「第4章 目をつむってただけだから」
「第4章 目をつむってただけだから」(1)
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灰色の本によって由香が目覚めるのを知ったあの日から、大樹は日々の習慣として灰色の本を見るようにしていた。
これまで見なかったのは彼にとって一つの抵抗だった。今まで頑なに見ようとしてなかった自身の未来。
予め決まっている未来の中で都合良く生きるよりも自分自身で切り開いた方が、良いに決まっている。
そう思っていた。
しかし、全て間違った考え方だった。回避出来る未来は知っておく。
それに予め備える。それが全てなのだ。どこかに平等性を求めてもしょうがない。世間の誰かになんて知った事ではないのだ。
加えて今回は由香の生存が運良く分かっただけで、もしかしたら次はないのかも知れない。そう思えば、良い機会だった。
一年間の最適化された未来が見れる灰色の本。
それを見るのは決して悪い事ではない。
そうとも、自分は悪くない。
大樹は灰色の本を開く前に心の中でそう言い聞かせていた。
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