第22話:楽しい飲み会(二回目)
「へぇー、エメラルが紹介してくれた所とはまた雰囲気が違うね」
「そうじゃな。なんというか、高級感がある?」
「はい!! ここは少しお高めなんですけど、私達のお気に入りなんです!!」
「料理もお酒もとても美味しいので、人を招待する時はここを選んでいます!!」
少し細い道を通ってアイマイ姉妹に連れられて来たのは、何やら高級感が漂う料理店。
店内は物凄く綺麗で、中にいるお客さんもどこか気品のある人が多い気がする。
ちょっと緊張するな……
「ステラとエメラルが来れないの残念だね」
「仕方ない、あやつらにはあやつらの時間があるんじゃ」
ステラとエメラルは夜も二人きりでいたい、というお願いをしており、今回の誘いを断っていた。
昨日私達に構わずにイチャイチャしていた事に少し思う事があったのかもしれない。まあこの店の場所は分かったし、また今度誘おう。
「さて!! 早速料理を頼みましょう!! すみませーん!!」
アイが手を振り店の人を呼ぶとどんどん注文を入れていく。
正直何がオススメなのか全く分からないし、任せていいでしょ。
料理楽しみだな〜!
「しかしアクトなんて知りませんでしたよ」
「私も初めて聞きました」
「へぇ、情報屋さんでも知らないレベルなんだ」
「はい……ですが知らないと言うことは情報の宝箱!!」
「手に入れさえすれば一攫千金も間違いなし!! 燃えてきました!!」
「あ、あんまり無理はしないでね?」
「お主ら一回捕まっとるんじゃぞ?」
「「大丈夫です!! 引き際は学べたので!!」」
「「お、おお……」」
どこから来るんだろうかその自信は。
生業にしているからか、はたまた長年の経験からか。
まあ見つけた時も意外と元気だったし、この二人ならなんとかなるのかもしれない。
「お待たせしましたー」
「あっ!! お酒と前菜が来ましたね!!」
「飲みましょう食べましょう!!」
テーブルの上に置かれたお酒の入った瓶と四人分の前菜。
「へぇ……初めて見た」
置かれた前菜だが、鮭の切り身とスライスしたたまねぎに緑色の油がかかっている。
オリーブ? だっけ。デモニストでは料理や美容にたまー使われるらしい……と本で昔読んだことがある。
あー、でも結構いい香り。私は好きかも。
「ここのオリーブオイルは中々美味なんですよねぇ……そして!!」
「待ってましたワイン!!」
「おおー!! ワインだ!!」
「果実酒とは良いのう」
グラスに注がれる紫色のお酒にテンションが上がる。
ワインはパーシバルで何度か飲んだことがあるけど大好きなんだよねー!!
甘くて飲みやすいから、ついつい何杯もいっちゃう。
「それじゃ乾杯しましょう!!」
「「「かんぱーい!!」」」
こうしてデモニストに来て二回目の飲み会が始まった。
「んく……美味しい!!」
「ほぉ……後味が爽やかでよいのう」
アルコール特有の苦味はあるものの、後味がすっきりしていて尚且つ甘い。これならお酒初心者にも勧められるのでは?
というか本当に美味しいな。何か一緒に食べたくなる。
「ふふふ、ここの料理はどれもワインと相性が良い物ばかり!!」
「じゃんじゃん飲んでじゃんじゃん食べてください!!」
「わーい!! ありがとー!!」
あー最高。
まさか二日連続で飲むとは思わなかったけど、たまにはいいでしょ。ハメは外せるときに外さなきゃ!!
こうして私達は自由に飲んで食べて楽しく過ごしていたのだが。
~~~
「お姉様ぁ……好きですぅ……」
「いっぱいぎゅーぎゅーしてくださーい……」
「……」
どうしてこうなった?
しばらくして、姉妹ちゃん達が酔ってしまい、私に過度なボディタッチや猫なで声で甘えてくるようになったのだ。
甘え上戸だったんだね二人……と、ここまではいい。
「じー……」
「あ、はは……」
ムーナがさっきから殺気を向けてくるんだよ!!
やだ、超怖い!!
どうやら私が姉妹ちゃん達とイチャコラ(してるつもりはないけど多分そう見えてる)のが気にくわないらしい。盗賊団を捕まえた時もそんな感じだったし。
だが、今回はちゃんと対策をしている!!
