第2話 〜デックローしか知らない世界 2〜
ブッコローっちはいつも優しかった。二人で飲みに行く時は何度も奢ってもらったし、いつも俺を励ましてくれた。あいつと俺っちは昔からの幼馴染だ。俺っちとあいつはすぐ隣の巣で生まれた。それからはずっと一緒だった。俺っちはコミミズク、あいつはミミズクだったがそんなのは関係なかった。
二人でワームを捕まえていた時はいまだに記憶に残っている。(獲物は全部あいつに取られていたが)その後も俺たちは私立ミミズク学園高等学校へ行き、あいつは首席、俺はギリギリ卒業した。あいつはやっぱり何かが光っていたんだ。その後、卒業して間もなく有隣堂と言う所からMCになってくれないかとスカウトを受けた。あいつが断るはずもなく、あいつは早速巣立つことになった。しかし有隣堂へ行く直前に、あいつは俺と話がしたいと言ってきた。嫌味の数個でも言うのかと思っていたがあいつの言った事は全く予想のつかなかった物だった。
「お互いのネーム考えようぜ!」
あいつはどうやら有隣堂へ行く時、本名とは違うネームが必要になったらしい。それで最後に自分と俺っちの分のネームを考えたかったらしい。
「俺っちは別にネームは要らないよ。」
「そんなこと言うなって!思い出、だろ。」
時間はそんなに無かったが、その瞬間だけはとても長く感じた。
「これ良いんじゃね?」
有隣堂が本を取り扱う場所だから本のブックにフクロウのOwlを合わせて、ブッコロー。
「これだ!」
「でもお前のネームはどうするか。。お前の好きなものってなんだ?」
その質問をされ俺っちは一瞬考えた後、
「。。ホームズ。」
と答えた。俺っちは確かにホームズの小説にハマっていたのだ。
「分かった!」
ホームズは探偵、だからDetectiveそれとOwlを合わせて、デックロー。俺の名前だけ無理やりな感じがしたが、そんなに気にしなかった。
「これで一生忘れないな!」
そう言ってブッコローっちは巣立って行った。
俺っちはその後中小企業で働くことになった。毎日別に酷くはないが、逆に何も楽しいことも無い。そんな日々を送っていると俺っちはブッコローっちの葬式に呼ばれた。何が起きていたのか全く飲み込めないまま葬式に行くと、そこにはブッコローっちの亡骸があった。そこでやっとブッコローっちは死んだのだと、俺っちは飲み込めた。
俺っちは涙を堪えながらその事件の詳細を聞いた。しかしブッコローっちのダイイングメッセージを聞いた時、俺っちの中で何かが引っ掛かった。そこで俺っちは決心した。
俺っちがブッコローっちのホームズになる事を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます