5話 久しぶりの村 ダート視点
あいつ……朝になっても起きて来ねぇ。
今日はコーちゃんのとこに行くのに寝過ごすとは納得いかねぇな……特にこの俺を待たせるのは納得いかねぇ。
朝飯はとりあえずサンドイッチが冷蔵庫にあるのは見つけたから作ってから寝たのは理解出来る。
作ってくれたのはありがてぇんだが起こさねぇと日がてっぺんまで昇っちまうよ。
「しょうがねぇから起こしに行ってやるか……」
あいつの部屋に向かって歩いていく。
それにしても朝飯が俺の好きな具ばかりでありがてぇ……もしかしたら昨日あいつが好きな飯出したから気を使ってくれたのかもしれねぇな。
「それにしても年下の俺に起こされるとか世話の焼ける奴だ」
着いたからあいつの部屋のドアを勢いよく叩く。
いつまでたっても起きてくる気配がない……しょうがないから部屋に勝手に入るか。
「おいっ!レースてめぇ!さっさと起きろ!」
「え!?ちょっと!!」
勢いよくドアを開けて入ると治癒術の本を読みながら新しい術の研究をしていたのか見慣れない術式が書きなぐられた紙が机に散乱していた。
もしかしてこいつ俺より早く起きてずっと研究してやがったのか……しかも途中で今日の予定すら忘れてやがった可能性がある。
次の日に予定がある日はやんなって何度も言ってんのに本当に懲りない奴だ。
「おめぇ……今日の予定の事忘れて何やってんだ?」
「今日の……?あっ!ダートごめん直ぐに行こう!」
そういうと急いで部屋を出てリビングに走って行く。
何ていうかしょうがねぇ奴だと思いながら部屋に戻って必要な物を準備して先に家を出て遅れて出て来たレースと一緒にサンドイッチを食べながら村へ向かった。
「とりあえず村に降りたのは良いけどここ一か月で雰囲気が変わり過ぎて無い?」
「そりゃおめぇ……俺と一緒に暮らすようになってから必要な物を俺に頼んで家に篭ったり森に行ったりと自分の家周辺から出てこなかったじゃねぇかよ」
自分の家周辺から出なかったら変化が分からないのは当然だろうよ。
開拓が進む中で徐々に移民が増えたり外部の街から視察に来る偉い奴が来る事が増えた結果宿が出来たりもした。
その結果コーちゃんの雑貨屋以外にも店が増えてそれなりに暮らしやすい村になって来ている。
「って事で俺は今から口調とか余所行きに変えっから気にすんじゃねぇぞ?」
「ん?それ位なら働いてる時にいつも見てるから気にしないよ……」
「それなら良いんだけどよ……」
俺はあいつに見えないように隠して魔術を使い暗示を解いた。
気持ちが軽くなった気がして解放感に心が満たされて行く。
助手という立場を貰えたおかげでその役を演じるのに本当の私が丁度良くて定期的にこうやって戻れるのが心の底から嬉しい。
今迄はずっと暗示をかけたままだったから苦しかったけどここではそれを気にしなくていいのが本当に嬉しくて願う事ならこの生活をずっと続けていたい。
「それじゃあレース、コーちゃんの所に行きましょ?」
「えぇ……用事は早めに終わらせたいからね」
何を言っているの?早めに終わる事なんてないのにと思うけどそんな事を言ったらレースは私に任せて帰ってしまうかもしれない。
この人と暮らして見て分かったけど真面目そうに見えて根は結構めんどくさがり屋さんだ。
仕事はしっかりとこなすのに自分の事となったら何処までもだらしなくてついつい面倒を見てしまう。
何ていうかお父様に似ていてほっとけない。
「なら一緒に走って行きましょうよ」
「え!?ちょっと!」
レースの腕を掴んでコーちゃんの雑貨屋へと向かって走る。
行く度に新しい商品が増えていて楽しくなってしまう……これは何に使う物なのだろうか、それはどういう風に作られたのかが気になってしまって話が弾んでしまい長引いてしまう。
「もう……日頃運動しないから体力が落ちるのよ?」
雑貨屋に着いたけれど息を切らして両手を膝を置いているレースを見て心配になる。
もしかしたら家にいる事が増えて外に出る事が減ったから体が弱って来ているのかもしれない。
私と一緒に暮らしてるのが原因でそうなっているのは嫌なのでこれからは私が村に行く時は強引にでも連れて行ってあげよう。
その方がコーちゃんも喜ぶだろうし友達が喜んでくれる姿を見るのは私も嬉しい。
「なんなん店の前でぜぇぜぇと煩いなぁってレースとダーじゃんどったの?」
「おはようございますコーちゃん、あのね?レースが話したい事があるって言うから今日は連れて来たの」
私の挨拶におはよーさんっと答えながら珍しい物を見るような顔でレースを見ると息を切らした姿に呆れた顔をする。
「なんや情けない大の男が息を切らしてぜぇはぁと女の前で恥ずかしくないんか?……しゃーないお茶用意するから奥で待っててなー」
「コーちゃん気を使わせてごめんね?」
「いいっていいって気にすんなー、取り合えず座らせて休ませときー」
……そういうと私達を雑貨屋の奥にある居住スペースへ招き入れてくれた。
道中雑貨屋の中を見たけれど見た事が無い道具や家具が増えていて興味をそそられる。
これはレースがコーちゃんと話してる間に色々と見させて貰った方が良いかもしれない。
それに彼女が元冒険者だって事は私は聞いていない事にした方が良いと思う。
彼を椅子に座らせて隣に座った後にそんな事を思ってしまったらうきうきした気持ちを抑えられずに体を左右に揺らして笑みがこぼれる。
そうこうしている間にお茶を人数分用意したコーちゃんが笑顔で入って来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます