第28話
「どしたの?」
ニッと笑いかけてくる寧々に不思議な気持ちにさせられるが、まあそれでどうこうなることもないので話をするとしよう。
ちょっと寧々には聞きたいことがあったんだ。
「寧々は誰と付き合っても身体を求められると拒んでるよな?」
「ん? そだけど急にどしたの」
身体を起こしてこちらに身体を向けてくる寧々。
少し真面目な雰囲気を感じ取ってくれたらしい。
「逆に身体からの関係になったりとか、身体を許したくなるのって……ないのか?」
我ながら変な質問をしていると思うが、沙羅が部屋に来てからずっと考えていたのだ。
身近に相談できる相手として思い浮かんだのが寧々だった。
寧々も茶化したりせず、しばらく考え込んでからこう答えた。
「私はないかな。というか、まだ身体を許していいラインがわかってないかも」
「そうなのか?」
「あ、お兄なんか誤解してるけど、寧々はたくさん付き合うけどそういうことになったこと今まで一度もないからね? まだ処女だよ?」
突然刺激的な言葉が出て来て固まっていると……。
「お兄のそういう反応は可愛くていい……あ、そうか」
なぜか寧々は一人で納得して続ける。
「寧々、もしかして今までタイプだと思ってた相手、別にタイプじゃなかったかも」
「え?」
「お兄みたいなタイプとは付き合ったことなかったというか、なんだかんだ言っても顔で選んじゃうから可愛いって思う前に絶対かっこいいって思って付き合ってるんだよね」
俺にしゃべるというより自分に言い聞かせるように寧々が言う。
相槌レベルで俺も話にはついていくが……。
「可愛いって思ったらみたいな話はしてたけど、それだけじゃないのか」
「そうかも? 可愛いだけになったらともかく、なんだかんだでかっこいいがなくなっちゃうと駄目な相手としか付き合ってないし……エッチとかちょっと……怖い」
「怖い、か」
あまり寧々から出てこない弱気な発言を意外に思っていたんだが何か勘違いした様子で寧々がまくしたててくる。
「あ! 処女っぽくてうざいとか思ったでしょ!」
「思ってない!?」
濡れ衣もいいところだった。
なんだ処女っぽくてうざいって……そんな感情すら初めて聞いたわ。
「うぅ……わかってるもん……。寧々だって男だったら、こんなしょっちゅう誰かと付き合ってるならワンチャンあるって思うの」
そういうところは感じてるのか……。
「でも……寧々は寧々がかっこいいと思った人としか付き合えないし、でもエッチなんかしたら、絶対かっこいいだけじゃなくなっちゃうのが、怖い」
「そういう怖い……か」
複雑な気持ちだなと思いつつ、一定の理解は追いついた気がする。
と思っていたのに……。
「うん。お兄は別にかっこいいと思ったことないからいけるかもしれない」
「は?」
追いついたと思ったらいきなり置き去りにされた。
どうしてそうなったんだ。
「それにさ、お兄」
「ん?」
「寧々、最近お兄のこといいなって思ってたんだよね」
目の色を変えて寧々が言う。
少しずつこちらに近づいて来ながら。
「他の人だとあんまり思わなかったけど、お兄だとなんか……ちょっと相手がいるのも含めていいよね」
「どういうことだ」
じりじりとなぜか部屋の隅に追い込まれながら、なんとかそう返す。
「なんだろ……相手がいるからちょっと、ゾクゾクする?」
「怖い」
シンプルに怖い。
寧々の目がちょっと、正気じゃないようにすら見えてくる。
「えーでも、自分の思い通りにならない相手こそ燃えない?」
「いや……」
俺にはわからない感覚だ。
そしてそれは寧々も同じだったらしいんだが……。
「寧々もよくわかんないけど、でもお兄がデートしてるの想像したらちょっと、そういう気持ちになってね。お兄のことそういう目で見たことなかったけど、これはこれでいいじゃんって」
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