第7回 文章を考えてみよう(7)スランプ篇

 二〇一六年から小説を書くことを始めて七年目になります。そのあいだはずっと短編を書き続けてきました。書き続けられたのは半分くらいはカクヨムというサイトのおかげです。

 中編は二、三回ほど挑戦しました。いざ机に向かうと湧き出る泉のように書ける日もあればまったく書けない日もあります。よく創作の話題では変わらず一定のペースで書き続けましょう、とあります。でもわたしは本稿ではそう言いません。ほんとうに長い間をかけて書くならば小説を書くことが課題であると思い込むことは得策ではないと思います。書けない日をどう受け止めるか、抱えていくかがむしろ大切だと感じます。


 ちょっとしたエクササイズをしましょう。

 

 たとえばA4のノートやB6のメモ帳を用意します。書き味のいいボールペンを持ってきます。きょうは洗濯をして…… 買い出しをして…… 夕ご飯は何にしよう…… なんでも構いません。思ったことを思ったまま綴ってみましょう。自分を否定せず、検閲せず、妄想やありえない空想、ちょっと歌いたくなったら、その歌詞を。綴ってみましょう。ほんの三〇分でいいです。

 書けましたか。

 そのとき何にも思いつかないときがありましたか? 


 その時間を経験した方はほんとうに幸運です。


 小説も思ったときになにか書かなければ成立しませんし、書き終わりません。しかし書き続けたときにできる、ほんの少しの間、このちいさな時間に耐えることは小説を書くことに耐えることと一緒だからです。


 この空白の時間にどう過ごすか、机に向かい続けてもいいですし、外を見て、季節の変化を感じるのもいいでしょう。それにちょっとおいしいものを食べに行く計画を立ててもいいです。あるいは休日の予定に美術館に行こうと考えたり、いったん子どもの気持ちになって物事を眺め直してみる、絵を描いてみる、写真を撮る、コラージュを作る、旅行でいい景色を見に行く、なんでもいいです。


 心が動くままに小説とは離れたところで生きてみましょう。そうすることは小説が祝福してくれます。どんな芸術活動でも心の一部を懸命に使って、働かせてやるわけですから、すこしでもみずからを労ってやる、自分を貴重品のように扱ってやるのは大切なことです。ほんとうに疲れたら休めばいい。そういう余裕が創造行為には重要になってくる。


 きょう創作を止めても構いません。いつかあなたは帰ってくる、そのときにどれだけのお土産を持って帰れるか、どれだけ心に栄養があるかが創作には大切です。

 ほんとうにあなたは頑張ってきました。そのように認めてみましょう。

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