第91回 京都SFフェスティバルに行こう(3)

 ついに始まった京都SFフェスティバル(そこはカクヨムコン9では……?)。オープニングは予定通りと思いきや、ちょっとしたトラブルから始まります。本日はカクヨムSF研のDiscordのボイスチャンネルから実況していました。SF研のメンバーとお話ししながら、内容はほとんど聞こえていませんでしたが、面白い会になりました。お話しいただいた皆さん、ありがとうございます。


 まず橋本輝幸さんと鯨井久志さんの「海外SF紹介者という仕事」のコマ。海外SFの最近のタイトルはほとんど編集者が決めているらしいという面白いお話から始まりました。編集者はじつは海外SFの世界ではクリエイティブな仕事なんですよね。特に鯨井久志さんが翻訳したロボットSF、ジョン・スラデック「チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク」、原題は「Tik-Tok」です。ここも編集者の趣向を凝らした結果となっています。面白いですよね。

 また翻訳者が世界を変えるというお話も面白く聞きました。たとえば劉慈欣「三体」を英米圏に紹介したのはSF作家のケン・リュウの翻訳だったというお話ですね。「三体」は全世界で2900万部を超えるベストセラーとなりました。日本では47

万部を売り上げ、日本を含め世界で大ヒットしている作品です。いま現在のSFの黄金期を支えています。また翻訳のお話では「マーダーポッド・ダイヤリー」も語られたようです。


 続いて「猫×アポカリプスの時間だにゃ~!」のコマ。「ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット」の原作者ホークマンさんと漫画家メカルーツさんを招待して、作家の久永実木彦さんを囲んだ鼎談ていだんとなりました。ホークマンさんは別ペンネームで「配信勇者」の原作を担当し、知っている方もいるのではないでしょうか。

 作家のアイデアはどこから来るのかをスティーブン・キングの著書から引用したり、映画のお話を楽しく聞いたりする一方で、「猫」の良さとはなにかという永遠の問いを投げかけるユニークなコマとなりました。「猫のお腹って濡れてないですか?」というほのぼのトークから、「美味しいご飯を食べてお昼寝してハッピー、そういう猫にいつも人生を教えられている」など猫にまつわるお話をSFの企画だというのにたくさん語っていただきました。


 次は「SFをSF考証する」のコマです。日本のアニメーション界で10人しかいないと言われるSF考証家の貴重なお話でした。登壇した高島雄哉さんは「ブルバスター」や「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のSF考証を担当されています。またゲームでは「アーマード・コア」の最新作への参加と、大活躍しているようです。SF考証は作品をリッチにするという視点が面白く、昨今のSFシーンの中心になりつつある、SFプロトタイピングのお話も興味深かったです。SFプロトタイピングとは、企業のイノベーティブな領域をSFの持っている想像力で試作的に示すお仕事です。また最近ではSFの考証家が脚本家を任されるケースもあり、アニメ業界のお話も面白く聞きました。


 最後の「20年代のSFとライトノベル」のコマはライトノベル作家の夏海公司さんと周藤蓮さんの対談でした。夏海さんのデビューされた年、2008年は強気な編集者と作家が多かったというお話と周藤さんのデビューされたときのお話で会社は辞めないでくださいと言われたエピソードの対比は面白かったです。ライトノベルとSFの作品の違いは特に興味深かったですね。ライトノベルではヒロインの外見は編集者と詰めるというお話とSFレーベルのほうはほとんど問題にされない、そういうカルチャーのギャップといったお話を覚えています。


 全体をすべて事細かに聞きたい内容でしたが、ご飯の準備などでそうも行かず7割参加みたいなものになりました。京都SFフェスティバル1日目のレポートを終わります。

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