第2話 営業と企画

俺はいつもの客受けのいいスーツに着替えノルマをこなしに家をでた。

俺の仕事はイベント会社へエナジードリンクを売る仕事。

これ飲めば3キロ落ちるとか、身につけたら金持ちになれるとかそんな話しないのに、そんなバカな話しがどうやらみんな好きらしい。 そんなバカなうまい話を信じる人に今日も俺はドリンクを売る。



そしてお昼前にもなると今日も今日とて絶好調の俺は今日のノルマを終えて公園でおサボりをしていた。我が社のお客様に支給する用のエナジードリンクを飲みながら。

やっぱり人にお勧めするんだから自分でも飲んでみないとね!

そんな言い訳を1人でいいながら日課のアプリでも起動するかなとした時


「先輩!また支給品勝手に飲んでる!」


後ろからスーツを着ていてもわかる日焼け顔で如何にもなスポーツマン体系の後輩・山崎翔平がやってきた。


「いいんだよ、だって今日のノルマ終わっちゃったから配る相手いないんだから」


そう言い俺はこれまた支給品の中からエナジードリンクを山崎に渡すとブーブー言いながらも結局受け取っている、相変わらず真面目なんだか不真面目なんだかよくわからない男だ。


「早っ!もう終わったんスか!?俺なんてまだ二件目ですよー」


「まだ二件かよ!?暇だから遊び行こうと思ったのに」


「いやいや先輩仕事中ですよ!ていうかそんなことの為に呼び出したんですか!?」


「だって暇なんだもん」


「ノルマ終わってもまだ契約取ればいいじゃないですか?」


「ノルマをこなせば良いんだからそれ以上は面倒くさいし、それに会社にはまだ報告してないから俺がノルマ達成したのはバレてないし」


「相変わらずズルいですよね〜もっと真面目にやればいいのに」


「だって営業面白くないじゃん!」


「いやいや!仕事ですよ先輩!?」


山崎はもっともな反論を俺にする。

いや、もっともだよ、もっともだけどさ


「いいか?ウチの会社はもともとネットアプリとかイベントの会社なんだよ」


「そうですね」


「なのになんで俺たちはエナジードリンク売ってんだ!?」


「それはイベントでドリンク売るなら自社の売ろうってなって」


「そのせいで俺たちはエナジードリンクの営業だよ」


「おかげで俺たち働けてるじゃないですか?」


「違うんだよ、そうじゃないんだよ、おバカちゃん。俺はイベント会社に入社したんだから企画部とかメディア部に行きたいんだよ!」


そう、俺たちが働いている会社は元々スポーツイベントやそれに伴うアプリの開発などをしている会社だった。

それが事業拡大なんてことをしドリンクを売る部署を立ち上げそこに入社することになった。

だから山崎の言い分はもっともでそのおかげで俺たちは働いている。ドリンク様々だ。

しかし営業なんて入ったのは入社してから部署移動なる裏技があったからだったからだ、その部署移動のためにせっせとノルマ達成し成績上げて企画書なんかを作っては本社に送っている。



「あー、先輩部長にも企画書とか渡してますもんね」


「そうなんだよ、一応目は通してもらってるみたいだけど、絶対俺が考えた企画の方がこの会社を大きく出来ると思うんだよな!今は学校とか廃校でそのままのところが多い!そこを買ってエンターテイナー集めてフェスをする!大人の文化祭!!!場所を買っちゃえば後々考えたら安く済むし!!」


「それめっちゃ面白そうじゃないっスか!!」


「だろだろ!!」


はしゃぐのが好きな山崎は予想通り乗っかってくれた、大人の文化祭。

以前瑞稀の学校が廃校になるというのをニュースで観ている時に閃いた。これは使えると。

廃校は取り壊すのもお金がかかるから買ってもらうためにかなり安くしてるところもあるらしい、イベントやる度にかかるレンタル料、買ってしまえば金はかからない、そればかりか普段はレンタルで提供すればお金が稼げる、良いことづくし!

今回俺はこの企画書を提出している


「先輩そしたら今週末の人事異動発表めっちゃ楽しみじゃないっスか!!」


「そうなんだよ!やっときたよこの季節が、これで俺も晴れて本社勤務だ」


年に一回の部署異動の時期!

これを楽しみに俺は1年間全力を出していた。


「でも確か田中さんも異動願い出してましたよね?」


「はぁ!?田中も出してるのかよ!?」


「えぇ、確か人事の子が言ってましたよ」


田中、、、俺と同期入社のいけ好かないヤツだ、真面目ぶってお堅いヤツ、そのくせ上司に気に入られて社内でもモテるイケメン、しかも成績も同じくらい。だが最近は俺の方が勝ってる、まぁ大丈夫だろう。


…大丈夫だろうが、しかし


「あれ?先輩どこ行くんですか?」


俺は無言で立ち上がり念には念をと午後も休まずドリンクを売ることにした


「待ってろよ企画部!!すぐにそっちに行くからなー!!!」


「ちょ、ちょっと!先輩待ってくださいよー!!」


走り出す山崎も俺が忘れた試供品の箱を抱き抱えながら後に続いて走り出した。

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