第一章

1 両手持ち用の杖は意外と軽い


「はっ!?」


 目覚めるとベットの上にいた。


「……知らない天井…………」


 この言葉を使うのは多分人生でそう無いだろうなぁー。


 あとなんかトラックに轢かれた記憶がある。


 あれ? これもしかして私トラックに轢かれて死んだ?


 めっちゃラノベとかであるあるの死に方やぁーん。


 うせやぁーん。


 ……はぁ〜、嘆いていてもしょうがない。


「おいしょっと」


 そう声に出しながら上半身を起こし辺りを見回す。


 えっ、めっちゃ海外の家みたいな内装じゃん。


 めっちゃ綺麗きれぇ〜。


 ん? なんか窓の外おかしくない?


 部屋にある窓から外を見る。


 すると……


「何なんだよ……これはぁ……」


 そう自然に言葉がこぼれるような光景が広がっていた。


 外にはとても綺麗な城下町が広がっており、そして一番高いところには立派なお城が建っていたのだ。


「あんなお城見た事ないけど……もしかして王様とかがいる所?」


 とか言っていると空を飛ぶ何かが見える。


 よーく見てみると


「わっ!?」

 何とそれは翼が生えたトカゲの様な生き物だった。


 そして直ぐにその正体に気付いた。


「もしかして……ドラ……ゴン……?」


 するとそうだとでも言わんばかりに

『ギャオオォォォォ!!』

 と咆哮を上げた。


「うっるっさ!!」


 と耳を塞ぐ。


 すると扉の向こうから


「メルアー? 大丈夫ー?」


 と声が聞こえた。


 …………メルアって誰?


「メルアー? 入るわよぉー?」


 そう言いながら誰かが入ってくる。


「メルア、いるなら返事して頂戴」


 そこには赤い髪をした綺麗でスッとした女性がいた。


「えっ? あっ、ごめんなさい……」


 訳がわからず変な回答になる。


 この女性は本気マジで誰?


「今日から冒険者になるんでしょ?」

「えっ、そうなの?」


 思わず口に出る。


「そうなのって……貴方昨日あんなに楽しみにしてたじゃない」


 いや知らねぇーよ!!


「あっ……あぁー、そうだったわー、楽しみすぎてなんか忘れちゃってたみたい。おかしいわねーアハハー」


 我ながら全然ちゃんとした会話が出来てないな。


「うふふ、まあ仕方ないわ。じゃあ下に朝ごはんと着替えを用意してあるから、早く降りてきなさいよー」

「はっ、はぁーい」


 誰か分からない女性との会話が無事に終わってホッと胸を撫で下ろす。


 めっちゃくちゃ焦ったぁー!!


 知らない人との会話ってこんな緊張するものだっけ?


 異世界に来ちゃったからかな?


 そしてハッとする。


「そうだ私今異世界にいるんだった!!」


 ドタドタと走って鏡の前に行く。


 そしてそこには、赤髪で目がライム色の自分でも見惚れてしまう程の人がいた。


「これが……私?」


 と言いながら手をほおに当てる。

 頰に感触があるから間違いなく自分だ。


「これは……転生したわね……私……」


 もしやと思っていたが、これで確信した。


 確かにトラックに轢かれたからしているかなぁなんて思ったけど……本当に転生するとは……トラックに跳ねられると本当に異世界転生するんだなぁ……。


 そんな事を考えていると扉の向こうから


「早く降りてきなさぁーい」


 と声がする。


 声の大きさ的に下の階にいる様だ。


「分かったー、直ぐに行くわー」


 とだけ言っておく。


 多分あれはわたしの母親……だよね?


 先程の出来事を何回か頭の中でリピートし、母親だと確信する。


「よし、そろそろ行きますかぁ〜」


 そうしてドアを開け、近くにあった階段を下りた。


「やぁーっと来たわぁー、待ちくたびれたわよ」

「ごめん母さん」

「さっさとご飯食べ終わっちゃって〜、この後は一緒に冒険者ギルドに行きましょう」

「分かった」


 どうやらお母さんで合ってたようだ。良かった良かった。


 それに冒険者ギルドへの行き方なんて知らなかったから案内してくれるのはこっちとしてはめっちゃくちゃありがたいですわぁ〜。


よし、朝ごはん食ーべよ! 朝ごはんはえぇーと……日本の朝ごはんの定番の目玉焼きと味噌汁とそして……


 ん? これは…………


「白米だ!!」


 思わず大声が出る。


「ん? どうしたの?」

「あっ、何でもないよ母さん」


 ラノベなどでは白米などの日本食は中盤辺りになると出てくる事が多いからまさかこんなに早く出るとは思わなかったなぁ〜。


 いやぁ〜本当に最初から白米を食べられるなんて最高ね!


 よし! 食おう!


 そしてもぐもぐと朝ごはんを食べ、あっという間に平らげる。


「ご馳走様。母さん、美味しかったわ」

「あら、嬉しいわ。そこに着替えと武器があるからさっさと着替えちゃってね」

「はぁい」


 そう返事をして用意してあった服に着替える。


 うわぁ〜異世界系でよくある白がメインで黒いシマシマが所々ところどころにある服だぁ〜。


 あとなんか両手持ち用の杖がある。


 あぁこれがさっき母さんが言ってた武器か。


 んじゃ、持ってみるか。


 …………あれ? 意外と軽いぞ?


 まあ、そういう杖なんだろうな。


 それと……なぁ〜んかボロっちい袋があるんだけど……一応付けておくか。


 ちょうど袋をつけ終わったタイミングで母が来た。


「着替え終わったようね、じゃあ行きましょうか」


 母、ナイスタイミング!


「はぁい」


 そうして母親からと共に冒険者ギルドへと向かった。





 母さんについて行きながら歩いていると色んなものが視界に入ってくる。


 例えば種族。獣人やエルフ、他にも様々な種族がいた。


 そして店で売られている物は日本で売っている様な物は殆どなく、まさにThe・異世界という感じのばかりだった。


 異世界すっげぇー、本当に異世界に来たんだなぁー。


 そんな調子で母親について行った。


 そして……


「ここが冒険者ギルドよ」

「おぉー」


 結構大きい。そして冒険者ギルドと書かれた看板が結構目立つ。


 だけどラノベとかだとこういうのは普通にありそう。


「じゃあ、後は頑張りなさいね」


 えっ!? 行っちゃうの!?


「えっ、あっ、ありがとう」


 おい何を言っているんだ私は!


「じゃあねー」


 と、何故か手を振られながら人混みの中に紛れて行くのを見ている事しか出来なかった。


 あぁ〜……よし!! くよくよしてても仕方ない!


「始めますか、私の異世界生活」


 そう言って冒険者ギルドに入るのであった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る