努力

Rotten flower

逆峯美和

高校一年生の夏、蝉の鳴き声と太陽の日差しを煩いと感じてしまうような生活になってしまった。

髪の長さは自分が思ったよりも速い速さで伸びていきいつしか日差しなどと同じように煩いと思える長さになっていた。

時に、髪の黒さが羨ましいと思われてしまうほど美しいらしい私の髪の色ですらこの周りが煩い環境では嫌いになってしまっている。

あの桜の木は四月の時は綺麗な桃色が付いていたがいつしか完全な木と言えるぐらい桃色は剥がれてしまった。

誰とも話さない、話せない時間、私は黄昏ていた。それぐらいしかやることがなかった。

私が春を思い出そうとすればするほど夏は煩さと暑さを増し、まるで自己主張をしてくるようだ。

校庭ではサッカーをしているクラスメイトの「三鷲みわしさかい」がいる。

彼のサッカーしている姿を見ていると胸がドキドキしてしまう。

でも、私にとって彼は「高嶺の花」なんだ。

「窓の外を見て何をしてるんですか?」

私が反対側を向くとそこには髪の黒さを羨ましんでいた女性が私に話しかけていた。

「話しかけているのに無視は酷くないですか?」

「すいません。」

私が考えている間にありえないほど速く時間が流れてしまったのだろうか。ただ、返事をしなかったことが良くないとは自分でも思う。

「何を見てたんですか?」

「校庭です。」

「何故ですか?」

真実を答えなければいけないのか。それとも嘘をついてしまっても良いのか。私はこの一瞬で判断をしなければいけなかった。

「楽しそうだなって思って。」

「じゃあ外に行けばいいんじゃ?」

動揺して少し眼鏡が傾く。

外に出れない理由はない。外に出たくない理由は無限と張り合えるぐらい多い。

「見てる方が楽しいから。」

「そうなんだ。」

私たちを痒みある沈黙が襲う。この何とも言えない空間の振動の無さはこの現実のものとは思えない程だった。

どれくらいの時間が経ったのだろうか、彼女がいきなり私の服の裾を引っ張って校庭に出始めた。

「何?」

「たまには外出た方がいいでしょ。」

日光、外気。なぜか全てが煩く思えてしまうのは教室でも同じだった。

自分の思っていることをちゃんと分かっている人はそんなにいない。私の場合は「それ」と「行動できない人」というレッテルをいつのまにか自分で貼ってしまった。

教室の椅子が一番落ち着く。私の心が安らぐひとときだ。ここから見える桜はとても綺麗だった。

そんなこと今でも忘れることはなくまたあの綺麗な桃色を見れるという夢を見続けている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る