26 両手持ち用の杖は瞬間移動する

 ― 残り13時間 ―


 うん、やっぱ冒険者ギルドが爆発したみたいだね。


 めっちゃ煙出てるし。


 じゃあここも消してあげますか。


完全水パーフェクトウォーター】を周りから死角になる場所に発動して水を出す。


 段々と煙が消えていって、救助する人達が中に入っていった。


 よし、バレてない。


 さっきみたいなのは本当に勘弁だ。


 んでえーと、ここら付近にはルーファさんとかラーダさんは…………いないなぁー。


 うーん、どうしよ。


 ……あ、そういえばラーダさんに【探す者】が通用しないから忘れてたけどルーファさんには効くんじゃね?


 発動……してみるか。


「【探す者】!」


 するとしっかりとルーファさんのいる方向が分かった。


 よかったー! 予想あっててよかったぁー!


 これでダメだったらマジで詰んでた!


 とりま急がねば。


重力無効サイレントグラビティ】を発動して【探す者】が示す方向へと飛ぶ。


完全風パーフェクトウィン】も発動して加速する。


 正直あんまこれやりたくないんだけどね。


 だって今これって横に落ちているって状況な訳じゃん?


 んで加速するとコントロールの難易度が上がるじゃん?


 つまり落下死する可能性増えるじゃん?


 だからである。


 でも、今はそんなことを言っていられる状況ではないからやるっきゃないのだ。


 かなりの速度でルーファさんの元へ行く。


 ……が


「あれ? 場所もう変わった」


 ルーファさん……【瞬間移動テレポート】しまくってるな……。


 速度を上げても追いつけるかなぁー?


完全風パーフェクトウィン】の威力を上げる。


 速度は上がったが、操作がかなりしにくくなった。


 例えるならばグ◯ンツーリスモの操作感だ。


 マジでやりにくい。


 なんとか制御しつつルーファさんのいる方向へ行く。


「あっ、いた!」


 ルーファさんの髪が見えた。


「ルーファさん!」


 空の上から叫ぶ。


「ん?」


 こちらを見て私だと気付くと手を振ってきた。


 そしてルーファさんの元に降りてラーダさんを見つけたが、消えてしまった事を伝えた。


「なぁるほどね。私みたいに【瞬間移動テレポート】を持っていないとするならば……恐らく『瞬間移動テレポート薬』を使ったわね」

「テ、瞬間移動テレポート薬?」


 なんだそれ、そんなもんあるのか。


瞬間移動テレポート薬というのはまあ名前通りの効果を持った薬よ。脳内で思った場所にテ瞬間移動テレポートできるわ」


 なんつー便利アイテム。


 …………というかそれ使えばラーダさんの所に行けちゃうのでは?


「あの」

「ん? 何かしら?」

「それ使えばラーダさんの元に行けませんかね……?」

「行けるかもしれないけど……瞬間移動テレポート薬なんて持ってないわよ?」


 …………確かにそうだわ……。


 ……じゃルーファさんの【瞬間移動テレポート】で行けば良くね?


「ルーファさん! ルーファさんの【瞬間移動テレポート】でラーダさんの元へ行けないですか!?」

「行けるならもう行ってるわ」

「なんで行けないんです?」

「ラーダさんの顔を知らないからイメージできないのよ」

「あぁ……」


瞬間移動テレポート】をするには手順があり、まず行きたいところを思い浮かべるのだが、この時〝特定の人の元〟へ行きたい場合はその人の事を思い浮かべなければならないらしい。


【探す者】みたいな感じだね。


「どうしようかしらね」


瞬間移動テレポート薬』どうにかして手に入れられないかなぁー?


「作るのも大変だから今すぐに準備は無理ね」


 とルーファさんが言った。


 …………作る?


「あっ!」


 そうだ私には『生成杖』があるじゃないか!