「ごめんね、別にムーナだけ仲間はずれにしたい訳じゃないんだよ? よしよし……」
「んぅ……」
右腕を伸ばし、ムーナの頭を優しく撫でる。
実は何とかして右腕を確保し、ムーナに構える部分を作っていたのだ。子供みたいな扱われ方にムーナは少し頬を膨らませていたが、ほろ酔いだからかすぐに受け入れてくれた。
「ふふっ」
「んぁ……」
あ〜かわいい。
なんか癒されるなぁ、まるで甘えん坊な子猫みたい。魔王だけど。
「はーい、ゴロゴロー……」
こうして首の方も撫でて上げれば更に猫感が……
「シャーってしてやろうか?」
「……にゃあ」
「お主が猫になってどうする」
あ、流石に理性はあったのね。
酔ってるとはいえ顔が少し赤いだけだし。
私もだけどムーナって結構お酒強いのよね。
「ごめんごめん、ただムーナの事も見てるよーって」
「そこまで可愛がらんでもよいわ……恥ずかしい」
「えー? 満更でもなかったのに?」
「うるさい」
取り敢えず再び魔法で八つ当たり、みたいな事態は避けられたようだ。
「お姉様~!!」
「だっこ~!!」
「わっ!!」
と、再び姉妹ちゃん達がくっついてくる。
「えへへー……」
「ふへへー……」
うーん、大分酔ってるなぁ。
取り敢えず水を飲ませて……
「んくんく……お姉様ぁ」
「んー? どうしたー?」
「私達にかっこいいセリフを言ってください~」
「かっこいいセリフ!? 例えば……?」
「えー……どうしたんだい、子猫ちゃん? とか」
「きゃー!! それいいですねぇ!!」
「えぇ……」
そんなキャラじゃないんですけど!?
えーと、マジで私がやるの?
なんかキラキラした目で期待してるし……ど、どどどどうしよう。
「はぁ……」
放置したらずっと要求してくるだろう。
それはそれで面倒くさいな……
そこまで嫌な要望でもないし、さっさと済ませるか。
一呼吸おき、アイマイ姉妹をじーっと見つめた後、
「ど、どうしたんだい……子猫ちゃん?」
精一杯の決め顔(多分)とかっこよさそうな声で要望のセリフを告げた。
「「キャー!! お姉様素敵ー!!」」
「あーー!! 恥ずかしい恥ずかしい!!」
くっそう!! さっさとやればいいとか思ったけど結構恥ずかしいな!!
間違いなく私の黒歴史メモに刻まれた瞬間だ……二度とやりたくない。
「えへへー……最高でしたぁ……」
「やっぱりお姉様は素敵ですぅ……」
「そ、そう?」
ただ、べた褒めしてくれるのはかなり気分がいい。
二人だけのお姉様っていうのも悪くないなぁ。
なーんてくだらない妄想で顔を二ヤつかせていると
「ガブッ」
「ギャーー!! 痛い痛い!!」
ちょうどムーナに向けていた右手の指を思いっきり噛まれた。
「気分はどうじゃ、お姉様?」
「い、いえー……最高でした」
「少しは頭を冷やせ、全く……」
別に噛まなくてもよかったのに……あー跡付いちゃってるなぁ。
「ぺろっ」
と、ケガをした時のクセで噛まれた部分を舐めたのだが
「はわわ……」
「お、お姉様……」
「ん? 何?」
何故か二人が私を見ている。というか顔が赤い。
なんで?
「そ、それ……ムーナさんが噛んだ所ですよね?」
「え、うん?」
「ま、まさかお姉様が間接キスだなんて……」
「はぁ!?」
「っ!?」
いやいやいや!?
何でそうなるのさ!?
確かにムーナの口は触れたけど私はただ舐めただけだよ!?
「ねぇムーナ!! あれはキスとかそういうのじゃないよね!?」
「……」
「なーんで無言で頬染めてるの!! ねーえ!!」
「やっぱりお姉様は……」
「お姉様ですね……」
何その抽象的だけど妙に意味が分かってしまう言い方は!!
そのさ? キスとか変な風に意識されると私だって……!!
「恥ずかしいからやめてー!!」
今日は今日で騒がしい飲み会だった
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