『花』魔法✿のぷち勇者と世界樹☘の迷宮

左手でクレープ

プロローグ


 彼の争いで、英雄は平和を願い。

 そして、世界樹は『嘘』をつく。


 その嘘は『盟約』となり、世界を飲み込んでいく。


 戦前、5つの国が持つ、

 天空から与えられしその恵み、5国『万象』。


 争いを経て、そのカタチは世界樹に飲み込まれ、

 そしてそれは、5国『5迷宮』と化す。



 その『嘘』は、争いから人を平和へと導くため?

 この星を護るため?


 それでも―――。

 その英雄の願いは、世界樹により叶えられた。



 ―――そして、200年の歳月が過ぎ。


 世界は、世界樹の頂を目指す『迷宮探索家フローター』により、

 安定した資源を手に入れ、安定した世界を保ち続けている。



 ✿ ✿ ✿


 そんな、世界樹の "木の根" 『ルートオブセブンスフロート』の片隅で、一匹の黒猫が独特な語尾を駆使して呟く。



『―――「白昼夢デイドリーム」の内、「夜想曲ノクターン」がふたつ出現し、唯一無二のスキル持ち「スター」のふたりに世界樹の輪廻に返されたにょ……』



 その横にいつの間にか現れた、名もない人の影が、その「スター」のふたりの内、『花』のような「魅力」を兼ね備えた少女を見ながら、黒猫に言葉を返す。


『そうですね……。200年もの間、『名』を食べ続け『魂』を媒介に生き続けた「夜想曲ノクターン」が輪廻に上りました。これによって、歴史はどう動くのでしょうか。』


『ふん! にょ! お前はその目線の先に見るそれに、何を期待するのかにょ?』


『……何も。ただ、願わくば……。』


 その影の願い。

 黒猫は、幾つかの想像がつくのだけれど、それ以上は聞こうとはしない。



『ま、あのふたつの「スター」は特別にょ。』

『ですね。』


『……きっとにょ。』

『はい……。』


『―――ただ。』


『恐らくは、何らかの "汚染" ですか……。』

『そうだにょ。』


『それもあって、世界樹はその『導き』をあの子達に向け、ここまで進ませている?』


『今は分からないにょ。でも、 "狂わせている" ではなく、『導いている』方を僕らは、ただ信じるしか……ないにょ。』


『そう……ですね。でも、自分は……。』


『そうだにょ……お前は見守ることしか出来ないかも知れないにょ。でもまぁ、僕はそんな義理が『世界樹』にはないから、好き勝手するけどにょ!?』


『―――感謝します。』

『ふん! にょ!』



 恐らくは、このふたりと一部の『世界樹の民』しか理解すら出来ないであろう会話を交えながら、ふたつの『黒』はその色の影と同化し、世界樹の安寧のため、すぅ~と消えて往く。


―――自分達が見守り感じる「少しばかりの不安」などに、あの眩しいばかりの『スター』達が臆すことなく、冒険の歩を進めて欲しいと切に願いながら。



 ✿ ❀ ✿


 このお話は、


 そんな、眩く輝く(あっけらかんとした)『スター』達と、それを取り巻く『仲間』と『過保護な大人達』の―――。


―――『世界樹の迷宮』を舞台にした、『花』が星に舞う物語。

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