実はちょいハイスペックな窓際(にいる)男子高校生の日常
市川京夜
第1話 おっとまずい…
―4月8日、オレの友達は0人
窓際の者(碇雅也)
我ながら厨二病じみた文を日記にサラリと書いてしまったとオレは思ったが、それもそのはずである。
オレの高校初日はあまり上手くいかなかった。
……遡ること8時間前
「今日から第1志望だった三ノ丸一高の1年生!まずは隣の席の人と仲良くなるぞ!」
と、本来のオレとは違う元気いっぱいのキャラを演じて、右隣の子に挨拶を………と思ったはいいが
――机と椅子が無い。
空白が4つ空いて、5列先の席に座る女子が小さく見えた。
「あ、右隣にいないだけで、左隣は誰かいr…」
――あ〜…綺麗な桜と心地よい風〜
全開に開いた窓からそよそよと春の風が吹いていた。
そこに人はいない。
「うーん、両隣いないなぁ、前の人…は男子だ!」
前の席で突っ伏している男子を発見。
「な、なぁ!君はどこの中学出身?オレはさ…」
「……」
反応がない。
「いやぁ、受験期大変だったよなぁ〜。オレは1月の私立前が1番…」
「……グゥ」
寝息が聞こえた気がした、いやいやまさかね?
「…な、なぁ?聞いてる?」
「、ふぁ〜〜ぁ…8時40分か…まだ寝れる…」
「コ…コイツめぇ…」
人が話しかけてるんだからせめて聞いてくれ。無理なキャラ設定で滑ったみたいだろ。
右隣は不在、左隣は満開の桜の見える窓、前には初日からぐっすりと寝るのを楽しむ不思議君、しかしまだ1席、右斜め前が残っているがオレは沈んだ顔のままだ。
それもそのはず、机の上には女物のリュック…女子。
「はぁ〜あ。色々あって女子と話すのが苦手なオレは話しかけることは…無理なんだよなぁ」
オレは訳あって女子が苦手である。
――ベージュ色のリュックについた、『藤井風』のキーホルダーを見ながら溜息。
ふぅ〜〜……おっとこれはまずい…
高校生のスタートで、友達ができない…
周りを見渡せば既にグループが4つほど出来ていた。
内部進学組と、私立中学からごっそり上がってきた組が既にクラスの中で居場所を作っている。各々が受験期の大変さやこれからの期待や不安を語り合っていた。
あと20分で入学式。
「くそぉ、誰か初めましてとか、これから入学式だねぇとか話しかけてきてくれ……あ、右斜め前の子がオレのどタイプだったら、今までの全部チャラだわ〜」
涙目になりながら無理やり自分を奮い立たせようとしたが、期待した彼女は姿を見せることはなかった。
8時50分を過ぎた。9時からは入学式の新入生入場が始まる。
「廊下に並べ〜」
体育系の先生であろう声が教室の端まで聞こえてくる。
周りの生徒はワイワイしながら廊下へ出ていく。30人くらいが外に出たのを眺めてから、重い腰を上げ、オレも廊下へ出た。
ぺこりと会釈をして5番と7番の人の間に入る。出席番号6番。これがオレのこの1年の肩書きだ。
体育館に着き、拍手の響く入学式会場へ足を踏み入れる。
少し冷え込んだ体育館で、誰とも会話出来ないまま入学式が始まった。
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