筆箱

@dada02121610

第1話 筆箱の気持ち

 私は筆箱だ。小中高ではいつもご主人の傍にいたし、カバンの中に入っている何物でも、どんな物にも使っていただける回数で私の右に出るものはいないと自負できる。

 しかし、ご主人が大学生になってすこししたら変わってしまったんだ。

 そう、パソコンというぽっとでの奴が私を差し引いて、本来私がいたはずの場所をあいつが奪いやがった。小学校から今までのご主人の成長、喜び、苦しみ、怒り、悲しみ、そして、私が床に落ちた時に汚れはないか確認する不安そうな顔、そのくせ、筆箱の中の掃除はまったくやらないご主人のずぼらなところ、買ったときに商品タグを無理やり引きちぎり新品の筆箱に早速穴を空けてしまったゴリ押しをするご主人、いとこから貰ったキーホルダーを自慢しようと筆箱に付けて持って行ったけどいざ見せようととってみたらぼろぼろに壊れていて泣き崩れたご主人、その後家に持ち帰って必死に直そうとするご主人、もなにも見たことも無い奴が今ではずっと傍にいるんだ。ふざけるな。もし、悲しいことがあれば、私が傍にいたら一緒に分かり合えるのに、私が傍にいたら話を聞くのに。私が傍にいればずっと傍にいるのに。・・・私が一番そばでご主人の成長を見たいのに・・・

 ああ、私は嫉妬をしていたんじゃあなくて、ただ、羨ましかったんだな。

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