歪んだ神様と殺し合い
@kain_aberu
序章:退屈な神様
第1話
『それ』は、酷く退屈だった。
一体、自分は何故、『ここ』にいるのか。
一体、自分はいつから『ここ』にいるのか。
そして……
一体、自分はいつまで『ここ』にいれば良いのか。
『それ』には何も解らなかった。
とにかく『それ』は気が付けば『ここ』にいて、どうやら『ここ』から離れてはならないらしい、という事だけが、ぼんやりと理解出来ていた。
そして……
そして、『それ』が初めて感じた感情。
『それ』が初めて覚えた概念。
『それ』が初めて覚えた言葉。
それが、『退屈』というものだった。
『それ』は、酷く『退屈』だった。
そして……
『それ』は『退屈』を紛らわせるために、色々な事をした。
幸いにして、『それ』には何だって出来た、『生命』を生み出す事、生み出した『生命』が生きていける『大地』や『空』や『昼』や『夜』を創り出す事、『それ』は、様々な『生命』を生み出しては自分の創りあげた『世界』で繁栄させ、飽きたら全てを壊滅させて、また新しい『生命』と『大地』を創り出す、そういう事を繰り返していた。
そうしてある時……
『それ』は、また新たな『生命』を持つ存在を生み出した。
『それ』はその新たな存在を、こう名付けた。
『人間』と。
『それ』にとって、『人間』と名付けたその存在達は、とても面白かった。
『それ』が気まぐれで起こした大きな災害、地震や大洪水が起きれば、一人でも仲間が『生命』を失う、即ち『死ぬ』事が無いようにと皆で助け合うのに、ほんの少しだけ時間が過ぎれば、またその事をすっかり忘れて争いを始める。
そのたびに、『それ』がせっかく、こいつらが暮らせる様に、と整えてやった『大地』を汚し、壊し、『それ』が創りあげた『人間』以外の『生命』を奪って行く、そして挙げ句の果てには同じ『人間』の『生命』も平然と奪い、『死』を与える。
争い合い、殺し合う理由すらも、『それ』が今まで生み出してきた『生命』を持つ者達とは違い、自分達が造った、『それ』にとっては何の価値も無い『モノ』を巡っての争いであったり、自分達と考え方が違う、価値観が違う、見た目が違う、といった理由であったりもした、『それ』にはそんな事で争い、殺し合いまでする『人間』達の考えは理解出来なかったが、こいつらはそんな理由での争いを本気でやるのだから実に面白い、しかもこいつらはその為に、『それ』が今まで考えもしなかった奇抜な『武器』を次々に造って行った。
『武器』を造れない『人間』達は、どうすれば争わないで済むのか、という様な事を考え、色々と手を尽くして争いを終わらせたりもした、争いが無くなるのは『それ』にとっては面白く無かったけれど、そうなれば『人間』達は、またしても『それ』にとっては及びも付かないような方法で色々な『モノ』を造りだして『繁栄』して行った。
そうして『それ』は、『人間』達の繁栄をずっと長い間見守り続けていた。
そうした時の中で、『人間』達の方も、自分達を遠いところからずっと見守り続けている存在、つまりは『それ』の存在に気づき始める者が出始めた、その事がまた『それ』の気分を楽しくさせた、残念ながら気づいても、『それ』と直接語り合えた者は、ほんの一握りだったけれど、それでも『それ』と語り合った者達が、『それ』の存在を他の『人間』達に伝え、『それ』の存在は少しずつ『人間』達に知られていった。
そして。
『人間』達はいつの頃からか、『それ』をこう呼ぶようになっていった。
『神様』と。
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