プロムナード・ドリーマー!
陋巷の一翁
プロローグ
「そう、いまや、時代はプロム! 大プロム時代なのよ!」
ある雨上がりの初夏の日のことだった。両手を天に向けて広げるとドラゴンゆかりこと水原ゆかり生徒会長が咆哮を始めたのは。
「なんですかそれ」
机に肘をついて副生徒会長の今井慎司が冷たく返した。向かいに座る書記の竹村ありさが会長の代わりに説明する。
「学校主催の卒業パーティーみたいなものよ。ただし必ず男女ペアで男子はタキシード、女子はパーティドレスで着飾って参加する」
「うわ、きつ……」
書記の説明に頭を抱える副生徒会長。生徒会長はびしっと副生徒会長を指さした。
「そこ、どんびかない! 学生のうちに異性の扱いになれておく、これって大事な授業でもあると私は思うの!」
「そんなことより自分が目立ちたいだけでしょ。会長は」
「まあ、それもあるわね」
副生徒会長の言葉にあっさりと生徒会長はうなずいた。
「プロムというと華やかできれいな男女がパーティというイメージがありますが、うちそんな美男美女ばかりじゃないですよ」
書記も自覚を感じながら口を挟む。
「それは本場のアメリカだって同じよ。普段はごく普通の男女が着飾ってくるから面白いんじゃない。男子女子ともに、新たな魅力発見の予感!」
生徒会長が叫ぶ、いや咆哮する。
「はぁ、アメリカのペア文化にはほんと辟易しますね……」
副生徒会長はぼやいた。生徒会長の咆哮は続く。
「とにかく、プロムよ! プロムを開くのよー! というわけであなたたち作戦を立てなさい」
「わ、こっちに振ってきたよ」
「でもなんか、面白そう」
書記が戸惑う副生徒会長の顔を見つめていった。心の中では副生徒会長と一緒に出ることをすでに夢想している。
結論から書く。
そんなこんなでごく普通の公立校。池坂高校で、卒業後の三月下旬に卒業生を主体としたプロムが開催されることが決まったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます