隙間から
村上 二
第1話 1日目
大学生のA、B、CはAの部屋でだらだらと過ごしていた。
AとCは2人でゲームを、Bはスマホを片手でいじりながら、缶チューハイを飲んでいた。
時間はもうすぐ、日付をまたごうとするところだった。
「ねぇ、この話知ってる?」
Bが話しかける。
「あっちに少し行ったところにコンビニあるじゃん。」
Bは片手でスマホをいじりながら、もう片方の手で、コンビニのある方向を指差していた。
「そのコンビニと、となりのアパートの間の隙間に幽霊が出るって。」
「何それ、聞いたことないけど。つーか、急になんなの?」
Aが反応する。
「女の幽霊だって。なんか睨みつけてくるらしい。んで、気に入ったら、段々家の近くにくるんだって。」
「急になんなの、聞きたくないし、そんなの。」
ゲームの画面から目を逸らさずCが答える。
「あれ、もしかしてびびってんの?」
少し笑いながら、BはCに語りかけた。
「別に、どう思ってもくれてもいいけどさ。だけど、非科学的なことを嬉々として語るから、すこしガキっぽいって思っただけだよ。」
画面を見続けたままCは返した。
「あー、そうですか。じゃ、別にガキでもいいですよ。身近にこんな話出てくることないから、教えてやろうと思ったのに。そんなリアクションしなくてもいいのに。」
少し、不貞腐れたようにBは答える。
「そんな話、どっから聞いたの?」Aの質問に対してBは、
「ネット。まとめサイト。ココ。」
そう言いながら、手に持っていたスマホを指差した。
「ふーん。なんかそういうのってそんな細かく書いてるもんなんだ。」
「まぁ、俺もそんなにこのページみてるわけじゃないし、ケースバイケースなんだろうけど、なんかやたらピンポイントにこの近くだからさ。教えてあげなきゃもったいないないだろ。」
何がもったいないのか、Aは理解できなかったが、形式的に「教えてくれて、アリガト。」とBに返した。
その刹那、
「あー。」
と、Cが声を出し、ゲームの画面には「敗北」の2文字が浮かんでいた。
「くだらねぇ話してるから、ミスったじゃん。」
Cは冗談めかしつつ、Bに抗議する。
「よし、わかった。じゃあ行こうか。コンビニ。」
「何がわかっただよ。行かねえよ。」
Aは反論する。
「ちょうど、キリがいいとこだろ。じゃあ行くしかないじゃん。ほら、決まったら行くぞ。」
AやCの反応を見ずに、Bは自分のカバンを持つと、そそくさと出かける準備を始めた。
「行く理由がねーだろ。」
Aが答えると、
「アイス食いたいんだよ。お前んちにねえだろ。」と、明らかに取ってつけたような理由で、Bは返した。
「1人で行けよ。」
今度はCが返した。
「なんだよ、冷てえな。アイスだけに冷たいってか。つまんねえよ。」
Bは本当につまらない返しをした。
「幽霊なんて、非科学的なんだろ。何もありゃしないんだからさ、行こうぜ。」
Bは煽り立てる。
正直なところゲームに飽きつつあったAは、やめる頃合いとしてもいい頃だと感じていたため、
「しょーがねえな。」と口にしつつ、出かける準備を始めた。
「お前来いよ、C。ここ俺ん家だからさ。勝手にひとりでいさせるわけにもいかないから。」
そうやって半ば強引にAはCを誘った。
Cは渋々ながらも、付き合うしかないという雰囲気で、無言で準備を始めた。
「じゃあ、決定。行くぜ。」
Bはそう言って外に向かった。
しかし、Bはその言葉とは裏腹に、その足取りや雰囲気には楽しそうな様子が微塵も感じられなかった。
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