魔法使いの愛に関する記録と考察──孤高の大魔法使いディオンを例として

羽柴諒

第1話

 悪夢から目が覚めたら、3回は歯を磨かなければならない。薬屋から買った歯磨き粉で口の中を最低2度清める。最後に何もつけていない歯ブラシで磨き、口の中を元の状態に戻すイメージだ。


 鏡の中の自分を見つめる。朝日の差し込む小さな窓から、麓の町の賑やかな音楽がここまで聞こえてきた。こんなめでたい日にまで悪夢を見るなんて最悪だ。髭は薄いほうだが、さすがに伸びっぱなしはよくない。髪の毛を結えるのも面倒だ。ここ数ヶ月人と会っていないから、見た目を整えるのを忘れていたが、第一印象は大切だと師匠も言っていた。


「《メイン・ティルクセラ》」


 呪文を唱えると、さっきまで伸び放題だった髪や髭、眉までもが整えられていく。最後に細い革紐で髪を結ぼうとしたら、ぷつりと切れてしまった。


「……行きたくないな」


 今日はこの国・オリヴィアに、100年に一度の奇跡が訪れる日。城下町の真ん中にあるオリーブの木。太陽が真上に昇るころ、その実のひとつが落ちて、誰も目を開けていられないほどの輝きを放つ。そして、この世界にとって救世主と呼ばれる人物が現れるのだ。ある時は勇者、ある時は音楽家、ある時は発明家。これはかつて小国だったオリヴィアを、この世界の頂点たらしめた言い伝えであった。


「ディオン様。お時間です」


 ノックの音がして、聞こえたか聞こえないかぐらいの返事をする。王城からの馬車が来たようだ。真っ黒のコートのフードを被って、表に出る。この前来ていた手紙の通り、御者以外に人はいなかった。麓まで2時間はかかるし、転移魔法を使えば一瞬だから迎えはいい、と言っているが、「言い伝え」のせいで毎回──少なくともディオンがこの役目を担当したここ1200年は──そうであった。その御者も目を合わせようとはしないし、おまけに手が震えていてまともに会話できそうにない。


「案内してくれ」

「はっ」

 ディオンが乗り込むと、たちまち馬車は動き出した。



◇◇



「ねえ! ねえってば! 離してよ!」

「何の騒ぎ?」

「ディオン様!」

「ディオン様がいらしたぞ!」

「言い伝えのとおり、真っ黒な服…」

「お顔はずっと端正だわ」

「しっ! 聞こえるぞ」


 広場にはすでに100人を超える人が集まっていたが、朝聞こえてきたような愉快な雰囲気ではない。ディオンの馬車が到着すると、中央までの道がさっと開いた。一人の女性がドレスの裾を持ち上げて、こちらに駆けてくる。


「ディオン様ですね! お待ちしておりました。この者が今回の救世主様ですわ」

「女王陛下。そんなに走っては国民が驚いてしまいますよ」


 ディオンの言うとおり、女王の様子に町の人たちは少しざわついていた。手紙のやり取りから薄々感じてはいたが、ちょっとばかしそそっかしい雰囲気がある。


 この国では王家に生まれた第一子が代々王位を継承することになっている。男の子なら「オリバー」で、女の子なら「オリヴィア」だ。その子が病気などで亡くなり、まだ直系の後継者が現れていない場合、第二子がその名前を受け継ぐ。そして30代目になるこの女王は、まだ15歳。


