第24話 お化け屋敷の探索クエスト①
残るは『お化け屋敷の探索クエスト』だ。正直なんだこりゃ? である。まぁ、アンデッドがいる世界だからお化けもいる。骨が歩いてるんだから、それが普通の異世界だ。
隣を見ると顔面蒼白でクエストを確認しているロクサリーヌがいた。
「どうかしたか?」と俺は聞く。
「い、いえ。なんでもないです」と震える声でロクサリーヌは話す。そういえば、ロクサリーヌにお化けをみたら気絶するっていう噂があったな。
聖女なのにご冗談をとか俺も思っていた口だ。割とあの噂が当たってたのかなと思った。まぁ、当たってても問題ないだろう。気絶しても抱えて逃げたらいい話だからだ。
別にお化け見て気絶するくらい、死なないんだからいいんじゃないと思っていた。お化けがいたとしても命の危険がある訳でもないだろうし、フラタルム魔法学校が認めたクエストなら安全ってことだろう? ここはノーストラム墓地じゃない。
肝試しのお化け屋敷の探索、そういう認識をしていた俺だった。
◇
まずは依頼者に会いに行った。教会の神父さんが依頼人だった。
「本来なら私が出向いて、アンデッドを葬り去らないといけないんだけども。なんといっても腰痛がひどくてね。あんまり長い時間は立ってられないんだよ。よいっしょっと」
と腰に手をあてながら神父さんは立ち上がる。
「俺たちはお化け屋敷の探索する、って聞いてきたんですけど、討伐クエストなんですか?」
「いや、違うよ。困るなぁ君、そんな言い方をされては。まるで私が魔法学校と冒険者ギルドを
なんだろう? この神父さんを責めたつもりはないのに俺の言ったことが気に障ったのかな、と思った。
「でも、ご自分で『アンデッドを葬り去らないといけない』って言ってたじゃないですか。それなのに討伐クエストではないんですか?」
「それは私なら討伐するってことだよ。君たちが討伐する必要はないんだ。どういうアンデッドがでてるか調べてくる、そういう依頼内容だからね。危険なことはせず見てくるだけでいいんだ。討伐は他のランクの高い冒険者に正式に依頼してあるから大丈夫だよ。くれぐれも無理はしないでね」
と、この神父は早口でまくし立ててきた。
この依頼は断った方がいいんじゃないか、と俺は思った。実際に会って話してみた感じからすると、この神父は信頼できる人じゃない、と俺はなんとなく思った。なんとなくの勘だからなんともいえないが、直感はバカにできないって言う人もいたしなぁ、と思った。
「ちょっと相談させてください」
神父に話した。俺はロクサリーヌに耳打ちして
「ロクサリーヌはどうする? 俺はこの依頼は断った方がいいんじゃないかと思うんだけど」
とこっそり話をした。
けれども、ロクサリーヌは俺の肩を手でたたき
「大丈夫です。アンデッドは放置してはおけません。探索しましょう。なんなら討伐してきましょう!」
と強気に言い放った。自己主張をあまりしないロクサリーヌのこの自信だ。こんなことは今まで言ったことがなかったし、信じてみるのもありかと俺は思った。お手並み拝見といこうじゃないか。
「分かりました。神父さん、探索クエストということで引き受けます」
と俺は探索クエストとして受けると答えた。討伐クエストはそもそも受けられないけど、探索クエストと強調することで最悪、逃げだしても問題がないように保険をかけた。
「助かるよ。魔法学校に苦情を言う必要もなさそうだし、君たちを誤解していたようだ。それじゃぁ、しっかり頼んだよ」
と、神父は、ほっとしたようにため息をついている。この神父の言い様を見て、この依頼は断るべきだったんじゃないか? と思っている俺もいた。ロクサリーヌは「アンデッド
この依頼を受けると決めた時から、どうも落ち着きがないロクサリーヌだ。緊張してるのか、お化けが怖いのか、大丈夫か? と俺は心配していた。
どうにも神父の態度が気になった俺は、冒険者ギルドに行って聞いてみることにした。受付のお姉さんに話しかける。
「魔法学校で探索クエストを受けたんですけど、ちょっと質問してもいいですか?」
「はいはい。学生さんが今日はどうしたの?」
「探索クエストって聞いて依頼人の神父さんに会って話を聞いたんですけど、俺はこれって討伐クエストなのかなって思ったんですよ」
と言って掲示板に貼られていたクエストを受付のお姉さんに渡す。
「どれどれ。あぁ、これね。ってことは君はフラタルム魔法学校の生徒さん?」
「ですです」
と俺は答える。受付のお姉さんは困った顔をしている。なんか変なことを言ったか? 俺と思っていた。
お姉さんは
「これね。以前はこのお屋敷でお化けが出たなんて噂はなかったのよ。けどね。空飛ぶ女の子が現れたから逃げてきた、って報告があったの。これってお化けだと思うのよね。現状だと被害者はでていないからまず調べるって目的で探索クエストになったの」
と眉をひそめながら話すお姉さんだ。
「本来なら討伐クエストが私は妥当だと思う。だからおかしいと思ったら断ってくれていいわよ。そういう勘に従うのも、冒険者にとってはとてもだいじな能力なの。死んでも全て自己責任って言われちゃう。それが冒険者っていう職業よ? 絶対に安全だなんて保証はいつだってないんだからね」
とため息を吐きながら答えるお姉さんだった。
「俺もこのクエストは受けることはないんじゃないかな、と思うんですけど聖女様がやる気満々なんですよ」
「聖女様がパーティーにいるの? 聖女様がいるならアンデッドなんて雑魚も同然、
と受付のお姉さんからは、ほっとした雰囲気がでていたのだった。
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