冒険者うどん 川の向こうの世界へ

桑の春

プロローグ 世界を分断する呪い

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「魔道士カラの名において通達します。


 一ヶ月後の新月の日、とある時刻に私は世界を呪い、世界を分断する事にしました。


 世界中に溢れた恨みを集めて、呪いを組みあげました。

私の魔力が及ばぬ場所はありません。


川を、私が組んだ呪いで封じ、

人の往来を川で分断する事にしました。


 橋という橋を全て壊します。


 川を渡ろうとする者に死を。


 だが私にも、世話になった者への情が残っています。

生きていく為に必要な飲水は許します。

用水路もしかり。


 私の呪いが発動する前に必要な準備をしなさい。


 既に私の呪いは完成しています。

定めた刻限に必ずや発動します。



 離れ離れになる前に、家族や思い人の元へ帰りなさい。

 私も命を燃やして家族の元へ帰ります。」

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 領民学校の教室で、10歳位の子ども達を前に、若い女性の教師が授業を行っている。


「魔道士カラが500年前に各国に送った文章よ。この呪いが発動して、恐ろしい魔魚のいる川は危険な場所になったの。


質問がある人は挙手。」

 

ハイ、ハイ、とほとんどの子が手を挙げる。


「じゃあ、ソウヒ。」


「はい! 先生は川で人が死ぬのを見た事がありますか?」


「先生はありませんが、知り合いの冒険者さんに見た人がいます。

魔魚によって体にいくつも穴があくそうです。」

 

それを聞いて子供達は怖くてザワザワする。

 

 ハイ、ハイ、と幾つもの手が挙がる。


「次は、カンシ。」


「回復魔法で治せないんですか?」


「カラが掛けた呪いによって、川では魔法が無効化されるのです。

なので、どんな魔法も発動しないのです。」

 

えー、魔法発動しないの~。


「助けようとして手をのばすと、その手も魔魚が貫くそうです。」


「貫く?って?」


「穴が開くって事ね。」


「じゃあ、先生、魔魚を見た事がありますか?」


「先生も川に近づかないので、魔魚を見た事はありません。

 でも、教科書の34ページの絵を見ましょう。


 川には色んな種類の魚が住んでいます。

 普段は大人しく、ただの魚として水中にいます。

人が近づいた時だけ、魔魚になって襲うのです。」

 

ハイ、ハイ、とまた手が挙がる。


「では、ソスイ」


「世界中の橋を壊すって、どんな呪いなんですか?」


「ソスイ、良い質問です。川は呪いによって魔魚が邪魔して渡れなくなりました。

 呪いは魔法の一種だけど、それだけでは橋は壊せません。

 だから橋を壊したのは、呪いとは別の攻撃魔法だと考えられています。

 魔道士カラには世界中に協力者がいたかもしれないと言われています。

 でも、誰一人捕まっていません。」


「魔道士カラも捕まってないの?」


「姿を消した、二度と姿を現さなかった、

と古文書に書いてあるので、捕まってないんでしょうね。」

 

時の鐘が鳴る。


「川には近づいてはいけない事、分かりましたか!」


「ハイ!はい!」

と皆が大きく返事をする。


「では、今日の授業はこれで終わります。礼。」


「ありがとうございました。」

と全員で唱和する。

 

 カラってさー、悪いやつだね~、等と、カラに対する子ども達なりの批判をしている。


 

500年前、カラの呪いで流通や人の移動が分断され、

各領地の連携が取れなくなった

各国・各種族はあっという間に弱体化し、

大きな国は、小さな領土に分裂していった。




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