「だって、言い伝えの書の時刻はまだ過ぎていないのですよ。ディオン様をお迎えに行ったのもまだ日が昇り始めたころでした」

「ねえ! 離してよー! あっ、新しい人ーー! あなた誰? 喋れる?」

「静かにしろ!」


 木のすぐ下で兵士に両腕を掴まれている女性。胸元まで伸びた明るい茶髪に、やけに短いスカート、胸元には細いリボンが結えてあった。

 ……女性か。

 ディオンの中で「嫌だな」の気持ちがどんどん大きくなっていく。


 彼女の言葉は異世界語と呼ばれるもので、この世界の人間には通じない。自分以外には何か気持ち悪い言語を叫んでいるように聞こえるらしい。


「ディオン様……」


 心配そうな女王の声を手で制し、女性の前に片膝をつく。彼女もパニックに陥ったのだろう。うっすら涙のあとが見えた。


「ディオンと言う。貴女の名前は?」

「しゃ……しゃべれる人…!」


 ディオンはフードをとり、口元に笑みを浮かべた。彼の微笑みは完全に、


「しかもイケメン!」


 彼女のハートを掴んでいたが、初めて聞く語彙なのでディオンの知ったことではない。



◇◇



「あたしね、モモって言うの。桃。もーも。ピーチ、わかる?」

「ディオン様。この子は何と?」

「いっぺんに喋らないでくれる? 通訳が大変なんだけど」

「そんなの魔法でさ、パーッとできないの? ディオンってすごいんでしょ? だってディオンが来た時、どーんって道が開けてさ!」

「ディオン様…」

「静かにして」

「うう……」


 女王にそう言ったつもりはなかったのだが、落ち込んでしまった。それに比べて隣の少女はディオンの腕を組み、ご機嫌だ。


「寂しかったんだもん。でもよかった! 喋れる人がいて、ね♡」


 少女はクスノキモモと名乗った。年齢は18歳。話が通じるのが嬉しいらしく、王城に着くまでの馬車でずっと話しかけられていた。なぜか一緒の馬車に乗り込んだ女王は、モモの顔をじいっと睨んでいるようにも見える。


「だから嫌だったんだ……」


 ディオンの1000年以上前から続く役目、それは「救世主のお世話係」。彼は魔法使いだが、普通の魔法使いとなんら変わらない。ちょっぴり強い自覚はあるが、国を制圧できるほどではない。


 もういつだったか思い出せないが、彼の師匠がかけた魔法で「異世界語」がわかるようになってからずっとこうだ。いつの間にか「最初の一年間はディオンのところにおいておけば大丈夫」的な、そういう言い伝えまでできていた。勝手に作るな。

 城ではちょこまか動き回るモモを制しながら歩き、広すぎる応接間に通された。豪華なティーセットが出てきてからは、モモもおとなしくなっている。


「そ、それで。モモさんは何の救世主なんですの?」


 そわそわした様子の女王が身を乗り出す。

 今までの救世主は、何かしら秀でた才能があったから「この世界の救世主」となり得た。彼女にそれがあるのか……いや、聞いてもないのに判断してはいけない。気を取り直して、ティーカップを両手で持ってちびちび飲んでいる彼女に聞いてみる。


「モモ。君の得意なものは何かって」

「お菓子作り! あとはおしゃれ? あんまり勉強はできないけど、体力はあります! 若いので!」


 モモはニカッと女王に微笑みかけた。さすがにこれを伝えるわけにはいかないが…。


「………他には?」

「バイト先でも根性あるねって言われます!」

「バイト……バイトが得意なの?」

「え? やだな〜。バイトは得意とかじゃないじゃん! お金のためにやってるの!」


 二の腕をぱしぱし叩かれる。ああ、帰りたい……。

 笑顔を作って、「バイトが得意だそうです」と女王に伝える。


「なるほど……。バイト、ですか」

「ええ、バイトです」

「バイト……」

「…………」


 女王の目が、「バイトって何?」と訴えていた。

 俺にもわからない。わからないし、知ったところで絶対に「救世主」という名前に負けていることは確実だった。



◇◇



「……え? すぐには帰れないの?」

「そうだよ。『救世主』は役目を終えた時、元の世界に戻れる」

「本当に?」


 ディオンは頷いた。モモはがっくりうなだれる。


「そっかあ……」


 昼間までは元気だったモモも、夕食の頃にはもうぐったりしていた。転移魔法で我が家に帰ってきた時は興奮していたものの、「やっぱ王城で寝泊まりしたい」とすぐに文句を垂れた。

