第20話 二日酔い

「うわぁ…頭痛い…」


萌は足取り重くキッチンへ向かい、水を飲んだ。リコはコーヒーを入れてトーストを食べているところだった。


「おはよう、萌。大丈夫?昨日、私と園田君と3人で帰ってきたの、覚えてる?」

「え?園田君も一緒に送ってくれたの?私、全然覚えてない…暴れたりしてないよね?!」

「うーん…どうかな?!」


リコはわざとニヤニヤとしながら萌を見た。


「えー、やだ?!私、ほんとになんかしたの?!ちょっとぉ~!おもしろがってないで教えてよ!」

「大丈夫。ただ寝ちゃっただけだよ。園田君と2人で萌を支えて階段で3階まで連れてくるの大変だったんだから!」

「えっ?!ごめんね…どうしよう…園田君にもすごく迷惑かけちゃったよね」

「大丈夫、そんなに気にしてないと思うよ。むしろ萌を危機一髪から助けられて安心したんじゃないかな?萌がなかなかトイレから帰って来ないから、園田君が心配して一緒に見に行こうって私に声かけたんだよ」

「え?!危機一髪って?!トイレの前で野村君に声をかけられたまでは覚えてるんだけど…」

「私達が見に行った時、野村君が萌を抱き寄せててお持ち帰り寸前だったよ」

「お、お、お持ち帰りっ?!」

「そう。あれは絶対狙ってたと思う。ねえ、ほんとに記憶なくすほど飲んだの?」

「うーん、乾杯でビール中ジョッキ1杯飲んだよね。その後、リコがトイレに行って空いた席に野村君が座って…チューハイ3杯飲んで…なんか急に酔いが回ってトイレに行ったら気持ち悪くなって吐いて…野村君が大丈夫って話しかけてきて…その後、よく覚えてない…」

「中ジョッキ1杯とチューハイ3杯で萌だったら記憶なくすほど酔わないよね…おかしいなぁ…」


その日、萌は流石に体調不良で大学を休んだ。


週が明けて月曜日、普段通りにまた大学へ行くと、悠が目に入った。


「園田君、おはよう…この前の打ち上げで迷惑かけちゃって…ごめんなさい。重かったでしょう?」

「そんなことないよ。それより体調どう?」


あんなに迷惑をかけたのに心配してくれる悠を見て萌の胸はトクンと鳴った。でもこの気持ちが何なのか、萌は自分でもまだよくわかっていなかった。


「次の日は二日酔いだったけど、もう大丈夫」

「そう、よかった。中野さんから聞いたんだけど、佐藤さんはお酒に強いんだよね?あの時、そんなに飲んだの?」

「ううん、ビール中ジョッキ1杯とチューハイ3杯

「『だけ』?結構飲んでるよね?!」

「私にとってはそうでもないよ」

「そうなんだ。じゃあ、あの時は特に疲れてたとか、体調悪かったとか?」

「そういうわけじゃないよ。チューハイ飲みだしてから急に酔いが回ったって感じ」

「チューハイって野村君が隣に来てから飲み始めたやつ?」

「そう。野村君が持ってきてくれたの」

「え、あいつが持って来たの?店員じゃなくて?」

「うん、私の横に来た時に持ってきてくれた。2杯目からは注文して店員さんにテーブルに持ってきてもらったけど」

「ふぅん……佐藤さん、これからしばらく飲み会がある時は中野さんか俺と一緒の時だけにしてくれる?」

「え?!どうして?!」

「なんかこの前のは仕組まれた感じがする。注意するに越したことないよ」


萌は『仕組まれた』ってどういうことと聞こうとしたが、授業が始まる時間になってそれ以上話を続けられなかった。


-------------------------------------


ビール中ジョッキ1杯とチューハイ3杯は結構飲んでますよね。

私はチューハイは飲みませんが、ビール1リットル飲めばほろ酔い、2リットル飲むと吐いちゃうかも?!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る