ブッコロー捕獲作戦。
ま。
第1話
「景品獲得おめでとうございます!!」
店内に放送が入る。
いま大人気のブッコロー。今日はその景品の入荷日だ。
これ目当ての人がたくさんいる。
有隣堂しか知らない世界。
このYouTubeチャンネルはもちろん私もファンで、グッズも持っているしイベントにも参加している。
元々文房具は好きだったが、チャンネルの存在は知らなかった。とある街紹介系のテレビ番組で紹介されたのをみたのをきっかけに知り一気にファンになったのだ。
特にこの毒舌ミミズクに心を捕まれた。
以前はこのブッコローが「弱小チャンネル」なんて言っていたのに今ではゲームセンターの景品まで登場し大人気となっている。
(いいなぁ。欲しい)
なんてマシン内のぬいぐるみをみていた。
人気景品なのでだんだんと減っていくのだが、最後の一個がなかなか獲得されない。
それどころかアームから逃げてる気がするのだが?
明らかに動きがおかしいのに他の人は気づいてないの?ブース内をコロコロ逃げてるのだが?捕まれたら体捩って脱出してるのだが?
遊んでた人が離れたので近づいてみる。
「このブッコローさんお迎えされたくないのかな?なんてね」
「あたりまえじゃないか」
「!!」
いましゃべって!
「いきなり訳のわからないところにいるし!どこだよ!」
突然のことに思考が追い付かない。むしろ怖い。恐怖。
とりあえずわたしは何もなかったことにしてその場を離れた。
2時間後。再びマシンの前へ。やはりあのブッコローぬいぐるみは残っている。
「やっぱり欲しいしチャレンジしてみるか」
「あ、さっきの。ここから出たいがどうすればいい?」
気のせいじゃなかった。こう、脳内に直接話しかける系のアレ!これ!それ!
それがいま目の前に。
固まってしまった私にブッコローが続ける。
「とりあえずゲームして取ってくれ。自分で動くにも限度がある」
「あの、わたしこれ苦手なんですよ。それに今日は手持ちが少ないし」
「ふーん。がんばれ」
いや、いや、いや。他人事。
「このままなにもせず帰るという選択肢もございますが」
「悪かった。協力してほしい」
給料日まであと3日。食材はまとめ買いしてるしなんとかなるかな。わたしは両替機にお札を突っ込んだ。
そして。
「なんで逃げるんですか!!」
「すまん、つい」
「資金がつきたらそこで終わりなんですよ!こっちは給料日前なんですから!!」
からかわれているのか協力すると言ったわりに捕まらないように逃げるブッコローに対しもう怒ることしかできない。
「ちょっとおとなしく待ってて!また両替してくるから!!」
わたしの財布が軽くなっていく。
ただでさえ苦手なのにブッコローが逃げるから余計につらい。つらすぎる。
「ブッコローさん。これ以上ふざけるとここから出してあげたとしても乗らないことが幸せと言ったあの電車、ラッシュ時間帯に乗せますよ」
「すみませんでした」
わたしの手の中には100円玉が10枚。これで全て。
さあ勝負だブッコロー。
ブッコロー捕獲作戦。 ま。 @nemui-nemui-k6
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