第27話 ファーストキスはレモンの味…なんてしない
ドキドキドキドキ――
心臓の音がうるさい。
園田君の顔が――近い、近い、近い!!
キ、キス、す、するの?!
違う、かな?!
目を開けたまま、園田君は固まってる…
でもこれって目を瞑ってキスされなかったら、恥ずかしいよね?!
そんなこと思ってたら、園田君は耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。よかった、目を瞑らないで…
濡れた布巾をテーブルの上に置いて自分のカップを引き寄せた。どさくさに紛れて園田君の隣に座ってコーヒーを飲む。
あーあ、もう冷めちゃったよ…
「園田君、新しいコーヒー持ってくるね」
「えっ、い、い、いいよ」
「いいから、いいから」
私は両方のカップとミルクフォーマーを持ってキッチンへ行った。コーヒーメーカーのポットはステンレスの保温ポットだから、コーヒーは冷めていない。もう一度牛乳も泡立てる。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
素知らぬ顔でまた園田君の隣に座った。園田君の顔はまだ真っ赤で俯いている。
「飲まないの?」
「えっ、あっ、の、の、飲むよ!――うわっ、あちっ!ぶはっ!」
園田君はミルクの泡を通り越してコーヒーをほとんど一気飲みしそうな勢いで飲もうとした。
「大丈夫?!水持ってくるよ!」
コーヒーを吹き出しそうになった園田君は、水を飲んで落ち着いたようだったけど、項垂れていた。
「ご、ごめん…カッコ悪いな、俺…」
「そ、そ、園田君!カ、カッコいいとか悪いとか、関係ないよ!園田君は園田君!そのままの園田君が私は…す、好きだよ」
「す、す、す、す…好きっ?!あの、そ、そ、それは…その…」
「あ、えっ、あっ、あのっ…人としても、だけど…その、あの…お、男の人としても、す、好きです…」
「あ、あ、あのっ、俺も…さ、佐藤さんのこと…す、す……あわわわ…」
『す、す…』って好きって言ってくれるのかなって思ったけど、園田君は顔が真っ赤になってどもりまくってしまって何を言ってるのかわからない。
私は下を向いてる園田君の顔を覗き込んで彼の両手に自分の手を重ねた。
「園田君も…私のこと…す、好きで…いてくれるなら…付き合ってくれる?」
「ははははいっ!つ、つ、つ…付き…付き合って…下さい!」
どちらともなしに顔を近づけてちゅっと触れるだけのキスをした。
ファーストキスはレモンの味、なんてしなかった。ミルクとコーヒーの味だった。
でも甘酸っぱくて胸がドキドキした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます