第29話 お化け屋敷の探索クエスト⑥ ☆ロクサリーヌ視点☆
☆ロクサリーヌ視点☆
私はペトリシアの魂を救うためにこの子の頭に手をおいて、神聖魔法を唱える。
「我が研究対象に何をする! キサマその詠唱を止めろ!」
とレイスは騒ぎ攻撃魔法を唱えてきたので私は詠唱を中断した。そのまま攻撃しようとしてきたレイスを
「捕まえられる位置に来てくれたのは礼を言うぜ?」
とガザセルさんはニヤリと笑った。
ペトリシアも集められた子供たちも村の人々も、みんな私と同じ犠牲者だ。カオスリッチに利用された子供たちだ。こんな可哀そうな子たちを生まれさせない、これからは絶対にさせない。だから私は誓う。
「レイス、あなたには消えてもらう」
と私は怒りを込めて言う。
「お前が我に勝てるというのか?
とレイスは私を
「なに1人で勝った気になっているんだ? レイス。お前の相手はロクサリーヌだけじゃない。俺もいる。困るんだよな。俺たちはパーティーだ。2人で1組なんだよ。その忘れやすい頭で覚えてくれ」
とガザセルさんは言ってくれた。
「ああ、悪かったね。君のことは忘れていたよ。忘れそうになるくらいその研究対象はだいじなんだ。妖精としてペトリシアを再び蘇らせるのに、どれだけ苦労したと思っているんだ!」
レイスは怒っているけどそれは自分の研究のため。この子を心から心配してのことじゃない。
「永遠にこの世にいてもらうなら妖精の方が力が強まるんだ。神聖魔法だって積み重ねれば何が起きるか分からない。最悪、消えてしまうかもしれないだろう! 君たちなんかと比べものにならない。これは我の英知の結晶なんだよ!」
レイスは1人で叫んでいる。
「『これ』って何よ。この子はモノじゃない!」
私の怒りに呼応するようにガザセルさんは魔法を唱える。
「我がつかさどるは炎の演舞」
ガザセルさんの両手両足に再び炎が宿る。そして足刀でレイスを蹴りつけ、吹っ飛んだレイスの顔面めがけて思いっきり拳を叩きつけた!
吹き飛んだレイスが壁をすりぬけてもガザセルさんは構いもしない。壁を殴り破壊して、そのまま拳の連打をレイスに加え続ける。
「絶対に
喋りつつもガザセルさんの拳は止まらない。ガザセルさんの炎が宿った拳で攻撃を受けていたレイスは
「こ、こんなことが……。いやカオスリッチ様が、こ、こいつらを殺してくれる。我の、う、恨みはカオスリッチ様が。カ、カオスリッチ様が晴らしてくださる……!」
と最期にいった。
「これで終わりだ!」
そう言ってレイスをガザセルさんは殴りつけ、壁もろとも粉砕した。レイスは虚空に手を伸ばし、なにかを
◇
レイスが消えたあと私は考える。話を聞いた限り人に恐怖を与えればこの子の能力で、魂が青白く光ったり味が付いたり、不思議なことが色々と起きたのね、と思った。
もしかしたらペトリシアに抜き取られた魂は死んでいるけど生きているってことになるのかしら? ……自分で考えておきながら矛盾してると思う。それくらい特別な能力だったからこそ、レイスの研究対象になってしまったのかしらと考えた。
お化けが怖いなんて言ってられない。それにペトリシアはちっとも怖くない。私がこの子の悪夢を終わらせてあげたい。願うことはただそれだけ。
あのレイスは悪意をもって、無力だった幼いペトリシアと契約し利用した。だからこそ私は思う。この子はもうこの世界に縛られていてはダメだと。もう眠りにつかせてあげるべきだと。
死んでいた方が幸せだった、と言われてもおかしくない生き方をペトリシアは強制された。だからペトリシアに神聖魔法を私は唱えようとした。
けれど、私が神聖魔法を唱えるまでもなく
「お姉ちゃんって、あったかいね」
と、そう笑ってペトリシアは淡い光に包まれた。怨嗟のレイスはガザセルさんが倒してくれた。だからレイスの作った魔法陣は消えてしまったのだろう。そのせいでペトリシアに結ばれた理不尽な契約が終わった今『永遠にこの世界にいる』ことができなくなったのだとしたら……。
「ごめんね、ひどいよね。こんな自分勝手な仕打ちなんてないよね」
と私は泣いていた。こんな子たちをこれ以上、この世界に生まれさせる訳にはいかない。カオスリッチを倒すんだ、と思った。ペトリシアは
「お父さんとお母さんのところにいけるかなぁ? みんなが泣いてる理由はなくなるのかなぁ?」
と言った。
「きっといけるさ。泣いてる理由なんてものを見つけたら、お前の代わりに俺がぶっ飛ばしておいてやる。安心しろ。みんなで笑える世界にきっとなるさ」
とガザセルさんが微笑んだのを見て
「そうよ。そういう世界にきっとしてみせる。私すっごい頑張っちゃうんだから!」
と私もペトリシアに答える。
「お父さんにもお母さんにもきっと会えるわ。みんなとも仲良くするのよ?」
「うん、お姉ちゃん」
と笑ってペトリシアから生まれた淡い光が、ふわふわとたくさん空へ向かって飛んでいく。その数えきれない光と共にペトリシアは微笑んで消えていった。ペトリシアの儚い笑顔を忘れられず、私は涙が止まらなかった……。
◇
事件は解決し先生たちに今回の事件の報告もすませた。嘘をついていた神父さんは、北方の小さな教会に行くそうだ。「帰ってくることはないでしょう」とランネル先生やギルドの受付の女性は言っていた。
「危険な目に合わせちゃってごめんね」と先生もギルドの受付の女性も申し訳なさそうだった。
「無理にこのクエストを私が受ける、って言っちゃったんですから気にしないでください。私の方が反省しないとです。でもガザセルさんがなんとかしてくれますから、きっと大丈夫です!」と私は答える。
カオスリッチは許せない。けれどもいつもと変わらない日常が戻ってくる。ガザセルさんと私とクラスのみんなの日常が。そしてペトリシアの魂の安らぎを心から祈る私がいた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます