出来損ないアルファ公爵子息、父に無限エンカウント危険辺境領地に追放されたら、求婚してきた国王一番の愛息、スパダリ上級オメガ王子がついて来た!

みゃー

第1話1

「コウ様!コウ様!どうかお待ちください!」


広いアルフレイン公爵の屋敷の一階の長い廊下を…


アルフレイン公爵の三男坊のコウが機嫌悪そうに早足で歩いていると…


後ろから、屋敷の一部始終を取り仕切る執事長の初老の男性がその後を焦り叫びながら追いかけて来る。


だが、コウは、一切気にもせず、ただ早足で玄関に向かって行く。


屋敷内の回りにいる多勢のメイドや執事、屋敷を守る騎士達は、そんな様子に眉を顰めながら、まぁ、いつもの事だと呆れ顔をする。


「コウ様!今日はどうか、今日だけはどうか!お屋敷にお留まり下さいませ!もう間も無く、アキ王子様がこのお屋敷にご到着されますから!」


執事長がやっと、狩猟用の軽装のコウの右肩を掴んで言った。


しかし、服は軽装でも、もうすでに右手には弓を持ち、腰の鞘には立派な剣が収まっている。


コウはイラッとした表情になったが、くるりと後ろを振り返り執事長に言った。


「アキ王子は、結婚相手を探して色々な貴族の屋敷を回ってるんだろう?この屋敷には、俺と違って出来のいいアルファの兄がもう二人もいる。兄達がいればそれで充分だろ?」


その言葉に、執事長は黙った。


コウは、その態度が執事長の答えだと察して、更に語気を荒げて続けた。


「それに俺は、7日後にはこの屋敷を追放になる!」


「つ…追放だなんて…何と言う事をおっしゃいます!お父上様は、コウ様に領地の管理をお任かせになられるのではないですか!」


執事長は、酷く焦りシドロモドロ。


「ふ~ん…領地の管理ねぇ…あんな化け物が出る、魔獣が出る、盗賊は出る、治安も悪い土地に行けって言うのは、それは追放って言うんだよ…」


コウは、イヤミっぽく冷静に言って見せる。


コウは、アルファの父、オメガの母からアルファとして生まれた。


この世界は、男女はアルファ、オメガ、ベータに分かれる。


アルファは人口が少ないが、美形で体格も良く頭も良くスポーツも万能で、社会のあらゆる分野の頂点に君臨している。


そして、自身から出すフェロモンでオメガやベータを誘惑する。


オメガも人口は少ないが、美しい者が多い。


そして、自身から出るフェロモンでベータや、特にアルファを激しく誘惑するが…


アルファにうなじを噛まれると、その噛んだアルファの番になり、フェロモンは、そのアルファしか感知出来なくなり…


やがて、その番の子供も産める。


そしてベータは、人口の大多数の、フェロモンも出ない容姿も才能も普通の人間達だ。


だが、コウは、かろうじて顔だけはいいが…


普通アルファが持っている、長身長も、数学や物理、貴族の集まりでは必須の文学、芸術に対する才能も無かった。


得意なのは、剣と狩猟と、ケンカ位。


そして何よりも致命的に最悪だったのは…


アルファとしてフェロモンも出せなかったし、オメガのフェロモンも感知出来ない病持ちだった。


コウが反論出来ない執事長を見据えていると…


横から二階に延びていた階段の真ん中辺りから、厳しい声がした。


「もう良い!コウの好きにさせろ!」 


コウの父でありアルファであり、中年ではあるがまだ見た目が若い、容姿も才能も完璧なアルフレイン公爵だった。


公爵は、すでにアキ王子を迎えるべく、ジレの上に高級で裾の長いジャケットの黒いジャストコールを羽織り黒いズボンで正装をしていた。


「しかし…お館様…」


執事長が戸惑う。


「コウ。勝手にするがいい!」


公爵が更にそう言うと、コウはチッと舌打ちして、執事長を残し早足で玄関に向かった。










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