卵厳選からの転生生活
@n-c
第1話
私が気付いたときは周りが薄明かりに包まれていた。
明かりが強く感じるほうに身体を動かすが薄い膜と固い何かに当たる感覚がある。
私は薄膜を破り固い何かを押すがビクともしない。
手が上手く使えなくて頭で押そうと身体を突っ張るとピシリと音がした。
何かにヒビが入ったような音、更に身体に力を入れ何かを押すとピシピシと亀裂音が大きくなった。
力の限りを尽くして私は亀裂を押し広げる。
亀裂の向こうから強い光が差し込み私は目を細める。
光に慣れた頃に目に映るのは青空だった。
私は青空目掛けて周りの何かを押し除けて外に出る。
そのときの第一声が……。
「ピュィィィィ。」
はて?何の鳴き声かと思ったが、明らかに自分から発せられた鳴き声のような気がしたが…。
私は不思議に思いながらも、もう一度声を出そうとするが聞こえて来るのは。
「ピュィ。」
一旦落ち着こうと辺りを見渡す。
私の周りは鳥の巣のような藁なのか何なのか分からない草や木の蔦何かを編んだ物の中にある白い殻の中から出て来たようだ。
この白い殻ってもしかしなくても卵の殻だよね?
ナニ?私は卵から産まれた訳なのか?
卵から産まれる生き物って何だっけと考えて見たが、そもそも私って誰?
私には記憶がある。
誰だってあるだろうと思うかも知れないが、産まれたての雛が記憶があってもたかが知れてるだろう。
私の記憶は1人の人間の記憶だ、名前や性別など曖昧なのだが、人が持っている常識や価値観などは理解出来るくらいの知識がある。
日本と言う国で育ち成長し遊び学び働いた記憶。
ごくごく普通の1人の人生が私の記憶に残っていると言えば良いのか、今の私とは違う記憶だとはハッキリ理解出来た。
私の記憶の中にある転生と言うものだろうか?
その手の小説や漫画が好きで良く読んでいたようだ。
その中でも良くある人外転生と言うヤツなのだろうか?
私は殻から這い出て身体を良く見る。
顔は見れないが前脚は猫科の動物のような爪と肉球がある。
後脚も似たようなものだ、尻尾が生えていて先にフサフサがありライオンの尻尾のようだが。
胸の辺りにある毛が鳥の羽毛のようなのが生えていて、背中を見ると鷲のような翼が生えていた。
ただ色が漆黒なのでそれっぽくは見えない。
しかも鳴き声が「ピュィ。」ってどんな生物なの?
卵から産まれる猫科の動物なんて私の記憶には残っていない。
これは異世界人外転生と言う設定モリモリな感じなのだろうか?
取り敢えず私は巣の周りを探索する。
巣の淵から外を見渡せば其処は崖の中腹にある岩棚だった。上には崖が続き遥か下を見れば森が広がっている。
森の先には微かに平野が見られるが、ここからではよく分からない。
岩棚の広さはそこそこ広いが何もない。
幸いなことがこの身体は空腹も喉の渇きなんかも感じない。
周囲の何かを吸収している気がするが、何となくなので確証は無い。
転生のお約束はしておかないといけないな。
「ピュィィピ(ステータス)。」
シィーンと静けさが辺りを包む、これは辛い。
前脚を地につけ(最初からだが。)頭を垂れる。
そうそう都合のいい展開は内容だ。
周りに親も居なければ敵も居ないのでこのような事が出来ているのだが、もう一度辺りを見渡すが視界の隅に何かが映っている。
右の上隅に顔を向けるが、その影は私の顔の向きと連動して動く。
顔を向けると動くので視線だけを上隅に向けると、其処にはメニューの文字が映っている。
私は膝から崩れるように腹這いになる。
そっちかよっと、叫びたくなるがどうせ可愛い鳴声しか出ないので辞めておく。
メニューに意識すると項目が出て来た。
ストレージとマップ、それにスキルの文字だった。
ステータスは無いようだ、取り敢えずストレージを確認するがやはりと言うか何も入ってはいないようだ。
次にマップを開いて見るが半径10mくらいは表示されているが、その外側はグレーアウトしている状態だ。
自分が行った場所だけが表示されるようだ。
最後にスキルだ。
グリフォン(希少種)[ ]0歳
スキル:[鷹の目][爪撃][空歩][風魔法][
称号:[転生者][ネメシスの加護]
ほぅ、私はグリフォンなのか。
スキルだけを見ると中々強そうな感じだが、希少種とはもしかして色違い的なヤツなのか?
