深淵の村{事変と束縛}

 遠くに黒い点々。村だ。其れを確認してから現実に引き戻された。

「うぅ...飛び出しては見たものの....意外と怖いな....って...うわぁあぁああ!!」

突風により大きくバランスを崩す

「危ない.....。」

ゆっくりと大地に足を伸ばしランディング。

ぼそっ....と後ろから、頭上に広がっていたものが覆い被さる。

「うぐ...」

どんぐりから出てくる芋虫のようにもがきながら這い出る。パラシュートを取り外すが、使い捨てモデルだったため放置する事に...目を離した隙に魔法により土へ還っていく。

「......進む....!」

村が見えた方角へと歩いて行った。


 幾らか歩いて行った。遂に木の柵が見えてきた。しかし明らかにそれは焦げていた....真っ黒だ。柵だけでは無い、村全体がすすで埋め尽くされていた。

「......戦い...何か...があったのか....?」

その村の跡に足を踏み入れる。靴の裏が真っ黒になって行くのがはっきりとわかった。

「ん...?ひとかげ?」

たたたた...と小走りに近づく。

「ッ!!!........骨?」

リアクションに感応する様に、ぽと....と頭が落ちる。少しおっかなく感じ、離れた....しかし、着実に日は沈みかけていた。意を決し....

「.......失礼....します....!」

炭で出来た空き家に入る、子供の骨もある。その家の中に、かつて鋼のポニーに取り付けられていたテントを張る。

やがて夜になる...なにかの遠吠えが聞こえ、風も強くなる...骨が落ちる音が響き....星が冷えていく。

「クルマどこ行ったのかな.....はぁ...息も白いや....それに...眠いな....」

その沈み行く深淵を突き破ったのは蒼い光だった。


 舞い降りた蒼い光はすぐに消えた、ルアは腐った窓枠越しに様子を伺う。

「なんだ?....生き物か.....?」

『そう....生きてるんだよ』

「ひゃうっ.....!?」

『貴様こそ....何故ここにいるのだ?』

暗くて見えないが、すぐ目と鼻の先から凍てつくような視線を感じる。その時ルアは、割と勝手に家に上がり込んでいたことを思い出す。

「.......僕は....失礼しますと言いまし.....言った!」

緊張諸々で我ながらに意味が分からなかった。

『.......ほう?』

彼もしくは彼女の透き通った低い声から何か迷いを感じた。

「僕...はッ.....えと....旅人で.....宿として....?泊まらせて貰ってます....はい....!」

『....そうか』

...........。

また深淵が戻って来た...のも束の間...!がぁッと頭を床に押し付けられた。

「うぐぅ.....」

すると機械的な光が村に届く。薄闇を照らす其れを見て、

『ギルド....面倒臭いな、いや好都合か?』

ギルドの車両達、ある日ルア一行を追いかけ回し彼がここに居る要因となったあの大型トラックとは別種だったが....。

それと、幾つか馬車(のようなもの)も引き連れている。村だった地へと柵を踏み潰しながら入ってくる....次第にガヤ付いてくる。

『作戦基地をここに建てる!いいな?』

『了解しました。では完成次第、本部への報告を行います。』

慣れた手つきでテントが組み上がって行く。

「なんなんで...。」

『喋るな、』「....はいぃ.....。」

舌打ちを1つしたその人物、人間かも分からないが。

『報告終わりです。次の指示を』

『了解...。では索敵迎撃班の出番だな。それ以外は会議を行う。』

『はい、わかりました。』

めいいっぱい目だけで見上げ、ライトの明かりに浮かんだその顔は紛れもない人のものだったが、なにか違和感があった。エメラルドのような透き通った翠の瞳....土を踏む音に反応してか未だ頭を押し付けてくる....。

その細い腕の持ち主はきッ...と瞳孔を、まるで鷹のように絞り...刹那、蒼い粒子と共に消えた。

「....消えた.......。」

ドアを開けて誰かが入ってきた。特殊材質によって作られたプロテクターを装備した...さっき聞いた言葉からして、索敵迎撃班というものの班員か?

『うおっ!!なんだお前は!こちらトカレフ、援護求む!』

「え、ちょ...!」

『こい、聞くだけ聞いて帰してやる』

今度は全身を床に押し付けられる。

『どうしたトカレフ?』

『あぁ、グロッグこいつを縛ってくれ』

『ンだと?そンぐらい一人でやれよなっと.....』

ルアは身をじる。

『この野郎動くな!』

全く起き上がれそうに無い。今、野郎と言ったか?ふふふふ....

『というかトカレフよぉ...よく女に手を出せんな』

むっ.....!

「僕は....男ですよッ!!!」

『え』


 暫くし、後ろ手に縛られ歩かされる。

「何すんですか?」

『ただの質問だ!歩け、ほら!』

さっきより荒い。丁寧もなにもあるのだろうか。

がこっ!

『お前、こんなとこで何してたんだ?』

「た、ただの旅人ですっ!!」

『旅人はあんなとこでねっころがんのか?』

「外は寒いでしょうが!」

『おい、グロッグ!少し当たりが強いぞ?』

『あぁ、コルトか...まぁな.....なんかあったか?』

『それが、こちらの古代異装...』

『カメラタイプか...ってこれはッ!』

『そうだ!だ!監視級の!SS-09....だったか?』

『でかしたじゃねぇか!コルト!』

『索敵班も少しは給料上がるか?』

『そりゃあねぇな!!!ハッハッハ!!!!』

「あの.....」

『なんだ?』

「....僕はどうなるんです?」

『多分あんた一生出れねぇな!!』


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