 豆のスープとパン、火を通した芋を出して、食卓を囲む。昼間はこちらの説明ばかりだったから、そこでようやく彼女の質問タイムが訪れた。


「みんな無事に帰れたの?」

「その後のことはわからないかな」

「え!? 死んでるかもってこと?」

「死にはしないんじゃないか」

「他人事みたいに言うよね。他人事かもだけどさあ…」


 モモがしゅんとするので、サラミを出してやったらちょっと機嫌が良くなった。こういう子どもはわかりやすくていい。


「ディオンって何歳なの?」

「1254歳」

「せ…せんにひゃくごじゅうよん!?……あははは! ねえ! 変な嘘つかないでよ!」

「本当」

「え……? あ、ああ、でも魔法使いだったらそうなの…?」


 疑った次の瞬間には信じている。変わり身の早さに自分もつられて笑ってしまった。


「ディオンとは1236歳差かあ……うん、いけるね!」

「何が?」

「いいのいいの。ねえ、何でみんなの前とでは口調が違うの?」

「どうでもいいよ。そんなこと」

「よくないよ! 魔法使いっぽいから?」

「そうだよ」

「そうなの!?」


 この後も言語を覚えたて(実際そうなのかもしれないが)の幼児の相手をするように、モモからの質問責めにあった。



◇◇



 シャワーを浴びて部屋に戻ると、モモはダイニングのテーブルに突っ伏していた。


「モモ。大丈夫か」


 何か危ない食べ物があったか? いや、まずは胃に優しいものからあげたはず、と側に寄ると、気持ちよさそうに眠っているだけだった。


「……」


 100年ぶりに使う部屋は、昨日魔法で掃除をしておいた。師匠から受け継いだ古い家だが、まめに手入れはしているからある程度は清潔なはずだ。トラブルにならないようモモは魔法で浮かせて、ベッドの上に寝転がした。シーツをかけて、静かな寝息が聞こえるのを確認し、部屋から出る。


 モモが来る前の救世主たちを思い出す。皆あまり顔は覚えていない。はじめの1年は一緒に過ごすが、その後は世界各地に奉仕活動をして回らなければならないからだ。


 1年経たなくても、ある程度言語とここの常識が刷り込めたら自分の元を離れていくように言ってある。最も短くて半年ほどで出て行った者もいた。


 なかにはモモのように馴れ馴れしい者もいて、鬱陶しいから早く出て行かせたらありもしない噂を流されたこともある。


 いちいち相手するのも面倒だったから放置していたら、それの積み重ねで「孤高の魔法使い」「気に入られた者は犯され、嫌われた者は殺される」なんて最悪な伝承が生まれてしまった(後者はあまりにも腹立たしかったので、この記述がある書物を片っ端から燃やした)。



◇◇



 翌朝。


「ディオン! 大丈夫?」


 はっと目が覚める。揺り起こしてくれたのは、昨日からこの世界にやってきたモモだ。寝衣姿の彼女は、肩で息をする自分を見て少し怯えているようにも感じる。


「…おはよう。大丈夫だよ」


 笑顔を作って、洗面台に向かう。


 いつも通り歯を磨いていると、モモがその様子を見ていることに気がついた。そういえば昨日、彼女にこの道具をあげるのを忘れていた。歯ブラシを渡すと「ありがとー」と言って磨き始めた。


「苦…」

「すごい顔だな」

「ひどいこと言う…」


 3回目の歯磨きをしていると、モモも同じようにしようとするので止めた。


「これは悪夢を見た後だけにやるんだ」

「え? なんで?」

「なんでって……そういう言い伝えがあるからだよ」

「どういう言い伝え?」

「忘れた」

「それって意味あるの?」

「ないよ。慣習さ」

「誰も見てないのに?」

「……見てるよ。天が」

「あー、……そういう思想の話? あたしはちょっとわかんないかもな」


 この儀式のようなものを否定されるかと思ったが、モモは理解の範疇を越えるとどうでも良くなるらしく、それ以上は聞いてこなかった。モモは朝ごはんの準備しようよ、と口を濯いでいるあいだもずっと「ごはんの歌」なるものを歌っていた。


