第18話 マジック" レス "マントがバズる
冒険者ギルド。
受付カウンターでアイテムを算定して貰っているパーティがいる。
スピードスターことローワのパーティだ、受付嬢のソアラと話している。
「うわー、見たこと無いアイテムが有りますね。
調べます。
ちょっと時間掛かるかも。」
「やっぱり、ソアラが見た事無いなら、金額に期待しちゃうなぁ。」
ローワがニコニコしている。
冒険者ギルド長のトギがローワ達に近付く。
「ほう?
新ダンジョンの成果みたいだな。
レアアイテムも有りそうだ。
何階迄潜った?」
「聞いて驚くなよ、5階層まで降りたよ。」
「5階層…。
スワンのダンジョンでは5階は久々だな。」
トギは記憶を思い出すように上を向く。
「そうだよな、俺らも4階でボス部屋かと思ってたんだ。」
「まだ、5階も序盤で引き返したが、もしかするとまだ先の階層も有りそうでしたよ。」
仲間の僧侶が言う。
「今回のダンジョンは、時間掛かるかもな。」
とローワ。
「そうそう、話しは変わるが、明日のナカタ橋開通な、お前達、ゆっくり通過するのか?それとも先頭希望か?」
「なんで、他のパーティの後ろを行くよ。先頭希望に決まってるだろ。」
冒険者パーティは目立ちたがり屋が多い。
当然、冒険者パーティの中での先頭で渡りたい者達が出て来る。
お互いのランクやレベルは冒険者同士で把握しているので、自然、強いパーティから順番が並んでいく。
「"幻影"のパーティが明日ニューランドに渡るって言ってたぞ、今日のウチにどっちが先か自分らで決めとけよ。」
そう言って、トギがカウンターを離れる。
「ちっ、仕方ねぇ、"幻影"と模擬戦でもやるか。」
3時間後
"スピードスター"と"幻影"の両パーティが、スワン郊外の草原で対峙している。
どちらが、明日開通のナカタ橋を、冒険者の中で一番に渡るか。
その一番を決める為に対峙していた。
しかし、スピードスターのパーティは4人、対する幻影のパーティは7人。
どの模擬戦で決着をつけるか、決まらずに難航していた。
シンプルに戦闘案。
スピードスター組は、4人対4人での戦闘を主張。
ローワ組は7人対4人での戦闘を主張。
お互いの主張が噛み合わず、別の模擬戦を模索。
駆けっこ、かくれんぼ、紙相撲、将棋、リバーシ、的あて等、どの案も否決。
全員がイライラモヤモヤと対峙を続けている。
時に罵倒し、時におしりぺんぺんを発射している。
近くを通り過ぎる冒険者達が、
「さっきからあの人達、何やってるの?」
「ほっとけよ、あれで、仲良いんだから。」
しばらく見物されて、呆れられて、通過して行く。
まあ、開通前日のアップが万全な2つのパーティだった。
商人ギルドでは、新商品の売り出しに人が集まっている。
ギルド長のフクロとイケメンの職員が、ギルド内の冒険者パーティに次々と声を掛けている。
「あらっ、そこのお綺麗な僧侶の貴女。
あなた魔力がだだ漏れしてますよ。」
「えっ?
魔力がだだ漏れ、見えますか?」
「見える見える。貴女程魔力が溢れていると、すぐに分かりますよ。
素質抜群系。」
「確かに、私レベルの上がり方が他の娘と違う気がするの。
分かる人には分かるのね。」
「ところで、貴女程の冒険者ならナカタ橋を渡ってニューランドへ、夢を求めて行くでしょ。
ア ドリーミー フューチャーだもんね。」
「そうなのよ、ニューランドでいっかくせんき…、いえいえ、夢を求めて行くの。」
「そう、ならこのマジックレスマント、貴女くらい魔力がだだ漏れしていると、魔力を抑えても抑えてもその魔力に反応して魔魚が来るかもよ。
だって、魔力量が凄いもの。」
「そうなの、魔力を抑えるのが苦手で、なんせ魅力がだだ漏れだから。」
「だったらマジックレスマント!
これで貴女の魅力を、いいえ魔力を隠して。安全にナカタ橋を渡りなさい。」
「買うわ!」
「はい、マジックレスマント1着が銀貨3枚!
今なら2着で銀貨5枚ですよ。!
柄は4種類
人気の柄はすぐ無くなりますよ!」
「キャ~。」
「ちょっと割り込みしないで!」
「きゃー。」
ってな感じで、商人ギルドがバズったらしいです。
領主館、ロフの執務室にロフとテイとうどんが顔を揃えている。
「さすがフクロ、抜け目無いね。」
クックックとロフが笑いを堪えている。
「いや、商才が凄いな…。」
うどんは素直に感心する。
「しかし、そのマジックレスマント?
魔力を隠せるのか。
思いついたフクロの目の付け所が素晴らしいね。」
ロフの言葉につい頬が緩むうどんだ。
「思いついたのはうどん様です。
フクロのはアイデアをパクった商売です。」
「パクったなんて、
提携?
フレンドショップ?
どんな言葉が適当か分からないんですけど。」
「なに?
うどん様のアイデアなのですか!
ほほー。」
「しげしげ見ないで下さい。
たまたま思いついただけなので、
それに、フクロさんの知識と人脈が無かったら、昨日の今日で商品化出来ませんし。」
「うどん様、マジックレスマントの売り上げ金の一部も、配分がありますね。また財布が膨らむなぁ。羨ましいなぁ〜。」
テイがうどんをからかう。
「きっとそのマジックレスマント、ナカタ橋に関係なく売れそうな気がしますよ。魔法職、僧侶系は女性が多い、概ね体力が前衛系の半分程度ですからね。」
「…?」
ロフの発言は意味が理解出来なかったが、テイがニヤリと笑ったのはうどんも気付いた。
「明日の打ち合わせをしましょうか。」
ロフが機嫌良く言う。
3人で明日の開通イベントの打ち合わせを行った。
無事に打ち合わせが終わる頃。
「私の願いを聞いてくれて、ありがとうございます。
明日はよろしくお願いいたします。」
「あなたのマジックレスマントのアイデア、子供達の事を親身に考えた結果、辿り着いた商品だったんですね。
頭が下がります。」
「からかって、すみませんでした。」
立ち上がったテイからギュッと抱擁を受けた。
(オッパイが顔に当たってるが、これ、テイさんわざとだな…。)
テイに抱擁されて、硬直したうどんを見て、ロフが笑っている。
出歩けないうどんの代わりに、ユニがハチナイの見舞いに行ってくれた。
厨房で作って貰ったお弁当も、差し入れとして托した。
領主館に帰ってきたユニが言うには、ハチナイが部屋で剣術の素振りをしていたらしい。
医師の言葉より遥かに回復が早い。
(さすがお師匠どのだな。)
ユニによると、元気になったハチナイがうどんに折り行ってお願い事があるらしい。
「詳しくは、明日お屋敷に伺って話しますでな。」
との伝言があったそうだ。
まだこの時は、明日犯罪に加担する事になるとは、思ってもみないうどんだった。
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