第二十話 おかしい
「はぁ……一体なぜこうなったんだ」
私はデパートに来る前の行動を思い返していた。
*
––––私は、部下の
「チョコレート屋?」
私は
「そうなんですよ、
「なるほど、では私が今度行ってみるとしよう。情報共有ありがとう」
私は、
「ところで、どんな名前のチョコレート屋なんだ?」
私は、
「あっ、僕としたことが、うっかり店名言うの忘れてました。店名は『ショコラ・エレガント』です!」
私は、店の名前もスマホのメモ帳にメモをしておいた。
*
翌日、
「ここだよな?」
私は『ショコラ・エレガント』の店の商品をざっと目で追った。美味しそうなチョコレートが並んでいる。トランプのマークを模したデザインのチョコレートや、猫や鳥などの動物をあしらったデザインのチョコレートもある。なんだか女性や子供などに評判が良さそうなデザインだ。
なんてことを考えていたら、尿意を催してしまった。チョコレートを買うのは後にして、今はトイレに行くことにしよう。
そう思って、トイレに向かった。男性用のトイレはエレベーターの脇にあるので、分かりやすい。私はトイレのドアノブに手をかけた。その瞬間、視界がぐらぁっとぼやけた。
「ッ⁉︎ なんだ⁉︎」
おそらく目眩だろうが、私はうずくまってしまった。最近寝不足だからか、よく目眩がするな。私はうずくまったまま数秒そのままでいた。じっとしていると、目眩が落ち着くことがよくある。
数秒うずくまっていると目眩が落ち着いたので、私はホッと胸を撫で下ろしてトイレに立った。
さて、トイレから戻って再度『ショコラ・エレガント』の店に戻ったわけだが、なんとチョコレートが綺麗さっぱり消えていた。チョコレートだけではなく、店名も煌びやかな『ショコラ・エレガント』という店名ではなく、毛筆フォントで仰々しく書かれた『みやび』という店名になっていた。
「おかしい、何故だ……?」
私は数秒その場に立ち尽くしていた。確かにここは『ショコラ・エレガント』という店名だったはずだ。それなのに『みやび』という和風の名前に変わっているなんて、どう考えてもおかしい。極め付けに、さっきまで可愛らしく並んでいたチョコレートが、ふっくらとおいしそうな皮につつまれたツヤツヤの餡が美味しそうなどら焼きに変わっていた。
もしかしたら、私が場所を間違えているだけかもしれない。そう思い、とりあえずこの階の全ての店を回ってみたが、どこにも『ショコラ・エレガント』という店はなかった。結局、焦りと混乱に脳が支配されたまま、私は『みやび』の店に戻るしかなす術はなかった。
*
そんなことがあってから、私は混乱しながら帰宅したのだった。それに、メモ帳にしっかりと
『デパ地下の美味しいチョコレート販売店 明日行く』
と書いていたはずだが、今見てみると
『デパ地下の美味しいどら焼き販売店 明日行く』
と書かれてあった。
おかしい。誰かが私のメモを書き換えたのか? でも、私のスマホはちゃんとパスワードも設定されているはずだし、ハッキングとか悪戯はされていないはずだ。
私がおかしいのか? そうだ、ちょっと疲れていて、幻覚を見ていたのかもしれない。このメモ帳も、あのデパ地下のどら焼き屋も、全ては幻覚なんだ。今日はもう眠ることにしよう。今日眠って朝起きれば、メモ帳のメモも正常に戻っていて、あのデパ地下にあるどら焼き屋は、チョコレート屋に戻っているかもしれない。
私は、そんな淡い希望を抱いて、とりあえず眠ることにした。
*
ピピピ……。
目覚ましの電子音が部屋中に鳴り響く。私は目を覚ますと、スマホにセットしてあるアラームを消した。
さてと、これからどうしようか。私はベッドに腰掛けながら考えた。
とりあえず、メモ帳を確認しよう。私はメモアプリを開いた。
しかし、メモアプリには
『デパ地下の美味しいどら焼き屋 明日行く』
と書かれていた。……変化なしである。まぁ、これはもうメモ帳アプリがバグを起こしている、と考えることにするか。
今はとりあえず、外にチョコレートがあるのか確認しに行こう。私は急いでスーツに着替え、コンビニへと向かった。
––––コンビニにチョコレートがあるか確認がてらに、朝食も買っていくか。
私は基本コンビニで朝食は買わないタイプだが、今日は仕方あるまい。チョコレートがあるのか偵察するためにも、コンビニに行くしかない。
「いらっしゃいませー」
店員さんのにこやかな挨拶で、自分がコンビニに来たと言うことを実感する。
さてと、チョコレートはあるのだろうか。私はお菓子売り場に向かった。
しかし、お菓子売り場にはチョコレートのチの字もなかった。
「おかしい……なぜだ……」
私はお菓子売り場に立ち尽くしたまま愕然としてしまった。チョコレートがないなんておかしすぎる。私の知らぬ間に天変地異が起きてしまったのか、チョコレートが日本から無くなってしまったのか?
混乱した頭でいくら考えても無駄だということは分かっていた。とりあえず、コンビニを出て、いつも通り会社へ向かおう。そしてこのことを、部下の
私は、コンビニを出て、強くそう思うのだった。
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