第36話 廃墟の教会①

 俺はロクサリーヌに確認してから行動しようと思っていた。俺の推論を元にどう動くか、ロクサリーヌに選択してもらう必要があると思ったからだ。


 俺についてくるなら一緒に行動したらいい。けれども、どう転ぶかはロクサリーヌに話してみないと分からない。そう思って俺はロクサリーヌが目を覚ますのを待っていたんだが……


 休めるときに休んでおこう、と思った俺は、ロクサリーヌが起きたらすぐに呼んでほしい、とお願いして仮眠をとることにした。



 ロクサリーヌが眠りから覚めたと知らせを受けて、俺はすぐに会いに行った。部屋に入った俺をみて


「ガザセルさん……」


 ロクサリーヌは呟いて話し俺から目をそらした。俺はロクサリーヌに話しかける。


「宣託は覚えてるか?」

「はい。おぼろげながらですけど、覚えています」

『闇の刻、ルクサンバーヌの町にて、あの悪夢の地獄が蘇る』ってさ。聞いたことがない声でロクサリーヌがしゃべってた。あれが宣託ってことでいいのか?」


 俺はそう聞いてみた。ロクサリーヌは無言で頷いた。「そうか」と答え、俺は続ける。

「お前はどうしたい? この宣託は恐らくお前の一番会いたい敵の登場を知らせるお知らせだ。恐らく間違いない。ルクサンバーヌの町に先に行って待つか? それとも探し物クエストで見つけた廃墟の教会に俺と一緒に行ってみるか?」


「あの廃墟の教会に何があるって言うんですか?」とキョトンとした顔をしてロクサリーヌは首を傾げた。

「今回の戦いのキーアイテムがあるかもしれない。全て予想の域を出ない。時間の無駄だと思うなら俺1人で行ってくる」と話した。

「どういう状況なんですか?」と聞いてきたロクサリーヌに俺の予測を話したのだった。



「そんなものがこの街にあるって言うんですか!?」


 俺の予測を話したところロクサリーヌは興味津々の様子で聞いてきた。


「あの廃墟の教会は管理されているとみて間違いない。俺たちがあの教会の地下の部屋に入ったらすぐに人が現れた」

「それが何かおかしいんですか?」

「考えてみてくれ。廃墟の教会に人がすぐにくるなんてことがあると思うか? あのおっさんは偶然を装っていたが、考えてみればそこがもう既におかしいんだよ。どう考えても不自然だ」

 難しい顔をしてロクサリーヌは考え込み、唇をかみしめて


「ルクサンバーヌの町にすぐにでも行って避難するように私は訴えたいです。私の宣託はその場にいなければ悲劇を回避できるから。けど、本当に宣託の危機がカオスリッチなら私1人じゃ倒せない」


 と言った。ロクサリーヌは目をつむって数秒考え、目を開きこう言った。

「だから、私はガザセルさんの予測に賭けます。混沌の不死王カオスリッチを倒せるならその可能性に賭けたい。避けてるだけじゃ、何の解決にもならないですから」

 俺は大きく頷いた。

「決まりだな。早速、あの廃墟の教会に行くぞ」

 と俺はロクサリーヌに笑いかけ行動を開始した。



 俺たちは闇に紛れ、この魔法都市ルクスベルにある廃墟の教会の前に来ていた。あの魔法学校襲撃事件であれだけの建物が破壊されたというのに廃墟の教会は以前ポコタが来たときと同じままだった。やはり怪しいと言わざるを得ない。


 俺の予測が正しければ、思い通りの展開になるはずだ。そう考えて廃墟の教会の壊れた扉を開けロクサリーヌと一緒に中に入った。


 そして教会の中の裏手にある地下への扉を開いた。ロクサリーヌが光の魔法で辺りを照らしてくれる。そして階段へ通じる扉を下の階に移動した。


 再び『逆さの十字架』の前に立つ。両手を強化するイメージをして


「これからどうなると思う? 俺の予測が正しければ……」


 と言って『逆さの十字架』を両手で殴りつける。連打だ。壊すつもりだからな。この『逆さの十字架』は。


 けれどもびくともしない。なんだ、この頑丈さは? ちょっとおかしな硬さしてるじゃないか。壊しがいがあるなと俺は思った。


「何をしているんだ! 君たちは!」と前、俺たちがここに来た時と同じ人物が現れた。

「予測通りだ。誰かが現れると思ったんだ。また、おっさんだったのはびっくりだが、予想は当たってたって訳だな。一安心だ」と言って俺は笑った。


「何を笑っているんだ、君は! ここは立ち入り禁止だと言っただろう。さぁ、この教会はいつ壊れてもおかしくない。危険だから、ここから出るんだ!」

「なぁ、あんた。なんでこんな廃墟の教会に何度も現れるんだ?」

 俺は不思議そうに聞いて相手の返答を待つ。


「君が、こんな深夜にがんがん音をたてるからだろう? 寝れないこっちの身にもなってくれ。それのどこがおかしいっていうんだ? さぁ帰った、帰った」

 と、このおじさんは迷惑そうな顔をして出て行けという。


「違うよな? 俺たちが以前ここに来たときあんたは『なんでこんなところにいるんだ? 君たちは?』と言ってたよな? よく考えればさ。おっさんこそ、なんで俺たちがここにいるのが分かったんだ?」


 俺はニヤリとして問いかけた。

「俺はわざわざこの地下への階段の入口の扉を閉めたんだぜ? そしてこのおかしいくらい長い地下への階段だ。言うほど大きな音なんて地上に届く訳がないだろう? こんな辺ぴな場所にある廃墟の教会の誰もいない地下のこの部屋に、何度もやってくるあんたこそ一体誰なんだ? 俺が興味あるのはこの『逆さの十字架』だ」


 と『逆さの十字架』をポンポンと叩いてみせた。すると迷惑そうな顔をしていたおっさんの顔がすっと真顔になった。俺の強化の準備は万全だ。


「お前みたいな奴が『逆さの十字架』の存在を知っているというのか? これは想定外だ。フハハッ。これはあまりよろしくない事態だ」


 おっさんはそう言って殴りかかってくる。それを全て防御してみせた。この展開も予想通りだ。俺は気合をいれて

「あんたが誰なのか、はっきりさせようじゃないか!」

と叫んでいた。

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