第3話 つわりの苦悩

入れ替わった僕たちの日常は、妊娠中の美香の身体で過ごすことによって、さらに困難を増していた。美香の妊娠は3ヶ月目に入り、つわりが非常に強くなっていた。僕は美香の身体でつわりに苦しむ日々を過ごし、彼女がこれまでどれだけ大変な思いをしていたかを痛感した。


朝、僕は目覚めると同時に吐き気に襲われ、トイレに駆け込んだ。食事の匂いも耐えられず、ほとんど何も食べられない状態だった。そんな中、美香は僕の身体で仕事に行き、夕方に帰宅すると、僕が過ごした一日を尋ねてくる。


美香(勇介の身体で):「勇介、今日はどうだった?つわりは大丈夫だった?」


僕(美香の身体で):「ううん、全然大丈夫じゃなかった。朝からずっと吐き気が止まらなくて、食べ物もろくに摂れなかったよ…」


美香:「そうなの…でも、家事はちゃんとできたの?」


僕:「ごめん、吐き気が酷くて、家事はほとんどできなかった…」


美香は少しイライラした表情を浮かべた。


美香:「勇介、私がいつもそんな状態で家事をしていたんだよ。仕事から帰っても、家事をやらないといけない状況だった。だから、せめて今は、私の身体で頑張ってほしい。」


僕:「分かった。美香がこんなに大変だって気づかなくて、本当に申し訳ない。こんな苦しみに耐えていた美香のこと、もっと理解しようとすべきだった。明日から、もっと頑張るよ。」


僕たちは、入れ替わったことで互いの立場を理解し合えるようになり、夫婦関係にも少しずつ変化が生まれ始めた。しかし、まだどうやって元に戻れるのかは見当もつかなかった。

翌日、僕は美香の言葉を胸に刻み、彼女の身体で家事に取り組むことを決意した。朝、目覚めると、前日同様につわりが襲ってくる。しかし、今日は美香のためにも、家事を頑張ると心に誓っていた。


僕はまず、吐き気を抑えながら朝食の準備を始めた。味付けや調理方法に慣れていない僕だったが、美香がいつも作っていた料理を思い出しながら、できる限り再現しようと努力した。その後、洗濯や掃除も行い、美香が普段やっていた家事をこなすことができた。


夕方、美香が僕の身体で仕事から帰宅すると、彼女は僕が頑張って家事をしてくれたことに感謝の気持ちを表した。しかし、彼女の目は厳しく、僕がやり残した家事にイライラしていた。


美香(勇介の身体で):「勇介、ありがとう。今日は家事を全部してくれたんだね。でも、洗濯物が干されていなかったり、料理がちょっと違う味付けだったり…まだまだ改善の余地があるわね。」


僕(美香の身体で):「うん、ごめん。美香がいつもこんなに大変なことをやってくれていたんだと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。だから、今日は頑張ってみたけど、まだまだ足りなかったみたいだね。」


美香:「私も、勇介の立場になって、仕事の大変さを痛感したわ。でも、もう少し家事を頑張ってほしいのよ。」


僕:「美香、君もわかってるだろうけど、僕はつわりで本当に辛いんだ。君が思うほど家事をやれる状況じゃないんだよ。」


美香:「だからって、全部私に任せっぱなしにしていいわけじゃないでしょ?私だって、勇介の身体で仕事をしていて大変なのよ。」


互いの不満が爆発し、言い争いが止まらなくなっていたが、いずれ疲れて沈黙が訪れた。僕は美香に謝ろうとするものの、彼女は何も言わずに部屋を出てしまった。


この沈黙が続く数日間、僕たちはそれぞれの部屋で反省し、お互いの立場を理解しようと努力した。僕は美香がどれだけ大変な思いをしていたのか、そして美香も僕の苦しみを理解し始めた。


だが、美香は僕に対してだんまりを続け、僕も彼女の態度に困惑していた。このまま沈黙が続くのか、それとも何かが変わるのか、僕たちは不安に思いながら、それぞれの時間を過ごすことになった。

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