第21話 新銃で初めての戦闘
射撃場で新銃の使い勝手を練習した次の日。
レンヤ達は異界の廃れた町のようなところで、6輪の大型車両と一緒に銃撃を響かせている。今回はタクミとサユリとヒナコのサポーターである3人も同伴し、レンタルした大型車には昨日の新銃である機関銃2丁が装備されているていた。機関銃は以前のよりも拡張性と耐久性が向上したものとなっている。
討伐依頼は、彼らにとってはそこまで苦労しないが一般的には簡単ではない程度のレベルだ。狼男のような獣人モンスターである。いつもの硬い土の地面しかないとこではなく、深くも浅くもない距離に位置する廃れた町のように崩壊した家や施設にひび割れたコンクリートが広がっていた。
前日の射撃場で新銃の扱いにある程度で慣れたため、今日は実戦での経験と確認、そして新銃の開発で使った大金の補填に来ていた。特にレンヤとアイナと風香のハンター組3人は、大金の補填のためにモンスター討伐に熱が入っている。昨日の射撃訓練後の夕食の食卓で、サユリから掛かった費用を聞いたためだ。銃をよく知り、市販された銃の値段についての感覚を持つアイナであっても予想以上の金額だったことを踏まえると、高額の費用であったことは予想がつくだろう。
だから、最前で近接戦闘をするレンヤはもちろん、サユリもアイナにも鬼気迫るような、燃えているような勢いだ。
遠距離攻撃には乏しいがパワーとスピードが高い獣人型のモンスター相手に、接近戦で大立ち回りして血飛沫を撒き散らすレンヤ。
珍しく車から降りて新しいアサルトライフルで突撃しながら血祭りにする風香。
より強力になった新対物ライフルをフルオートかのように撃ちまくって血肉のミンチにしていくアイナ。
その光景はどっちが悪かわからなくなる程。3人の中には、新しい銃が手に入ったワクワクは殆どなくなっていた。
そんな戦闘を始めてから15分が経った。
「サユリ。……私も、前に出る」
「!! は、はい、わかりました! 車両から離れすぎないように注意してください!!」
「ん。……行ってくる」
「ヒ、ヒナちゃんは間違って当てないように注意してくださいね!」
「わ、わかってるわよ!」
3人の鬼気迫る姿に、サユリとヒナコは若干引いていた。
サユリは戦況を把握するために、ヒナコは機関銃を操作しているために、レンヤ達の3人が殺虫剤を吹きかけられた無愛の大群のようにモンスターをばかすか駆除しているのを見ている。それは、サユリがヒナコにその鬼気迫る姿からモンスターに間違えるなと、冗談を言ってしまう程の光景である。
運転していてしっかり見えていなくても、銃声と2人の反応から、簡単に想像できたタクミは苦笑いをしていた。
運転席に座るタクミが大型車を減速させると、いつの間にかルーフのハッチから車内に戻っていたアイナが、左右に開くバックドアを開けて飛び出す。
アイナが持つのは、先程まで車のルーフから撃っていた独特な形状の対物ライフルであったが、バレル長が短くなっていた。元々ついていたのは22インチで、そこから18インチのものへと変更されている。
アイナが持つ、自分で設計した対物ライフルは一般的なライフルとは全く異なる。
銃はブルパップ式で2連式チューブマガジンがバレル上部にあって、ピストルグリップにM-LOKのハンドガードでスマートながらゴツさがある独創的なセミオートマチックアンチマテリアルライフルだ。ショットシェルのようなテレスコープ弾を使用し、バレル交換が瞬時に可能で、バレルを交換することで別の弾を使用できる。
それにはアイナによるさまざま工夫が施され、軽量で操作安定性が高く、ライフルとして重要な命中精度とトリガーの引き心地の良さを備えていた。
さらに、銃の命中精度だけではない。リロードも他の大口径ライフルよりも早いのだ。
チューブマガジンであるためマガジンの脱着が必要なく、そのチューブマガジンも2連式と2つ並び、さらにバレル上部にあるのだ。それにより、リロードは伏せた姿勢を崩さずに左手に持った4つのテレスコープ弾を1回の動作で装填できるわけである。これは立射だろうが姿勢を崩さずできるため、ショットガンのクイックリロードのような動作だがそれよりも圧倒的に早くなっていた。
