初めまして。
この度は『あなたの作品を勝手に分析します』企画にご参加いただき、ありがとうございました。主催者の島流しにされた男爵イモです。
さて、本作はひと時のノスタルジックを演出した素晴らしい作品だと思いました。ナツの幼少期の思い出とハルの存在。背比べの描写では、二人は初めから別の道を辿っていたという風にも解釈できました。また、作中に描かれる「あの頃には戻れない」という儚い雰囲気。これはダムに沈んだ村やナツの人生、季節の移り変わりでさりげなく表現されており、秀逸だったと感じました。メリーバッドエンドのような最後でしたが、「とことん暗い作品」とは決めつけさせない、どこか救いのある物語だったのではないでしょうか。
気になった点は特になかったですが、少し意地悪な観点で考えるなら二つほど。
まず一つはナツの彼氏。彼のことは文脈や台詞から人物像を把握できますが、最初は読み解くのが難しいようにも思います。たまに英語でおちゃらける日本人、ロマンチストとも解釈することができます。まあ、一文目で日本人でないことは大方わかるのですが……。彼については「流暢な日本語を話す○○人の彼」、「あと数日で行くことになる○○出身の彼」などの補足が序盤にあると、読者に易しいかなという印象です。
あとは話の結末でしょうか。これに関しては作者様が作品に込めた思いにも通ずるものがあり、物語の根幹にも関わると思うので話半分に流していただければ幸いです。では。
個人的には、ナツはもう少しハルを想ってあげてもよかったのではと考えました。かつてのハルの姿を胸に、国を去る。それでも良いと納得できる反面、孤独だったハルの空白期間は永遠に満たされることはないのだとも感じました。終盤の段落群でハルは完全には消えていない、生まれ変わると解釈できますが、やはりナツとまた会うことは不可能だということも暗示されています。ならば、もう物質的には会えないという前提で「この場所の桜はハルの子どもたち」や「季節は巡り、また春(ハル)がやってくるだろう」といったことが書かれていると個人的には嬉しくもありました。安直な締め方ではありますが。
前述したように一個人の感想ですので、「そういった風に改稿して」という意図はまったくありません。それでは、長々と失礼しました。素敵な作品をありがとうございました。
作者からの返信
今回は、素晴らしい企画に参加させていただき、丁寧なコメントをありがとうございます。
小説全体へ抱いていただいた印象は、自分が描きたかったものと大きく相違がなく、ほっとしました。
またご指摘の点は、自分でも書きながら、加減を迷ったり不親切すぎるか心配になったりしたポイントでして、ご意見を頂けてありがたいです。
特に結末というか、ナツがハルの最期に思い至った後の心の動きについては、もう少し感情的になる方が自然なのではないかと悩んだところでした。
今回はあえて乾いた展開を選びましたが、そこまでお読み取りいただいてうれしい驚きです。
全体に、書き手としての視点と読者としての視点でコメントをいただけ、大変参考になりました。
本当に、ありがとうございました。
編集済
はじめまして。企画から伺いました。
ダムに沈んだ村というモチーフが大好きなので、そこにまずときめいてしまいましたが、切なくも温かい、いいお話ですね。
美しい情景描写に心が揺さぶられました。
だんだんと低くなっていく傷のアイデアも、本当に素晴らしいです。
素敵なお話をありがとうございました。
ナツの彼氏さんも、すごく素敵ですね。
なんか癒されました。
作者からの返信
一視信乃さま
最後までお読みいただき、コメントや評価、ありがとうございます。
短編で扱うにはちょっと重いテーマだったかもなあと感じていますが、ときめいていただけたなんて嬉しいです❗
彼氏は、思ったより好評で良かったです。ルー大柴風味の大型犬のイメージです。(どんな?)
優しいコメント、とても励みになりました。ありがとうございました❗
背丈を刻む箇所で小さくなっていく発想が、わたしには全くなかったので新鮮でした。物悲しい雰囲気と語りかける筆致があっていて、危うい不思議さといいますか、主人公二人の仲の良さが微笑ましいだけに、よりハルの儚さが際立っているような気がしました。とても読みごたえがあって素敵です。
作者からの返信
竹神チエ様
最後までお読みいただき、コメントもありがとうございます。
小さくなっていくってどうかな、と思いついてノリノリで書きましたが、まあしんどい内容ですよね、普通に考えて……と皆様のコメントでいまさら我に返っているところです。
「彼」は勝手にしゃべり出した感じなのですが、多少の和み要素になってくれて感謝しています(笑)
ありがとうございました!
