23 熱の原因

「う……」


自分のうめき声で我に返った。気付いてみると、私はいつの間にかベッドに寝かされている。

横たわったまま、視線だけを動かして自分の今いる部屋の状況を確認してみた。


そこは狭い部屋だった。壁際に寄せられたベッドからは窓がついており、木々が揺れている。

室内は壁も天井も床も全て板張りで、粗末な造りをしていた。


「私……どうして……? こんなところで寝かされていたのかしら……」


酷く頭がズキズキと痛む。身体もとても熱くてぼんやりする。


「ここは一体……」


ベッドの上で身体を起こした時、枕元に何かが落ちた。


「え……?」


見ると、それは濡れタオルだった。もしかすると額の上に乗せられていたのだろうか?


「濡れタオル……? 一体誰が……ふぅ……それにしても……身体が熱いわ……」


ふらつく身体で部屋の窓を開けて、風を通した。


「他の人たちは……一体……」


皆を捜しに行こうと、ベッドから降りた時……


「あ!」


ガッ!!


足がもつれて、床の上に倒れてしまった。


「う……い、痛……」


身を起こそうとしても、体中に熱がこもっているようで体調が悪くて起き上がれない。

そのまま身動きできずに床の上に倒れていると、バタバタとこちらへ駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。


そして――


「ユリアナ!」


勢いよく扉が開かれ、ジェイクが駆け寄ってきた。


「あ……ジェイク……さん……」


「ユリアナ! しっかりしろ!」


ジェイクは私を抱き起こすと、心配そうに顔を覗き込んできた。


「大丈夫か……? ユリアナ……いや、あまり大丈夫そうじゃないな……階下にいたら、大きな音が聞こえてきたから何事かと思った」


「ジェイクさん……すみません……」


そのまま、ジェイクは私を抱え上げるとベッドに寝かせてくれた。


「気にすることはない」


「あの……なんだか私の身体……おかしいんです……身体の内側も……外側も……凄く熱く感じて……」


「ああ、分かってる。だから濡れタオルを額に乗せておいたんだ」


「ここは、何処ですか……?」


「『オーリンズ』地区にある宿屋だよ」


「そうでした……私、馬車の中で眠ってしまって……」


それであんな夢を……


「そうだ、あの馬車の中で眠ってすぐにユリアナは高熱が出て三日間目が覚めなかった」


「え?」


その言葉に耳を疑う。


「どうかしたのか?」


「三日……? 私、三日間も眠っていたのですか?」


「そうだよ。ずっと高熱にうなされていた。力を使ったわけでもないのに……どうしたんだろうな」


「力? それって……一体どういう意味ですか?」


「あ……そうか、ユリアナは知らないだろう。ミレーユは強烈な炎の力を使うと、高熱で倒れることがあったんだ」


「そう……なのですか?」


もしかすると、私が高熱を出したのはあの夢のせい……?


「ジェイクさん、聞きたいことがあるのですけど……ミレーユは戦争で当たり一面を……敵も味方も関係なく燃やし尽くしたことがありますか……?」


「え? もしかして……覚えているのか……?」


ジェイクの顔色が変わった――

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