 パンを2種類にミルク。オレンジジュースもいるかと聞いたら断られたので、カットして中央に置いておいた。

 クロワッサンをちぎって、モモは言う。


「歯磨きを3回したってことは、ディオンは悪夢を見たの? どんな夢か聞いてもいい?」

「死ぬ夢だよ」


 さらりと答えたつもりだったが、モモは固まって、じっとこちらを見つめている。


「魔法使いは自分の死期が近づいてくると、その夢を見るんだ。だからまあ、当然のことさ」

「……いつ死んじゃうの?」

「それはわからない。まあ、この夢を見たら、大体の魔法使いは余暇に入るね。夢を見てから数年経つ魔法使いもいるけど、…多分50回は見てる」

「…寝るの、怖くない?」

「もう慣れたから大丈夫」


 ディオンは異世界生活2日目の少女を落ち着かせるべく微笑む。テーブルの真ん中に置いていた皿のフルーツをフォークで突き刺し、口に運んだ。


 モモはしばらく何も喋らずに、うんうんと唸って考え事をしているみたいだった。かと思えば、ちらちらこっちの様子を見て、何か言いたそうにしている。視線に耐えかねて、彼女と目を合わせた。


「…何?」

「ねえ、もしかしてなんだけど言ってもいい?」

「勝手にどうぞ」


 牛乳を口に含む。今日で切らしてしまうから、また注文しておかなければ。


「私の役目って、『ディオンの結婚相手を見つけること』なんじゃない?」


 ぶっとディオンは牛乳を吹き出した。あわててタオルを彼女めがけて飛ばす。


「………最悪なんだけど!」

「ごめんごめん、びっくりして。急に変なこと言うから」

「あたしも変だと思うけど、絶対そうだって」


 モモはタオルで顔を拭き、こっちを見た。


「今まで一人で生きてきたんでしょ。死ぬときぐらいは誰かと一緒にいたくない?」

「いたくない」

「じゃあ一人で死んじゃってもいいの?」

「生物は結局そうだろ」


 モモが黙ったので、突き放しすぎたか?と彼女の様子をちらりとうかがう。


「…牛乳臭いからあとでしゃべる」

「ごめん」



◇◇



「…本当に、特技は思い当たらない?」

「うん。…ごめんなさい」

「謝らなくていいよ。しばらく共同生活をしたらわかるかもしれない。君にとっては当然でも、俺たちにとっては新しいことの可能性がある」


 モモは朝から風呂に入ったおかげか(しかもやたらと長かったが、お詫びということで許した)、頬を上気させながら上目遣いでこちらを見ている。先ほどと違って、こちらに来た時の服が乾いていたのでそれを身につけていた。


 救世主たちのこれまでの「役目」は、主に異世界の文明をこの世界に広く知らしめることだった。彼女の服装もそうだし、もしかしたらファッションだとか、それこそお菓子作りにおいて偉大な功績を残すかもしれない。


 なんにしても、お世話係のディオンにはそれを見出すという重大な使命がある。


「ディオンってあたしのお世話するんでしょ? それに何年も生きてる魔法使いだし。なのにお屋敷には住んでないの?」

「この家が不満?」

「そうじゃなくて! 王城でも全然緊張してなかったし、慣れてるのかな〜と思ったら家が意外な感じだったから…」

「特に報酬はないよ。これは慈善事業だから」

「え……? じゃあどうやってお金を稼いでるの?」

「………」


 改めて考えてみたけど、ほとんど自給自足だ。果物や穀物は小さいながら2つ畑があって、そこで1週間分の食料を魔法で交互に育てている。この牛乳は唯一他との交流で得たものだ。毎月隣の山ひとつぶんの魔物を倒す代わりに、その山で放し飼いをしている牛たちの牛乳が届けられる。直接交渉したわけじゃないから、ほとんどお供物に近いけど。


