これは、1人の通学記録

市川京夜

第1話 3月20日 晴れ

「つくづくめんどくせぇ…」

8時45分友部駅発の常磐線に乗り込みながら呟いた。


[三ノ丸一高新入生へ 3月20日 模擬授業のご案内]

・9時25分~10時35分 国語模擬授業

・ 10時45分~11時45分 数学模擬授業


「なんでわざわざこんな時期に学校で授業なんだよ」

「ホントにな、オレ起きてからまだ30分経ってないわ」


本来春休みであるはずのこの日に、松田達也は電車に揺られ進学先に向かっていた。隣の席には中学が同じでそこそこ会話は続く仲の、入野智久が座っていた。

「なぁ、入野。なんでオレら今日高校に向かってんだ?春休みだよな?」

「それな?入学式は4月…5、6日…とにかく上旬だったし模擬授業ってなんなんだホントに」

「まぁ進学校様だから、授業が始まる前の時期にこうやって慣らしでもしとかないとヤバいってことか」

「春休みくらい勉強のこと考えずリフレッシュさせて欲しいよ…」

2人の地元である友部駅から高校の最寄り駅の水戸駅までは電車で15分ほど。同じような文句が出る会話を5度繰り返しているうちに到着。

「まぁ、今日から天下の三ノ丸生ってことで頑張るかぁ」

「それな、そうじゃないとやってられん」

気持ちを切り替え、2人は電車を降りた。


―14時4分、

達也は行きよりも明らかに重くなったリュックを背負い、電車に乗り込んだ。

「数学の薄い冊子の問題集、教科書、国語の教科書、資料集…あとはまた数学のなんかやたら重い問題集とその解答…そして、は?薄い冊子の方に解答ないし、どうやって解くんだよ…」

今日の数学の模擬授業、彼は初っ端からチンプンカンプンであった。それに今日、冊子の問題集を4ページ解いて明日に備えろという話である。

「1ミリも分かんないのに4ページなんてどうやって明日までに終わらせるんだよ。どこに何代入して、どうやって解くんですかいな。てか答えないしさぁ、誰かに聞く?智久…も昼前会った時にこの数学は無理って断言してたな…」

さすがは一高だと、頷きながら、初日から不安しかない高校生活が始まっていた。

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