その銃の性能に加え、銃上部には、2倍、8倍、16倍の3パターンの倍率を瞬時に切り替えられる高性能な光学サイトが装備さている。扱いが独特だが使いこなせれば強い味方となり、鬼に金棒となる銃となっていた。まさにアイナのための銃である。
その性能の高さは、先程までルーフでアイナがその銃を駆使して中距離から超遠距離までの幅広いモンスターを撃っていたことからわかる。
一発撃つ事に1体、腰に付けたテレスコープ弾を次々と左手で装填しながら。アイナがデザインしたバイポッドに支えられた銃から、次々と撃ち出される銃弾が精確に胸や頭に当たり、モンスターの体を破壊していた。そ次々と弾が飛んできて精確に狩っていくのだから、モンスターに自我があったとしたら恐怖していたことどろう。
アイナはその銃のバレルとハンドガードを少し短くバイポッドがないものに変更し、立射用に軍で言うマークスマンライフルのようなった銃を持って車から降り、すぐに暴れ始める。
その姿は、まるでFPSゲームの走り回るスナイパーのようで、近距離からの中遠距離のモンスターを一撃で倒していく。そんなショットガンのように撃ちまくるアイナの姿は、上級ハンターとして十分すぎる戦闘能力を発揮していた。
「風香さん! 残りのマガジン数は?」
「2つです。一旦戻ります」
「ん。……援護する」
「お願いします」
風香が元々から所持していたマガジン数は6つ。
まだそこまでピンチではないが一旦補給のために風香はアイナに返事をした後、迎えに来る大型車両の方に撃ちながら走る。
サユリが手にしているのももちろんアイナが設計し新しく手に入れたアサルトライフルだ。
アイナが設計したと言っても根本から設計したわけではない。風香は最近に仲間になっているため、既存の銃を元に手直しした物である。とはいっても、アサルトライフルは銃の中で最も使用されているだけあって多くが開発されている。それらは行き着く先に行き着いてほぼ頭打ちになっているために、ゼロから作る意味はないので関係なかった。
既存のマガジンがグリップより前にあるコンベンショナルタイプの7.62ミリのフルオートアサルトライフルを元に、アイナが考えた少しかわったガス圧方式に変更し、内部フレームを追加したりと細々を見直した、見慣れた形状の銃だ。威力のためにいわゆるカービンと呼ばれる物たちよりは長いが、取り回しには十分考慮され、少しゴツさのある見た目に反して軽量となっている。
その銃を駆使した風化の戦闘は、サユリとヒナコが引くくらいの苛烈さがあったことからどれだけのものであるかわかるだろう。アイナや車の機関銃の射線に入らないように意識しながら、レンヤにモンスターが集まりすぎないように援護し、それらをしながら風香自身へと迫るモンスターに次々と弾を撃ち込んでいた。
風香の新しいアサルトライフルは毎分500発とわざと遅めに設定され、そのレートに合わせて風香はモンスター1体毎に3,4発であまり外さずに当てている。それなのに、まだ戦闘を開始してから15分しか経っていないのに、所持していた30発入りマガジン6つの内の4つも消費しているのだ。当然、リロードはからになる前に余裕をもってするタクティカルリロードで行っているため、120発全て撃ち尽くしたわけではない。だが、そのリロードのタイミングがうまい風香はせいぜい合計で10発程度しか残していないので110発ほど撃ったことになる。
相当に暴れていたというわけで、補給のためにアイナに引き継ぐ。アイナは風香の勢いも引き継いだかのように、対物ライフルで走り回りながら暴れる。
そんな2人のお陰で、良くも悪くもレンヤは目の前のモンスター達に集中できていた。あいも変わらず、ブレードで次々と切り刻見ながら草刈り機のようにモンスターという雑草を狩っていたレンヤは、アイナが設計した折角の新銃を使う機会がなくなっていたのだった。
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