黒いグリフォンなんて居たんだな。
もしかして卵厳選して要らなくなった卵を野生に返した的な?
野生に返した卵は色違いですよー!
何が気に入らなくて私は野生に返されたのか分からないが、分からないから考えても仕方がないのでスキルの確認をしておこう。
最初の4つのスキルはグリフォン特有のスキルのようだけど、それ以下のスキルで分からないのがあるな。
スキルの1つに意識して見ると。
[魔拿魔法]:この世界に満ちているマナ(魔力の素)を使用して行う魔法。
さっきから吸収してたのは、大気中にあるマナを身体に取り込んでいるのかな?
[魔拿感知]と[魔拿操作]が関係しているのが何となく分かる。
この魔法のお陰で回復もしてくれるのならありがたいが、これは加護のお陰なのかな?
[転生者]:この世界に記憶を持って転生した者に与える称号、この称号があると[メニュー]と[生活魔法]が使用でき、魔力が上手くあつかえるようになる。
[ネメシスの加護]:女神ネメシスの加護を与える称号、[魔拿魔法]と[影魔法]が使用できマナの扱いに長ける。
何故女神様の加護を受けることが出来たのかは不明だが、あって困るものでも無さそうなのでありがたい。
他のスキルはおいおい確認して行こうか、取り敢えず此処から脱出することを考えよう。
私は[空歩]のスキルを試して見る。
空を飛ぶと言うより、空を駆ける感じのスキルのようだ。
地上と同じように走れる。
翼も併用すると滑空して長く飛べるが、翼だけだと飛ぶのが大変なようだ。
これに風魔法で浮力を得ると更に飛び易いのだが、少し慣れが必要のようだ。
私が翼の扱いに慣れて居ないだけなのだが、元人間に翼を上手く動かせと言われても無理な話だ。
暫く空歩と風魔法を併用しての練習をして居たのだが、ふと気になったことがあった。
日が沈まないと、何故かメニューの中に時間を示すものが表示されているのだが、只今の時間は17:32と表示されているのだが一向に日が傾く気配が無いのだ。
此処は本当に何処なのだろうか?
白夜のような薄明かりにでも無いので、極地とは言えないだろう。
気温も過ごし易い気候なのだが、私の時計と時差がある所なのかも知れない。
もう暫く様子を見てみようと思う。
その後も暫く練習をしといたが、日は暮れないようだ。
そんな土地はある訳ないのだが、私は1つの仮説を立てた。
此処はもしかしたらダンジョンかも知れないと。
私はダンジョンの中で産まれた魔物ではないのかと。
ただ私が生きていた記憶にはダンジョンなんて無かったので確証は無いのだが、他に説明の使用が無いので取り敢えずはそう言うものだと思っておいていいだろう。
あと分かったことは今の私にはこの崖の上には行かないと言うこと。
私の能力が足りないのか、ダンジョンの不思議パワーが働いているのかは分からないが上には行けない。
後はこの森にダイブするくらいしか選択肢は無いかな。
草原まで行きたいが、そこまでは飛べそうに無いし、急ぐわけでは無いので下に降りてマップを埋めて行こうと思う。
マップとかあると埋めたくなるのは性格が出ると思う。
もしダンジョンなら宝箱とかあるかな、ストレージにどれくらい入るか分からないが私はエリクサーなどの貴重品は最後まで取っておく派だ。
ただの貧乏性とも言うが、こう言うのは性格だから仕方がないと思う。
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