第25話 お化け屋敷の探索クエスト②
「いや、私が聖女様がいたら楽勝だ、なんて言っちゃだめよね。アドバイザーなんだし……」
と真顔で本音をもらしているお姉さんだ。このお姉さんは独り言が多いな。そのまんま聞こえてるけど、と俺は思った。
「そうね。探索クエストだから戦う必要はないわ。お化けを見かけたらすぐに逃げなさい。脅威がそこにある。それが分かればその情報をもとに正式に討伐クエストになるわ。報酬も大幅にあがるのよ。それをケチりたかったとしか思えないわね」
「つまり、討伐クエストはまだでていない?」
「その通りよ。聖女様がいるならまず大丈夫でしょうけど、気をつけなさい。死んでしまったら、後悔なんてできないのよ?」
「肝に銘じておきます」
とだけ言って俺は冒険者ギルドを後にした。あの神父、討伐依頼は他の冒険者にだしてるなんていってたくせに嘘をついてたのか。
本来なら断るべきクエストだと俺は思ったが、ロクサリーヌがやる気になってるのを止めるのも可哀そうかなと考えた。一応、逃げてもいいと保険はかけた。ロクサリーヌと一緒に逃げればいいだけなら、人数も少ないしなんとかなるだろう。なるようになってみるのもいいか、今回はロクサリーヌに任せてみようと俺は思った。
そのお化けは夜になると現れるらしい。ダンジョンだといつ行っても夜みたいなものだからまた違うけども。準備して仮眠をとって、俺たちは夜まで待つことにした。
ロクサリーヌは1人で「お化けは
そして夜になりましたという訳で、俺たちは屋敷を探索する。
俺の後ろをぴったりとついてくるロクサリーヌをみて
「大丈夫か?」と俺が聞くと
「大丈夫です。アンデッドの依頼は受けたら絶対に断りません。任せてください」
と、震えて俺の服をつまんでいるが、ロクサリーヌはやる気は満々そうにみえる。けれども気負いすぎだなと俺は思っていた。
とりあえず調べた部屋は扉を開けっぱなしにするようにして、探索を開始した。空いてる扉の部屋は探索済みという大まかなイメージをつけるためだ。そして右の部屋から順番に漏れがないように調べていった。
そして4つ目の部屋の扉を開けたとき、泣いてる透明な女の子の姿が見えた。お化けの女の子か、と俺は思い警戒した。その子は部屋の中を自在に飛び回った。そして
「お姉ちゃんも飛んでみる?」
とロクサリーヌをみて楽しそうに笑ったのだ。
けれども、お化けの女の子に話しかけられたロクサリーヌはきっちり気絶した。噂通りかよ! と内心呟く。警戒レベルを一気に俺は引き上げる。
「ロクサリーヌ! 気絶してる場合じゃない! 起きろ!」
とロクサリーヌの頬をなんどか軽く叩いた。
「う~ん、お化け怖い」
「お姉ちゃん大丈夫?」とお化けの女の子は聞いてきた。話しかけてきた女の子は、襲ってこないでロクサリーヌの心配をしてきた。
「あぁ、大丈夫だ。気絶してるだけだから」と女の子に答える。
「ロクサリーヌ、起きろ!」と頬を叩いていたら、「う~ん」と、やっとロクサリーヌが気づいた。
「あ、ガザセルさん。私ってばお化けの女の子の夢を見たんです。女の子が飛んでたんですよ! しかも『お姉ちゃんも飛んでみる?』なんて言いだしてびっくりしちゃいました」
「あぁ、びっくりしてほんとに気絶してたんだけどな。お前。俺がどれだけ焦ったと思ってる」
とロクサリーヌに話しかける。
「またまた、私が気絶するわけないじゃないですか。聖女ですよ? 私がいくらポンコツ聖女と呼ばれていようと……」
「お姉ちゃん、もう気絶しないでね?」
ともう一度、女の子はロクサリーヌに、にっこり話しかける。
ぎぎぎと音が聞こえそうなくらい不自然に頭をゆっくり動かし、ロクサリーヌはお化けの女の子を見た。
「はぅっ」
と言い残し、また気絶した。お前、絶対狙ってやってるよな? と思った俺はロクサリーヌの頬をちょっと強めに叩いた。そしてまた気づいたロクサリーヌはお化けをみて気絶する。
とまぁ、こんなやり取りを6回くらい繰り返したせいだろうか、ロクサリーヌは頬を真っ赤に染めている。決して愛でも恋でもない。けれども、この女の子のお化けをみても気絶しなくなった。異世界だしお化けも慣れなんだなと俺は思った。
「どうしたの? なんで気絶しちゃったの?」
とお化けの女の子は話しかける。
「気絶してないわよ? ちょっと意識を失っただけ」
それが気絶するっていうことなんだけどな、と俺は心の中でツッコミをいれた。
「あなたのお名前はなんていうの?」
ロクサリーヌは話題を無理やり変えて女の子の名前を聞いていた。
「ペトリシア。あたしはペトリシアっていうの」
とお化けの女の子は答えた。
「いいお名前ね。私はロクサリーヌ。この人はガザセルさんっていうの。よろしくね」
ペトリシアを見てロクサリーヌは微笑んだ。警戒心も解けてしまったようだ。実際ロクサリーヌが気絶して気づいての一連のやり取りを、実に6回も
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