私と東京の100日間戦争

柊 蕾

プロローグ

「よし、それじゃあ行ってきます」


 洋服の青山で購入した、上から下まで全て合わせると、0.5PlayStation5くらいにはなるであろう、ゴキブリの背中のようにギンギンに黒光りするスーツに身を通し、元気よく声を張り上げた。


「あぁ、生き帰ってくるんだぞ」


 私が2年前に、バイトを1週間でバックレた際、そのまま持って帰ってきた、クマと人間が合体した謎の生物がペイントされているクソダサエプロンを身にまといながら、そんな言葉を口にする父。


「……寂しくなるわね」


 その横で、たばことビールを持ちながらクスリと笑う母。


「これを持って行きなさい……」


 母が私の手のひらに「パチンコ必勝ガイド」と書かれた雑誌をのせた。


「……これは?」


「選別よ。辛くなったらそれを持って近くのパチンコ店に入りなさい。運が良ければHPが回復するわ」


「ありがとう、お母さん!」


 そうお礼の言葉を述べ、手渡された雑誌をパンパンになった鞄の中に無理矢理押し込んだ。


「ふふ、いつの間にか大きくなって……。競馬場で必死に外れ馬券を集めて遊んでたころが懐かしいわ」


 私の手をさすりながら、さみしそうに呟く母。


「もう、お母さん……、小さいころの話は止めてって言ってるでしょ。私はもう、パチンコも、競馬も、競艇も出来る年齢なんだよ?」


「そうね……。もう子供扱いするのは止めるわ。あなたもう立派な新社会人ギャンブラーよ」


「あぁ……モグモグ、……立派になったな……モグモグ」


 今朝、畑で取れた野菜を口に頬張りながら、涙ぐむ父。


「お父さん……」


「これは俺からの選別だ。受け取ってくれ」


 そう言って、父は表面に『きゅうり』と書かれているクソダサTシャツを手渡してきた。


「ありがとう……、お父さん、お母さん! 二人から貰ったものは、メルカリで大切に補完するね!」


「め、めるかり……? なんだそれは? まぁ良い。大切にしてくれ」


「えぇ、頑張って会社を倒してくるのよ」


「うん、私頑張る! 四天王上司も、魔王社長も皆、私の手下にして帰ってくるから!」


 二人そう告げ、ギシギシと悲鳴を上げている玄関の扉を無理矢理こじ開けた。

そして、


「開戦だー!」


そう叫び、最寄りの無人駅へと走り出した。


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