第27話 深層最下層


 深層最下層にあるボスエリア。

 ここを超えればマンダラだけど、マンダラに行くにはここに居座るボスモンスターを倒す必要がある。

 今回、ここのボス部屋に居たのは、全長40メートルを超える要塞型マシン。

 百を超えるビーム砲門。ミサイル兵器。実弾兵器。対魔力シールド。深層1階層で戦った数々のマシン達を操ってのオールレンジ攻撃。

 30分ぐらい戦っているけど、面白いし、すごく楽しい!!


“LANちゃん、いけぇぇぇぇ”

“その攻撃でトドメだ!”


 視聴者さんも盛り上がってきている。

 魔力で創り出した黒色の魔力翼で風力を操って飛行する。

 要塞型マシンの武装は8割以上を破壊した。残ってのは、腹部にある巨大砲門のみ。

 マシン全体が紅く発光をして腹部に魔力が収束されていくのを感じる。

 私も両手を合わせ、魔力を一点集中、収束させた。

 『虚無』への変換はかなり難しい。四大属性関係は想像しやすいのだけど、虚無とはなにもないこと。何もないことを意味づけて変換するのは、中々に大変だ。

 超魔神皇だった頃は、もう感覚で理解していたので、数百から数千もの「虚無」を一斉発射して敵対するモノ達を、文字通り跡形も残らずに殲滅していた。


 要塞型マシンは、目を一瞬だけ光らせると腹部の砲門から赤白い光を私に向けて放ってきた。

 ちょうど私も準備ができたタイミングだったので、「虚無」を放った。


 赤白い魔力の光と、全てを飲み込む漆黒の光がぶつかりあった。


 大きさは何十分の一で、通常攻撃なら飲み込まれてお仕舞いだっただろう。

 「虚無」は接触した相手のすべてをゼロとする。向かってくるベクトルさえも。

 刀の「終焉」は概念系だけど、「虚無」は物理的に触れたモノのみに効果を発揮する。


 赤白い光は、漆黒の光に飲まれていく。

 飲まれた魔力は私が制禦して、「虚無」への魔力に変換する。

 時間にして30秒程度だろう。

 「虚無」は要塞型マシンが放った魔力をすべて吸収して、大きくなった「虚無」は腹部の砲門へ貫通。要塞型マシンの腹部には砲門と同サイズの大きな穴が空く。


「あ、これって――」


『間違いなく大爆発します』


「ですよねー!!」


 慌てて魔力で360℃囲うようにバリアを展開するものの、空間固定までは間に合わず、爆発と同時に起こった爆風で壁付近まで吹き飛ばされてしまう。

 爆炎と煙で何も見えない。

 ――突っ立てるだけだと面白みがないので、スマホの画面でコメントを見た。


“うおぉぉぉぉ、LANちゃん、要塞型マシン討伐おめでとう”

“所見だと、サイズが違いすぎてだめかと思った”

“蟻と象の戦いに近い”

“あ、LANちゃん。視聴者が10,000超えおめ!”


「あ、本当だ。皆さん、ありがとうございます!」


 よく見ると視聴者数は10,000を超え、チャンネル登録も4000を超えている。

 な、なんだか、すごく嬉しい。

 つい先日まで過疎だったときは、こんなに視聴者とチャンネル登録者が増えるなんて思ってもみなかった。


“もうLANちゃんって、世界でもトップ10に入る実力者確定じゃあないかな”

“有志が作った世界最強ランキングwikiのベスト100位の中にLANの名前があった”

“速すぎ。まあ、要塞型マシンとの戦いを見たらしょーがない”

“もしも要塞型マシンが地上に出たら、国が滅ぶレベルの重火器だったな”

“現代兵器のほとんどが効かないんじゃね”

“まだ地上は、魔力をビームソードとして使用できるまでの形にはなってないものなあ”


 へぇ、世界最強ランキングとかあるんだ。

 スマホの二画面機能を使用して、もう一画面をブラウザで該当のwikiを見てみた。

 確かに「LAN」の名前は、50位(暫定)とされている。

 50位より上位のランカーを見ていると、3位に京極弥杜……お父さんの名前があった。それ以外で見知った名前はない。

 うーん、阿頼耶識さんの名前がないということは、あまりこのランキングはアテにできなさそう。

 真の強者は在野に潜んでいて、表に出てこないよねえ。

 私も探索者として配信してなかったから、ランキング圏外だったからさもありなん。


『ダンジョン内の特殊環境下とはいえ、この規模の爆炎と煙が収まるまで、10分ほどの時間を要するでしょう』


「そっか。なら腹ごしらえをしようかな」


 胸元にあるショルダーバックに手を入れておにぎりを取り出して食べる。

 1個、2個、3個、4個、……10個……20個……。

 うん。さすがお母さんが作ってくれたオニギリ。

 中の具材も色々あって20個以上食べているけど、全く飽きない。


“LANちゃん。ちよっと待って”

“どう考えても、そのショルダーバックの大きさに比較して、オニギリの量がおかしいよね”

“と、いうかコンビニで売ってるバクダンオニギリサイズを30個以上、食べてるよね”


「あ、あははは。その魔力を大きく使用した後はお腹が減るんですよ

この時点で「虚無」を2回も使ったことで、ちょっとお腹が減っちゃいました

思った以上に「虚無」の魔力って使用するようです」


“魔力消費が多い人は、割と食べるのは常識”

“ダンジョン探索者上位勢は、食費がだいぶかかるって配信で愚痴ってたのを見たことあるわ”

“いや、お前ら、そんなことよりもLANが使用しているショルダーバックだろ”

“普通に通販サイト「ジャングル」で、2000円ぐらいで売ってそうなものだけど……”

“でも、どう考えても内容量がおかしいッ”

“まさかラノベとかによく出てくる時空カバンか”


「違います。どちらかというと、ド◯えも◯が使用している「どこ◯◯ドア」に近い形です

このバックはどこかの亜空間に繋がっているわけではなくて、私の自室へ繋がってます。

手に入れたら届く範囲内に、色々なモノをおいてあるんです。

ちなみに、オニギリはチャットアプリで連絡をとってお母さんに作ってもらいました」


 亜空間を作って維持管理するのは、魔力がすごく必要で、消えないように常に気を配らなければいない。

 下手に手を抜いて亜空間が消えたら、中にあったモノが消滅する可能性がある。

 それならバッグの中を、別の場所に繋がるように術式を作った方が、魔力の節約にもなるから効率がいいと思う。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る