プロローグ

 とあるその町には民家が多く見られ山に囲まれた自然豊かな景色と川が流れる

水の音。田畑では農作物を育てる老夫婦達や歩道を元気よく集団で学校へ向かう

子供達の列。

「おはようございます」

威勢よく挨拶する子供達を見て思わず老夫婦達の顔にもほころばしい笑顔が

浮かぶ。路上を走行する車は規定速度を守り、ここ数十年間事故もない。

健康と安全の神様が祭られている神社があるとまで言われ、毎年、正月になると

その神社を参拝する客人やお守りを買って帰る人の群れで賑わいを増していた。

大都会ほどの人口はいないが、それは住みやすい空気がきれいな田舎町だった。

勿論、ニュースでよく耳に聞く「5年後の未来は少子化と高齢者上昇は止まることなく、すぐそこまでやってきている」それは変わりはないが、この町の高齢者達は皆、

自分の力で考え生活していこうと体を動かしている。老人は増え子供の数は減っている世の中に置いていかれない為に自分達が世の中にいる意味を 皆 考えながら生活しているのだ。老人達は野菜や米を作っているのが元気のみなもとなのだろう。

足腰が立たなくなれば、少し休憩をとり、それでも動けるうちはと朝早くから畑に

出て仕事をしている姿はとても生き生きして輝かしい

独り者の老人は隣近所の仲間達とおしゃべりをしながら互いの健康をいたわり合う。誰かが病気になれば誰かが世話をして助け合う。

「人は一人じゃ生きていけん。町の皆は家族じゃけん。一人もんも家族がおるもんも

助け合って生きていかなあかん。それが皆、元気でおれる健康の秘訣じゃよ」

町長である吹石総一郎ふきいしそういちろうはそう語っていた。

この町の働き者の高齢者達は平均年齢75歳。町一番の長寿のおばあちゃんでも現在105歳で畑仕事をバリバリしている。老人達は何歳いくつになっても自分が老人だとは思ってはいない。

『自分が老人だと思う時はやまいに倒れた時じゃ』

そう言って、105歳の武田梅たけだうめが白い前歯とその2つ隣の銀歯を見せ

豪快に笑う。梅は総一郎宅に隣接する民家で一人で暮らしている。

梅は総一郎が赤ちゃんの時から世話をしていて面倒を見ているせいか、早くに母を

亡くした総一郎は梅のことを母のように慕っていた。


 朝の登校時、小学校前の横断歩道にはいつも駐在所のお巡りさんが子供達の安全を

守る為に横断歩道の前に立っている。

「行ってらっしゃい」

お巡りさんの優しい声はいつも子供達に安心を与えてくれた。

「いってきます」

子供達は応えるように元気な笑顔で返答する。

お巡りさんもまた送り出す子供達の両親と同じ気持ちだったのだろう……。



しかし、そんな平和な町に不幸が訪れたのはそれから半年が過ぎた頃だった―――。


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