあ、お邪魔します」
「久しぶりっすー」
礼儀正しく靴まで揃えて大吾が入って、まだ二回目だというのに慣れた様子の沙羅が続いた。
ひとまず部屋に入ってもらってくつろごうかと思った瞬間だった。
「悪い! 沙羅が迷惑かけて」
大吾が土下座していた。
そのまま大吾は沙羅に目線をやり、沙羅もそれを受けて同じように頭を下げてきた。
「申し訳ないっすー」
間延びした声ではあるが姿勢は妙に礼儀正しい。
「えっと……どういう関係だ……?」
まさか大吾の彼女か何かかと思ったが、その場合むしろ怒られるのは俺なのではという気持ちも……いや別に俺が何かしたということはないんだけど一応心象は悪いだろうなんて考え込む。
正解はすぐに、大吾の口から告げられた。
「妹なんだよ。沙羅。俺は宮川大吾。こっちが宮川沙羅」
「え……」
確かに大吾は妹がいるって話をしていた。
ただなんというか、あんまり結びつかないなと思って二人を改めて見ると……。
「ちょっと顔似てるな」
「でもお兄ちゃんと性格は似なかったっす」
沙羅が言う。
全身ピアスのいかつい女の子が「お兄ちゃん」と言ってるのがどことなく可愛い。
「こら。迷惑かけたんだからお前がちゃんと謝るんだよ」
「そうっした。すみません先輩ー。お兄ちゃんと話しててちょっと行き過ぎたなって思ったっす」
なるほど。
ようやく二人で来た理由も、今日の目的も分かったんだけど……。
「俺は別に気にしてないしそんなに深刻にとらえなくていいぞ」
沙羅に関してはまあ、グイグイ来るのはコンビニで話しているときから感じていたし、そういうものと思えば受け入れられない範囲ではない。
ちょっと驚いたけどまあ、そこで嫌な感じにならないだけの愛嬌みたいなものが沙羅には備わっていた。
「……ほんとに大丈夫なのか?」
拍子抜けしたように大吾が言う。
それでも正座は崩さないし、その姿でさえ様になっているのがなんかもう凄い。
「ああ。驚いたけど別にって感じだ」
「なるほど……なんとなくアキが同じタイプに懐かれてる理由を理解した」
「え……」
色々ツッコみたいんだが追いつかないままに沙羅がもう一段階ギアをあげようと、まず大吾に確認する。
「自分、もうちょいグイグイいっていいってことっすかね?」
「迷惑にならない範囲にしておけよ」
大吾ももう諦めたのかこんな返事をしたせいで……。
「わかったっす。先輩、バイト終わりたまに遊びに来てもいいっすか? 性欲処理に使ってもらってもいいっす」
「おい!」
「自分、別にそれでも幸せは感じられると思うっす」
「お前の妹だろ、なんとかしろ!」
大吾を見ると天を仰ぎながら額に手を当てて頭を抱えていた。
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