第25話 メイドは見ている
四天院家にある大型モニタールーム。
私こと愛染冥火は、モニターに映し出されたチート業を見て唖然とした。
行動を「0」にして結果だけ確定させるとか。防御不可能業じゃあないですか。
「冥火。貴女はアレに対応出来ますか?」
「無理。早い攻撃とかじゃあなくて、行動手順を0にして結果だけを相手に与えるチート業相手にどうしろ?
私は、あくまで、メイド。あの業の対応は、対処不可能に決まってる」
姉の冥月から問い掛けに素直に答える。
まあ並の武器だと、一回「終焉」の権能を使ったら壊れるようだけど、これが「終焉」そのものだと耐性に問題ないので気にすること無く権能が発動可能。
確か今は蘭さまり父君である弥杜さまが所持してると聞いている。
うーん、鬼に金棒とは正にこのこと。
今、この大型モニタールームには、四天院家の荒事専門に請け負っている力自慢が集まっている。
理由は単純で、蘭さまを見たいからだ。
この人達は、玲衣奈お嬢様が蘭さまの力の発散をするために対戦相手として用意された人達だけど、結果は言わずもがな。
蘭さまは殺さないように手加減をしていた事もあり、それが余計にこの人達のプライドを傷つけて、魂を燃やさせた。
ダンジョンに蘭さまが潜る日は、こうして集まって見ては対策を練って脳内でシミュレーションをしていた。
我らの玲衣奈お嬢様は、フルダイブ型VRヘルメットを被り横になっている。
今回開発されたフルダイブ型VRヘルメットは、クエビコ様が見た景色と足りない箇所をAI処理した仮想空間に入り込める仕組みだ。
仮想空間はそれぞれフルダイブ型VRヘルメット内で処理されている為、同時体験しても一緒になる事はない。ただしフレンド登録している相手とだけは、ペアリングする事により同じ空間で声援などをする事が出来る。
「次は先程のマシンの複数体ですか」
「幾つかのマシンは兵装が異なってます」
蘭さまの前に現れたのは、先程のマシンと若干兵装が異なるマシン達。
数にして15体ほど。
マシン同じほどの全長はあるロング砲を構えたマシンAタイプ。
両手にビームソードを構え、背後に大型4基のスラスターを所持したマシンBタイプ
又は両手にビームライフルを所持したマシンCタイプ
などなど……。
『おお。なんだか、ガ○ダムに出てきそうなマシン達です
あっちは20メートル近いですけど、こっちは2メートル程度。大きさは10分の1程度――』
相変わらず蘭さまは緊張感がなさそうに言う。
その直後のことだった。
マシンタイプAとマシンCタイプが一斉射撃を行い、何色もの光が蘭さまに向けて奔る。
蘭さまは宙へ飛ぶことで回避したものの、読まれていたのでしょう。そこにはマシンタイプBがビームソードを構えていた。
『そっちが私の行動を予測したみたいに、私も視たんだよ。
そしてありがとう。自ら近づいてきてくれてさ!』
蘭さまはマシンタイプBがビームソードが振り下ろす前に拳で放った。
拳圧か、又は何かの業か。見ているだけでは分かりませんが、明らかに拳の届く距離ではなかったのにも関わらず、マシンタイプBの胴体に大きく穴が空き、バチバチと音を立てながら落ちていく。
その時に蘭さまは、目敏くもビームソードを1つ奪った
『なるほど。妙な独自エネルギーなら使うのは難しいと思ってましたけど、これは魔力がエネルギー源のようです。
これなら、私も使えます!』
ビームソードの刃の部分が伸びた。
魔力の出力調整をした結果でしょうけど……相変わらず出鱈目な魔力です。
伸びた魔力の刃は、鞭のように宙を舞った。
広範囲に及ぶ鞭のように伸びた魔力の刃が次々とマシン達を切り刻んで行く。
『え。「終焉」を使わないのか? ですか?
結局の所、魔力刃ってエネルギーの塊じゃあないですか。なんか武器としてカテゴライズされないみたいで、「終焉」の権能は使えないです』
蘭さまはコメント欄で問われたことを、薙ぎ払いながら答えた。
なるほど。「終焉」の権能も万能という訳でないようですね。
30秒程度で、出現していたマシンは全ては斬り伏せられた。
『魔力刃系の武器は初めてですけど、悪くはないですね――。ただ』
蘭さまは手に持っていた筒を投げ捨てると、それは爆発した。
『私の魔力に耐えきれないって事を除けばですが』
いやいや、貴女の魔力に耐えきれる物なんて滅多にありませんよ。
そもそもビームソードを無駄に出力を上げて、鞭のように薙ぎ払ったのが問題では?
普通に使えば問題無いでしょうに。
コメントでその旨を送信してみた。
まだスパチャはしてないみたいなので、見られるかはどうかは分かりませんけどね。
因みに私以外にも、似たような感想を抱いた視聴者の方がいたのか、
『確かに魔力刃なら物理刃と違って、モンスターを斬って切れ味が落ちるって事もなさそうですね。
さっきみたいな使い方をしなければいいのか――。
とりあえずビームソードの発生器を2つほど拾っておきます』
蘭さまは残骸からビームソードの発生器を拾うと、1つは胸元にあるショルダーバッグに、もう1つは手に持ち魔力刃を発生させた。
まるで子供用に適当に振り回していると、感覚を掴むことが出来たのでしょう。
思いっきり振り抜くと、ビームソードから魔力刃が前方に向けて放たれた。
なに普通に斬撃飛ばしをしてるのですか、蘭さまは。
『よし。だいたいの感じは掴めました。
それでは、深層でのリハビリを続けていきます!!』
ああ、そう言えばコレってリハビリとか言ってましたね。
――深層以下でないと、力を発散できずに、戦闘のリハビリもできないと言うのは。強すぎる力を持つのも、ある意味で憐れ。と思わず感想を抱いてしまう。
蘭さまはクエビコさまと雑談を行いながらも、深層を進んでいくのだった。
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