第4話

 私のお腹の上が血で真っ赤。私の周囲、切断された腕とか足とかゴロゴロ落ちてる。

 首が切断された死体も転がっていて、

「うっうえええええええっ」

思わず嘔吐しそうになったんだけど、中身が出ないでえずくだけ。


「ねえ!白間咲良さん!君を襲おうとしていたこいつら、どうしよっか?」


 どうやら私を助けてくれた人が声をかけてきたみたい。

 その男の人は、私を殴りつけた男を踏みつけにしているんだけど、パッとこちらを見た瞬間、蕩けるような笑みを浮かべながら、こちらに向かって走り出した。


 手に持っていたのは鎌?草刈り鎌なの?

 それを地面に投げ出した男は、私の目の前まで来ると私の両手を握りながら、

「灰色!君は灰色なんだね!ようやっと見つけた俺のバディ!」

と、言い出したのだった。



 ツーブロックが入ったマッシュショートヘアが血だらけ状態の男は、血まみれの手で私の手を握りながら、

「灰色は超レアなんだよ!ソロで新人の灰色に会えるなんて!今日はなんてラッキーなんだ!」

と、歓喜の声をあげている。


 私を取り囲んでいた男たちのように黒の全身タイツみたいな格好ではなくて、黒のパーカーに黒のジーンズといった格好の男は、私を見下ろしながら、

「白間咲良が市営野球場に来てるって聞いて、興味本位で覗いてみただけだったんだけど、今日の俺はなんてラッキーなんだ!」

血まみれの顔で嬉しそうに微笑んでいる。


 え・・っと・・すでにもう・・キャパオーバーしています。


「そんな、イベント会場に来てたの発見みたいに言われましても・・・」

「イベント会場!さすがアイドル!上手い事言うね!」


 上手い事言ったかな・・理解が追いつかないんですけど・・・


「ああー・・まずったかな、早く殺さないから『ほろび』を呼んじゃった感じ?」

「はい?」


「咲良さんに暴力振るっていた奴らを細切れに切り刻んじゃったから、憎悪が四方に飛んじゃっていたんだよね?憎悪はあいつらの好物だから、こっちに進んで来ちゃっている感じっていうの?」


「すみません!もう!お腹がいっぱいっていうか、現状理解できないにも程があるっていうか?私は死んだんですよね?死んだからこんな世界に来ちゃっているんですよね?」


「いやいや、君は死んでないよ?」


 男は私の手を離すと、芝生の上に落ちていた草刈り鎌を手に取って、倒れた男三人の首に鎌を振り下ろしていく。


 助けて!とか、命ばかりはお助けをみたいな懇願は全く聞かないで、ザックザックとやっていくあたりが狂気だ。


「あ・・あのお・・さっき、ピエロさんが、この世界で死んだら、現実世界でも死んでしまうみたいな事を言っていたかと思うんですけど?」


 これが夢なのならば、ここでザックザックやっても問題ない。

 だけど、万が一にも、万が一にも、ピエロの言う言葉に信憑性が含まれているのであれば、これは、殺人現場に居合わせたのと同じ事になるのではないだろうか?


「ああー、『ほろび』ってエネルギーの塊なんだけど、この世界の中においては、俺らみたいな精神エネルギーを取り込む事で、自分のエネルギーにするし、自分の力にもしていくわけね」


「あの、『ほろび』ってなんなんですか?」

「ピエロが武器を使って倒せとか何とか説明してなかった?」


 ロケットランチャーを出しているくだりで説明をしていたかも・・・


「ここはね、不要なエネルギーを減らしていくための実験場なんだ。この世の中には災となるエネルギーの塊が数多あるんだけど、それを消滅させる事で、問題を先送りするって言うのかな、場当たり的なこの実験場を使って、日本の安全を守っていく的な?」


「ここで日本の安全が出てくるわけですか?全く理解できません、厨二的な発想により、世界が滅びるのを『ほろび』を倒していく事で防いでいくとか何とか言い出すわけですか?」


「超!理解早いじゃん!」

「超!理解早いじゃないですよ!」


 正直、頭が痛くなってきた。


 おそらくこれは夢、幻、明日になったらベッドの中で寝ていましたって言うオチに違いない。ファンのおじさんにナイフを向けられたのも、刺されたのも、夢!全部夢!


「あああ!3体もやって来ちゃったか!白の奴らも探知できてるんなら教えてくれたらいいのにね〜!」


「白?探知?」


「胸の周りが白い奴っていうのは、大概、探知能力があったりするんだよね。こいつらがこの世界で好き勝手やれていたのも、白の探知能力があったから。じゃなかったら、女に暴力を振るっている間に、とっくに『ほろび』に食われているだろうからね」


「えええ!」


 確かに!胸の周りが白の女の人たちが居たはずなのに!姿が見えなくなっている!そりゃ、頭がおかしい殺戮マンが現れれば、慌てふためいて逃げるわよね!

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