「ここ10年ぐらいはお金に触れてないかもしれない」

「すごすぎ……でも、それでいいの?」

「?」

「あたしの世話、大変でしょ。それなのに国からは何にももらえないの。いいの?」

「いいというか、…ずっとそうしてやってきたんだ」

「そうかもしれないけど、あたしだってタダ働きは嫌だよ。バイトも絶対1分単位でタイムカード切ってるし」


 またバイトの話か。タイムカードといい、一体なんなんだ。


「店長みたいな人いないの? ディオンの上司は?」

「上司……わからないな。今はもういないから」

「ふーん…」


 向かいの席に座ればいいのに、モモはディオンが腰掛けているソファにぴったりとくっつくように座ってきた。ディオンは少し右にずれて、彼女がくっつかないように間に本を置く。


「けち」

「勘違いしないでくれる? 俺は君のお世話係なんだけど」

「わかってるよー」


 モモは本をどけてしまって、あろうことかディオンの膝にごろんと寝転がった。


 恐らくだが、モモはディオンに好意を抱いている。流石のディオンもそれはわかっていた。今までもそうだったから。勝手に期待されて、勝手に幻滅される。男だろうが女だろうが、また年齢が千を超えることを聞けば、老若も関係ない。異世界に連れてこられて心細い状態のなか、最初に世話をしてくれる人物に恋慕の感情を抱くことはなんら不思議ではないからだ。


 初めのうちはそれを利用することもあった。見た目は1番魔力が安定する今の姿のままだが、今よりは精神的にも若かったし。


「モモ。退いて」

「……わかった」


 案外素直に言うことを聞く。モモは起き上がって、手櫛で髪を整えた。


「ねえ、ディオン。さっきの話の続きだけどさあ。旅に出ない?」

「……はあ?」

「ディオンの魔法があれば今みたいに自給自足をすればそんなに困らないでしょ? 世界各地でお嫁さんを探すの。どう? あたしさ、元の世界でもきょんちゃんと里山のキューピッドだったんだよね! 小学校の時はリナと土田くんでしょ。実績は十分あると思うんだけど」

「……?」

「あー。……知らない人の話されても困るか。えっとねえ、あたしがー、ディオンのー、お嫁さん。探したげる!」

「そこは別に区切らなくてもわかる……っていうか、別にいいよ。俺のことは」

「……だって」


 モモは急にしゅんと俯いた。喜怒哀楽のわかりやすい子だ。


「一年後にはここを出て行かなきゃいけないんでしょ。そして世界中に奉仕するんだって。…ディオンが昨日聞かせてくれたけど、医者、科学者とか、勇者とか、…そんなの、あたし絶対無理だよ。だから先に世界中を回っておきたいの。どんな問題が起きてるのか、あたしにはわからないから」


 スカートの裾をぎゅっと掴んでいる。

 保身だとしても、理不尽な役目を受け入れ、たった1日過ごしたこの世界に対してそう思えるなんて、彼女は選ばれるべくして選ばれた存在だ。その資質に気づかせるのも彼の役目であった。


 ディオンはしばし考えて、今は俺が喋る番か、と彼女の頭をクッションでぽんと小突いた。


「!?」

「大丈夫だよ。モモならできる」

「できないよ。てか何でクッション?」

「直接は触れないから。後々面倒臭いし」

「うわあ。……でも、大丈夫だよ、ディオン。あたしが絶対見つけてあげるからね」

「話通じてるかな?」


 その後、モモに強引に押し切られる形で、「あくまでもここを拠点に、モモが異文化と言語を学ぶ目的でなら」旅してもいい、ということになるのだった。

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