捨て猫ならぬ、捨てミミズク拾いました。 〜晴れのち雨、時々ミミズク〜

藤波

1話 春の見知らぬ出会い

 綾にとって、母の作るオムライスは格別だ。


 お店のようなとろっとしたものではないけれど、少し硬めの卵とコク深いバターライスがケチャップソースが相まっておいしさを引き出し合う。

 

 いつもだったら嫌なお使いも、今日の夕飯がオムライスであると言われたものだから卵を買いに家を飛び出た。


 行くのはいつもの養鶏場。スーパーで買う卵よりも少し高いし遠いけれど、美味しさは格別である。


 レジの前にいたおばちゃんに声をかけお金を渡す。するとおばちゃんに声をかけられた。


「走る必要はないけどね、綾ちゃん。急いで帰った方がいいよぉ。天気予報じゃぁ、このあと雨だから。」


 確かに言う通り、さっきよりも空が暗い。今にも降り出しそうだ。これは早く帰らないと。おばちゃんにお礼を告げて綾は帰り道へ駆け出した。


 いつもと変わらない道。養鶏場を出れば、すぐにまた住宅街で。


 でもひとつだけ、行きと違う。段ボールが道のど真ん中に落ちていた。


 捨て猫か何かなのだろうか。それにしても、道のど真ん中に置いていくなんて酷過ぎる。


 「なんだろう、これ。」


 少し近づくとおれんじ色が見えてきて。


『見えて』急いで近づいた。


 入っていたのは猫ではなかった。


 鳥っぽい何か、そう鳥っぽい何かである。鳥と言われれば鳥っぽいのだ。くちばしあるし。でも三角の耳が生えていて、綾の知っているひよこや雀、鳩はやっぱり違う。

 だから鳥っぽい何かなのである。


 この動物がなんなのかはわからないが、このまま放っておけば、雨に打たれて凍え死ぬか、視界が悪くなった車に轢かれてしまう。


 気絶しているのか、揺らしても、うめき声しか聞こえない。苦しそうだ。


「とりあえず連れて帰った方がいいよね。」


 今の綾には連れて帰るという選択肢以外はなかった。 段ボールを抱え込むと、さっきよりも家へ急いだ。

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