コメント失礼いたします。
美しくもどこか悲しいお話ですね。
散る桜と、消える故郷という二つの題材が機能的に重なり合い、ノスタルジックな雰囲気を味わえました。
ただこのあたり他の皆様のコメントも拝読しましたが、個人的にはハルがやはり気の毒で。
ナツと別れたその後も懸命に姿を保っていたけど、徐々に縮んでいく背を刻みながら友を想い、自分が消え去る時を待っていた彼女の事を考えるにつれ可哀想で仕方ありません。
作品世界に惹き込まれ感情移入した結果ですので、何卒ご容赦を。
作者からの返信
邑楽 じゅん様
お読みいただき、コメントまでありがとうございます。
まさしくおっしゃる通りなのです。
自分で考えて書いた話でありながら(笑)、ハルの立場に立ってしまうと、あまりに不憫で辛すぎて……。なるべく生々しくならないように、ナツの反応も情緒的にならないようにと、持って行ってしまった自覚があります。やり方によっては、もっと深い感情的なお話になっていたのかもしれません。が、これが自分の限界でした(泣)
そんなわけで、このヒロイン共感できない、となって当然のところ、共感できるところを拾ってお読み下さり、本当にありがたいです。お優しい……。
ありがとうございました!
こんにちは。企画から参りました薮坂です。作品読ませていただきました。
まずこの「ダムに沈んだ村」というのがノスタルジックで素晴らしいですね。もう返ってこないものの儚さというか美しさというか、そう言う部分に心惹かれました。
そして背比べの設定が斬新! 凄い着眼点で驚きました。
人ではないものの存在が小さくなっていってしまって、いなくなってしまうという悲しさ。それがダムに沈んだ村と相まって、そこはかとない悲しさを演出していると思います。しかし悲しさだけではないのが本作のすごいところで、「彼」の存在や「ハル」の存在の温かさがとても明るい雰囲気を出していて、ともすればホラーになりそうなこの設定を見事にプラスに活かされているなぁと感じました。この辺のバランスが素晴らしいと感じます。
タグに「辛口希望」と書かれてますが、素晴らしい作品で辛めの感想なんて入れるところがないというのが正直なところです!
あえて問わせて頂くと、「母親はどう思っていたのか」というところですね。祖母の家に置いて行って三年後に迎えに来た母親は、単にナツが面倒になって祖母に預けたのか、それとものっぴきならない事情でそうしてしまったのか、そして頑張って三年後に迎えに来たのか(多分後者だと推察します)、どちらなのかが気になるというところくらいです。
母親はナツと離れたくなかったがそうせざるを得なく、その間は「ハル」と祖母がナツの心の支えになっていたと私は読み取りましたが(もちろんそうでない可能性もあります)、それがよりわかると、この優しい物語がさらに補強できるんじゃあないかと思いました。
ただこれは私個人の感想ですので、そんなに深くは捉えないで下さい!
いやぁ、本当にノスタルジックで素晴らしく優しい物語でした。面白かったです!
作者からの返信
薮坂さま
お読みいただき、丁寧なコメントをありがとうございます。
描きたかった世界に、特に温かさというかポジティブさを強く感じて下さったのは、薮坂さまのお人柄かと思います。温かくお優しいお言葉、嬉しく思います。
そうなんです、あったかさ。言及いただいた母の背景、なのですが……薮坂さまのご想像にお任せしたいというか、そのままそのあったかい設定採用したい! と心から思いました。ですが、ここは正直に、作者が執筆時に想定していた設定を白状すると、おっしゃっていただいた前者というか、椎名林檎さんの「歌舞伎町の女王」みたいな(さすがにあそこまで殺伐ではないですが)そんな母子関係でした。
とても暖かい視点でお読みいただき、筆力の限界もあって書ききれていないのですが、主人公の境遇は決して明るくないというか、ギンギンにとんがって虚勢を張っている女の子のイメージだったりするのです。おそらく、自分が失ったものの本質に、まだ気づいていない。若くて無鉄砲で、傲慢。そんな感じです。
もしかしたら、母をもっと深く掘り下げて描いていたら、その辺が浮き立ったかもしれないな、と感じました。
とにかく、温かいお言葉にとても励まされました。ありがとうございました!
コメント失礼します。
小さな描写のひとつひとつがリアルで良かったです。私も昔は虫とり少女だったので、野生児のエピソードでは懐かしい気持ちになりました。網を振り回しているうちに中に入っちゃう植物の種とかカケラとか、そういうどうでも良いものがありありと思い出されました……。
他の方も仰っていますが、だんだんと低い位置に移動する傷は独特ですね。小さくなっていくハルに気が付いたナツの行動が男前でした。そしてそんな彼女に優しく寄り添う「ばかでかい」彼が、何しろ良かったです。英語の台詞がいちいちcuteでした。
懐かしい物語をありがとうございました。
作者からの返信
ふづき詩織様
お読みいただきコメントまでありがとうございます。
虫取り、分かっていただいて嬉しいです。網のゴミわかる~!そして改めて読み返すと、書いてる虫が大物こそ正義!の当時の価値観そのままで自分で笑ってしまいました。
傷の話は、ふづきさんのss拝読したとき、やべえカブった!と焦り、こっち人外だからセーフ、とセルフジャッジしました(笑)
彼は、海外行きの理由付けに登場してもらったのですが、ちょくちょく存在を主張してきました。優しいけど、難しいことあんまり考えないタイプの男の子です、多分。
ありがとうございました!
