イケメンと棚ぼた婚~惰性で妥協の婚約をしてましたが相手有責で破棄できた上に幸せな結婚までしちゃった私の話~

天田れおぽん@初書籍発売中

第1話 婚約破棄ですって(笑)

 私はビアズリー伯爵家の一人娘、アイリスと申します。


 春と言えば花咲き乱れる華やかな季節でもありますが、別れの季節でもありますよね。


「アイリス・ビアズリー伯爵令嬢っ! 私、セオドア・ウォーカー子爵令息は、お前との婚約を破棄するっ!」


「……」


 卒業式が行われる春は、婚約破棄のシーズンでもあります。


 式典の壇上で声高らかに婚約破棄を宣言したバカっぽい彼、セオドア・ウォーカー子爵令息は確かに私の婚約者です。


 自分で子爵令息と名乗ってしまう辺りで、お分かり頂けるのではないでしょうか。


 頭も悪いですし、他人様への気遣いもイマイチで……あぁ、後ろで婚約破棄待ちをしている男性たちがイライラしていますわ。


 当たり前よね。


 夜会の時間も迫っていますし。


 さっさと婚約破棄をして、新しいお相手とダンスをしなければいけませんもの。


 だから、こういった事は手早く済ませていきませんと……ああ、手際が悪いです。


「私は真実の愛を見つけたっ! いつも上から目線のお前とは、やっていけないっ!」


「ふふっ、アイリスさま。そう言う事なので。ごめんなさいね」


 無駄に見た目が良い金髪碧眼のセオドア・ウォーカー子爵令息の横で、ピンク色の髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ男爵令嬢が勝ち誇ったように笑みを浮かべています。


 でも別段……感じる所はございませんわ。


 婚約者を取られたと、悔しがる所なのでしょうけれど。


 正直、全く悔しくはございませんわ。


 だって。


 惰性だったんだもん。


 妥協だったんだもん。


 貴族の婚約なんて、そんなもの。


 好いた惚れたで決まるわけでもございませんし。


 私とセオドアとは、完璧に政略的な婚約でした。


 あぁ、もうセオドア呼びなどしてはいけませんね。


 ウォーカー子爵令息とお呼びしなければ。


 我が家には爵位、ウォーカー子爵家には商会、という財産があり、ウィンウィンの婚約だったはずです。


 それを一方的にウォーカー子爵令息が破棄した、という事になりますわよね。


 と、言う事は。


 婚約破棄に伴う違約金が発生します。


 我が家は貧乏ですの。


 当座はそれで乗り越えねばなりませんわ。


 慰謝料、吹っ掛けてやろうかしら?

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