第14話 冒険者登録




 モニターは左半分が実況映像で、右半分がその映像を見ていた連中が打ち込んだテキストチャットログ。

 それがだ~~~っと、勢いよく流れるような仕組みとなっているお馴染みのものだった。


 どうやら、これが例のダンジョン配信らしい。

 画面に映っていた冒険者風の軽装鎧を着た快活そうな美少女がニコニコしながら配信していた。

 その手には魔道具と思しきカメラが握られている。

 要するにスマホ棒のような奴だ。






【実況配信映像――】


G〉〉


 おい、そろそろ行くぞ。



Y〉〉


 あ、ちょっと待ってよっ。

 今配信し始めたばかりなんだから!


 〉〉〉〉




 映像を見ていた冒険者ギルドの連中の間からどっと笑い声が漏れる。

 同様に、モニター右側のチャットログも物凄い勢いで文字が流れて行った。

 閲覧者数を確認すると、一千万人を超えていた。

 どうやら相当人気のYuiTuberらしい。


「ふむ。なるほど。こういうのが流行っているのか」


 ユーリという女性の他にも何人か仲間がいるようで、そいつらの頭とか肩にも、カメラっぽいのがくっついていた。おそらく、パーティーメンバー全員、何かしらの映像を記録しておくつもりなんだろう。あとで編集して配信したり、ダンジョン攻略に役立てたりするために。


 彼らはその後も何かぺっちゃくりながら、襲ってきたモンスターを屠りながら、実況映像を続けて行った。


「俺たちもああいうのをやった方がいいのだろうか?」


 顎に手を当てぼそっと呟く俺。


「ご主人様のなさりたいようにされたらいかがでしょうか?」


 クリスティーナがそう、進言してくる。


「まぁ、いずれな」


 そう答えたあとで、俺たちはギルドの受付へと向かった。

 この冒険者ギルドはかなり巨大な施設らしく、入ってすぐのところが酒場のような待合場所となっていた。

 そして、その左右の壁には掲示板があり、いわゆるクエスト一覧が張り出されている。


 入口からひたすら前へ歩いて行って、その突き当たりとなる場所にギルド受付が存在していた。

 冒険者が取ってきた素材などの買い付けを行ってくれる場所は、どうやらこのギルドの隣に併設されたギルド直轄の交易所が担当となっているようだ。


「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」


 受付カウンターへと歩を進めた俺たちに、比較的若そうな美人ギルド嬢が応対してくれる。


「すまないが、冒険者登録をお願いしたいのだが」

「あぁ、初心者の方ですね。わかりました。それでしたら、手数料として銀貨三枚を提示していただけますか?」

「わかった」


 俺は四人分、計十二枚を払う。


「では次に、能力鑑定を行います」

「能力鑑定だと?」

「はい」


 そんなことまでしないといけないのか?

 確か、ゲームでは特に何もせずとも登録が完了したはずだったが。


「その鑑定とやらはいったい何をするんだ?」

「えっとですね、魔法の天秤球というものを使います」

「天秤球?」


「はい。いわゆる、天秤ですね。魔道具である天秤の片方に水晶球を載せ、もう片方には冒険者証となるステータスカードを載せます。その上で、登録者が水晶球へと手をかざせば、あとは自動的に、水晶や秤を通じてカードにステータスが刻み込まれるという仕組みとなっております」

「なるほど」


 そう頷いては見せたが、これ、やばくないだろうか?

 もし、そのステータスとやらに、俺たちの身分とか能力がすべて記されてしまったら、それを確認したギルド職員が大騒ぎしかねない。

 何しろ、俺はラスボスだからな。


 一人悩んでいると、ギルド嬢が何やら提示してきた。


「これは?」

「はい。これは私の冒険者証です。一応職員も全員、登録することになってまして。新規登録者さんにご案内するときにサンプルを見せれられるようにしているんです。その方がわかりやすいでしょう?」

「なるほど」


 見せてもらったカードには、単純に筋力などのステータスがS~Fで記されていた。それ以外に書かれているのは、取得している魔法とかスキルとかだけだった。

 身分とかそういったものはなく、敢えて言えば、戦闘職のクラスとか生産職のクラスとかそういったものが書かれているだけである。


「ふむ。これなら大丈夫か」


 俺は頷くと、背後のお共を先に登録させた。

 その結果――ギルドが大騒ぎとなった。



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