下にいくほど新しくなる傷。おおっ!となりました。普通は上に行くほど新しくなるものですよね。
読みやすくも美しく、風景が思い浮かぶ描写。忘れ去られた場所や存在の寂寥感が伝わってきました。
一瞬ホラーな展開かな……と身構えましたが、暖かいお話で良かったです。
作者からの返信
いいの すけこ様
お読みいただき、コメントまでありがとうございます。
そうなんです、一瞬ホラーに行きかけて書いててヒヤッとしました(←?)。プロットのお力で無事戻って来ることができました(笑)
下についていく傷は、このお話を書く出発点の思い付きでした。生身の人間でやろうとしたら色々しんどすぎたので、邪道ぎみの「現代ファンタジー」で……。
丁寧にお読みとりいただき、とても嬉しいです。ありがとうございました!
作中の描写力はさすがの一言ですかね。
風景や細かな心情の動きが感じられて、とても物語に入り込んで読めました。
特に好きなのは、
傷が低いところにつけられていった意味を感じ取ったとき
ヘアピンを抜いて今の背丈を刻むシーン
です
特に後者はヘアピンを引き抜くという動作が力強く描かれていて、未来への活力を感じるシーンでした。
面白かったです。ありがとうございました。
作者からの返信
島本 葉さま
お読みいただき、コメントまでありがとうございます。
桜の散るシーンをあのように描くことは、果たして共感が得られるのか、とても不安だったのですが、「力強く」というお言葉に、書きたかったことが伝わっていると嬉しく思いました。
ありがとうございました!
桜企画にご参加いただきありがとうございます。
主人公ナツの追憶に現れるハルは精霊もしくは守り神のような存在だったのでしょうか。
ナツが再びこの地から姿を消した後のハルを想うと不憫ですね。
自分を成長させてくれる存在と別れ、次第に萎縮していき、そしてダム底に沈んでいく里を彼女はどうのような想いで見つめていたのでしょうか。
あるいはすでにそのときには滅していたのでしょうか。
せめてナツの記憶の中にいる無邪気なハルは生き続けて欲しい。
そう願います。
作者からの返信
那智 風太郎様
素敵な企画に参加させていただき、また拙作をお読みいただきコメントまで、ありがとうございます。
もともと、背比べの傷が下についていったらどうだろう、というひねくれた発想から生まれたお話なのですが、桜の散り際のイメージも重なり、かなり切ない内容になってしまいました。
優しい感想を、ありがとうございました。
「筆致は物語を超えるか」から来ました。
ダムに沈んだ村で祖母と暮らしていた頃。
山中の桜に至るまでの風景。
さり気なくナツを助ける彼氏。
これらの描写、場面の構成が上手いなと思いました。
短い中でも構成がしっかりしているので、最後までスッと物語が入ってきて、ハルの儚さとナツの追憶の余韻が後を引きました。
余談ですが、ナツのお祖母さん、どうかトイレに落ちないで、と読んでいる途中で願ってしまいました。
作者からの返信
桁くとん様
最後までお読みいただき、コメントまでありがとうございます。
あまり膨らませられず、シンプルなストーリーになってしまいましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。
コメント拝読し、おばあさんとの生活のあれこれとかをもう少し加えると、リアルさや味わいが出たのかもなあと思ったりしました。
こだわりのボットン便所に気づいていただきありがとうございます。もうほとんどないでしょうが、田舎のおうちの衝撃No1はこれだと思うんですよねー。
おばあちゃんが落ちたら……その発想はなかった! 新しい世界線が開けたかもです(笑)
ありがとうございました!
身長がだんだん小さくなっていく霊的な存在のハル、というイメージは斬新でした。祈られること、想われることで存在を保っていた彼女が誰からも忘れられたことで消えてしまった、しかし彼女が「いた」証が桜の木に残っているという描写は日本的で美しいです。ジブリのような世界観だなという印象を受けました。
外国人の彼の存在もいい味を出しています。
作者からの返信
水涸 木犀さま
最後までお読みいただき、コメントもありがとうございます。
ジブリ大好きなので、ほんの少しでもそんな雰囲気が出せていたなら、とっても嬉しいです!
ありがとうございました!