第2話 『からゆきさん』になるはずだった少女

売られた少女は逃げ出そうとするが・・


「あ、明日までには戻ります 弟たちが心配なのです」

少女、柚葉ゆずはは涙を流しながら叫ぶように言う



暗い場所で光も差さない狭い場所でのひもじい暮らし

引き取られた親戚の言葉で売られてゆくことになった柚葉だったが

病の弟が心配で‥つい会いに行こうとしたのだった。


「明日には出港だ お前は異国行きの『からゆきさん』として

売られたんだ」男たち

「下働きだと‥私は聞きました」柚葉


「わははっ 綺麗な顔の女の子 売られたなら大抵は‥」

「異国じゃなく吉原だったかもな」

男たちは高笑いをして口々に言うのだった。


蹴り飛ばされ、竹刀で幾度か打たれる柚葉

「や、痛い やめてえ」


港の隅での出来事 そんな時だった


「あなたたち か弱い女の子に何をしているのかしら」

声をかけたのは綺麗な洋装の少女 ワンピースに帽子の少女


タタタッ

素早く走り、柚葉の傍に来たかと思うと

落ちていた棒を手に取って、手槍を扱うかのように男たちを殴り倒す

棒、武器を回して、くるんと手の中に踊らせて

「ぎゃあ」「うおおお」


「ふふん、乙女の嗜みたしなみとしてちょっとした武術も勉学中よ」

なんか偉そう


「こいつには高い金を払っているんだ」


その言葉にちらん‥と柚葉を見る少女

「これも何かの縁ね」「…‥‥」



「ふむ、じゃあ私が買い取るわ いくらかしら?」


「私は有栖ありす広川有栖 これでも華族 伯爵令嬢よ うふふ

貴方のお名前は?」にこやかにお日様の光を浴びて有栖が言う




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