「どうしたのメルアちゃん?」

「私作れます!」

「何を?」

「『瞬間移動テレポート薬』をです!」

「え!?」


『生成杖』を取り出し『瞬間移動テレポート薬』という単語をイメージして『生成杖』に力を込める。


 そして地面に徐々に作られていく。


「す、凄いわねメルアちゃん」


 ルーファさんですら驚きを隠せないんだから私マジで凄いことしてるんだろうな。


 二つ作って片方をルーファさんに渡す。


 見た目は完全にただの錠剤である。


 ちと【見る者】で見てみるか。


《薬品名:瞬間移動テレポート


 効果:口の中に入れ、行きたい場所、もしくは行きたい人の事を思い浮かべながら噛むとそこに瞬間移動する。


   行きたい人の元へ行く場合は【瞬間移動テレポート】の様に相手の顔が分からないと駄目ということはなく、名前だけでその人の元へ行ける


 しかし作るのが非常に大変なため滅多に手に入らない》


 わーお、マジで便利アイテムだなこれ。


 さすがレアアイテム。


 これ今度からバンバン使お。


「これを口の中で噛めば瞬間移動テレポートするわ」


 そういってルーファさんは口の中に薬を入れた。


 私も入れるか……


 ……まあ分かってたけど味しないわ。


 苦くなくて良かったんだけどね。


 ラーダさんの事を思い浮かべながらそれを噛んだ。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


 ― 残り11時間 ―



 ぬおぉぉぉ〜!


 体がッ! 千切れッ! ぐわぁぁ〜!


痛覚無効ノーペインセンセーション】をやろうにも体が揺れすぎていて出来ねぇ!


 やばい! 瞬間移動テレポートするってこんなキツいのか!?


 ハ◯ポタの姿くらましとかもこんな感じなのかね!?


 そりゃ初回は胃の中がひっくり返るわ!


 あ、なんか揺れが収まってきた。


 そろそろ到着するんかな?


 なら早よ着いてくれぇ!


 空間がピタッと止まって地面が足に迫ってきた。


 そのまま前のめりに転ぶ。


 うおおっと!? 


 きゅーに地面が来て立てるかぁ!


 はっ! そうだ! ラーダさんは!?


 すぐに立ち上がり辺りを見回す。


 ラーダさんの髪がチラッと見えた。


「ラーダさん!」


 そう叫んでラーダさんの所へ走る。


「!?」


 ラーダさんは驚いた顔をして走る。


「あ! ちょ!」


 急いで追いかけるが……


 なんか足速くね!?


 絶対老人が出していい速度じゃないからね!?


 くそぉ! 薬使ってやがんなぁ!


重力無効サイレントグラビティ】を発動してラーダさんに向かって飛ぶ。


 やはり落下速度の方が速いようですぐに追いついた。


 よしゃ! 掴んだ!


 ラーダさんは抵抗しているが何せ私のAPは1250もあるのだ。逃げられるわけがない。


「ラーダさん! なんで逃げるんですか!?」


 後ろからルーファさんも来た。


「あら? 貴方は……」

「っ」


 あれ? もしかしてお知り合い?


「本当にルーファさんかしら?」


 ……んぅ? どゆこと?


「質問の意味が分からないわ! というかメルア、離しなさい!」


 …………あぁ〜、偽者にせもんだわ、こいつ。


 ラーダさんは私の名前を呼び捨てにはしない。


 必ずちゃん付けをする。


「離しませんよ偽者さん。正体はなんですか!?」


 偽者のラーダさんは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


 もう自分が偽者ですって言っている様なもんじゃん。


 そう思いつつルーファさんに魔法を解除してもらう。


「【消去アウレイス】」


 あれ? ルーファさんって【消去アウレイス】持ってたっけ? 持ってなかった様な気が……


 いや、旅してたら魔法手に入るもんな。


 …………私旅をしたのに手に入れてない件について……。


 おっと、そんなことよりコイツの正体は………………!?


「ルルド……さん!?」

「お知り合い?」

「前にギルドミッションで学校の教師になったんですけどそこの校長です」

「あら、運命って存在するのね」


 そんなロマンティックなもんじゃないと思うけどね……。


「ええいうるさい! お前さえ! お前さえいなければ!」


 わーお、私なんもしてないのになんかしたみたいな言い方やめて貰えますー?


「私がなぁーにしたって言うんですかい?」

「お前が! お前がラーダさんに会ったから私達は大変な目に遭ったんだ!」


 ……え? 私がラーダさんに会ったらなんでお前が大変な目に遭うの?


「何でそんなことなるん?」

「うるさいうるさい! さっさと死ねばいいものを!」


 うっわ傷ついたわー。


 精神的にガツンと来ましたよぉー?


 やっぱ言葉の暴力って駄目だわ。うん。


「殺してやるぅ!」


 そう言ってルルドはこちらに向かって走ってきた。


 あーもう完全に正常な人じゃないですね。


 はぁ〜、めんどくさいけど戦うか。


 幸い人も近くにいないし。


 そう思いながら『自爆杖』を放つのであった。

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