第15話 感知能力

 黄土色の廃れた大地が広がり、遠目には廃墟とかした大量のビル群が見える。以前、カピカピゾンビと戦ったアルファー方面、その端の浅場。そこを、1台の前輪2輪で後輪4輪の計6輪に遠隔操作可能の軽機関銃2丁をルーフの左右端み備えた大型オフロード車が走っていた。


「なので基本的に、兄さんを前衛、アイナを後衛、風香さんを遊撃手と思ってください。とはいっても、基本はいつも通りに動いていただいて構いません。なにかありましたら指示を出させていただきますので、思うように動いてください」


「はい。わかりました」


「……兄さんは暴走しすぎないでくださいね」


「お、おう」


 こういったサユリ達がいる場合、何かあったときや、チームワークの際の指示はサユリが出すようになっている。普段レンヤとアイナの2人のときはその必要もなく、基本的な戦術が決まっているため必要ないが、人数が増えてやれることが多くなった場合は臨機応変さが必要となるので、そのためだ。

 風香は叔父の藤堂斎からサユリが頭いいのを聞いていることや、自分がパーティーに入れてもらったことからレンヤたちのスタンスにしたがっている。


「サユリ、そろそろ知覚区域に入るわ」


「一旦、停めるね」


「了解です」


 タクミが車を停車する。

 これはレンヤとアイナの2人だけのときもやっているのと同じで、対象のモンスターがいる区域に入った際に車を停めて、依頼のモンスターと同じ特徴か、その数や他にいないか、など確認するためだ。


 ハンター協会の提示する依頼のモンスターは、偵察用ドローンで調査されたものなので、見逃してしまったモンスターや、調査後の時間差で新たにモンスターが出現したりなど、そういったことがごく偶にあるためだ。


「風香さん、モンスターをどの程度で感知できますか?」


「明確にはできません。そこそこの数がいることがわかる程度です」


「兄さんとアイナはどうですか?」


「俺は、塊で感じられる程度だな」


「ん。……705から770メートル、300程」


 まだ若いながらも、一人前と呼べるハンターである3人には当たり前のように人外な感知ができる。

 これは一人前のハンターなら、上級なハンターなら出来て当たり前の能力で、異界で活動をしていると身につく、ゲートが出現する以前ではありえなく身につくはずのなかった能力で未解明な事象の1つである。


「ありがとうございます。やはり、風香さんは大体、兄さんとアイナの中間のタイプですね」


 サユリが情報端末の探知結果と照らし合わせながら確認する。


 ハンター達の感知能力にも、それぞれ違いがある。

 それは大まかに2つに分かれていて、探知タイプと察知タイプである。

 とはいっても、その境界は曖昧で明確に、そして簡単に分けられるものではない。が、極端なところがあるレンヤとアイナでは明確に分けることができ、レンヤが察知、アイナが探知タイプとなる。

 察知タイプとは、近距離での細かい動作、特に自分に向けられた殺気や攻撃、さらに視線をいち早く認識するのが得意な反面、遠距離での敵の数やその距離などを細かなことを感じ取ることが苦手だ。もう一方の探知タイプはその逆で、遠距離の敵の数やその位置と距離、さらにはその形状まで詳細を認識できる反面、無意識下での感知が苦手となる。

 とはいってもどちらのタイプであれ、苦手だろうがその最低限の感知はできるためあくまで目安であり、その苦手も各々の練度によって変わる。

 この感知能力はその者の戦闘スタイルが影響される。近接戦闘派のレンヤは察知が、銃が得意なため必然的に遠距離派になるアイナは探知が得意になるわけだ。

 そして、風香は極端な2人の中間、察知も探知もそこそこだができるオールラウンダーなタイプで、これは1人で活動することが多くその素質があったためで、サユリが予想していたとおりであった。


「モンスターの位置や数はアイナの言った通りです。ハンター協会の情報と同じですので、始めましょう」


 車後ろに座っていたレンヤ、アイナ、風香が頷いて立ち上がる。レンヤは腰に替刃付き鞘とビレードを身に着けて車の観音開きリアハッチを押し開け、風香は横においていた低倍率光学サイトを装着する中型弾薬用アサルトライフルと、2発装填可能な小型グレネードランチャーを身に着け、アイナは6発装填可能のグレランと対物ライフルを持って、車後部の天井を押し広げ専用の台座に座って上半身だけ外に出す。


 サポーターの3人、サユリは車の中央に纏められた電子機器があるところに座って遠隔で車の両サイド上部の軽機関銃2丁を起動させ、タクミは運転席で情報端末から得られた周りの地形の確認をし、ヒナコは助手席でタクミとサユリの補助のため情報端末を持ち、前方から来るモンスター用の車中央上部のガトリングガンを助手席にある操作機器から起動させる。


「お三方、先程言った通り基本的に思うように動いて構いませんが同士討ちには気をつけてください。……では風香さん、合図をお願いします!」


「……え?」


「開始の合図ね、合図。やっぱり新メンバーだし」


「ん。……景気よく」


「な、なんて言えば?」


「開始でいいわよ」


「何でも、風香さんの好きな通りで大丈夫」


「わ、わかりました。恥ずかしい、がやります。では……討伐開始!!」


「「「「「おぉー!!」」」」」

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