『直し屋』は黒ずくめの男を拾う

内藤晴人

始まりの唄

 

「彼は泣いているようだ」

 

 声ともつかない音声の重なりが告げる。

 

「彼は過ちを償いたいようだ」

 

 先ほどとは異なる響きがそれに答える。

 

「彼を行かせるべきだろうか」

 

 始めの響きが呟く。

 

「彼女は思い出すだろうか」

 

 再び、もう一つの響きが答える。

 

「定めであれば、思い出すだろう」

 

「定めであれば、出会うのだろうか」

 

 沈黙が流れる。

 

「すべては『神』のみぞ知るところ……」

 

 決断はこの時下された。

 

 黒髪の堕天使が、再び解き放たれた。

 

 

      ✳

 

 かつて、人はこの惑星ほしを支配していた。

 陸上はもとより、海や空までも。

 しかし、今や人は支配者の地位を追われた。

 新大陸の軍が秘密裏に産み出した人工生命対『ミリオン』が反乱を起こし、人に成り代わりこの惑星の支配者の地位についた。

 被支配者となった人は、ミリオンの監視の元あらゆる文明の利器を手放すこととなる。

 これは、そんな世界の片隅で起きた、ささやかな出会いと別れの物語……。

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